9.「日本の物流問題」読み始めた。「人や物の輸送」という営為について、我々はどれだけのことを知っているか。/駅の時刻表とスマホ(03/20 07:32)


< ページ移動: 1 2 >

そのほか、基本給が以上に安く歩合給の割合が多いので残業しないと人並みの給料にならないという問題とか、ボーナスが出ないなどの問題もこの業界にはあるのだという。確かに残業前提で生活設計を立てている人にとって残業が規制されて一定以上の給料が期待できなくなったら他に転職する、という人は当然出てくるだろうなとは思った。

あと、なるほどと思ったのは日本は卸売業が発達しているために、白ナンバーのトラックで生産者から荷物を引き受け、それを自社の所有にした上で別の事業者まで運ぶことで卸売の利益を得ているから、運賃を得ているわけではないから白ハンバーで運べる、という部分がかなり大きいのだという。白ナンバーは緑ナンバーの営業車より規制が緩いから使いやすいわけで、そう言われれば輸送業者以外が実質的に輸送を担っている部分はかなり大きいのだなと思った。卸売業というのも一度その構造を研究してみたいと思った。

私も小売の店でバイトをしたことはあるので、卸売という存在がありがたいことはよくわかる。食料品など膨大な品種があるし生産者もまちまちだから、生産者に直接注文するなど全ては不可能なわけで、卸売業者に一括で注文すればかなりの品種が揃うというのはありがたいことだと思う。まあ欠品とかも結構あったりはするのだが。

輸送という業務に関しては流通業界と物流・運輸業界がそれぞれ仕事を分担しあっていて、それもトラックだけでなく鉄道や航空、船舶などの会社も関わってくるわけだから、輸送という行為の全体像はなかなか描ききれないことがあるだろうし、担当する省庁も経済産業省だけでなく国土交通省や労働に関しては厚生労働省、地方自治体に関連しては総務省なども関わってくるだろうし、この全体を見通すことはどこがやっているのか、ただそれが見えないと構造的な問題は解決していかないだろうなと思った。

例えばトラックドライバーは歩合制が多いといっても、卸売りの生産者から自社倉庫に運ぶドライバーや小売店を回る営業兼ドライバーは全然賃金体系が違うだろうし、同じように「車を運転して物を運ぶ」という仕事でも待遇もだいぶ変わってくるのだろうと思う。トラックドライバーの転職先はどういう仕事が多いのかとかも、関心はある。

***

少し先のところをパラパラ読んだのだが、日本で「物流」という言葉できたのは1960年代らしい。やはり道路網の整備が進み、トラック輸送が盛んになってから出てきた言葉なのだろうと思う。

日本でロジスティクスを専門に扱う学科がある大学は日本海洋大学だけだと聞いたことがあるのだが、著者は早稲田の教授のようで、これらを研究する学会というのもどういう構成になっているのか、興味深いところはあるなと思った。いずれにしても現代社会を文字通り「回している」のは人も物も輸送する人たちであるわけなので、この辺りのところにもっと関心を持ち、また健全な運営がなされるように見ていける人が一般にも増えることは大事なことなのだろうと思う。

輸送や物流というと、戦前の軍隊の補給やロジスティクスに対する軽視の話が思い出されるわけで、「輜重輸卒が兵隊ならば、蝶々トンボも鳥のうち」と言われたことなどが思い浮かぶ。車椅子の人を持ち上げて運ぶという話がちょうどネット上で議論を読んでいたが、「運ぶ」ということ自体が社会の本当に基礎になるインフラであるのに、それを無償でやらせるのが当然みたいな風潮がいつまで経っても消えないのは、その行為に対する認識不足があるのだろうなという気はする。

そんなことを考えた。



< ページ移動: 1 2 >
9/5067

コメント投稿
次の記事へ >
< 前の記事へ
一覧へ戻る

Powered by
MT4i v2.21