9.バッハの軽やかな調べ/デ・クーニングとピカソ/ニューヨーク派と日本のアヴァンギャルド/「解体屋ゲン」と「振り返ること」(06/02 07:52)


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6月2日(金)雨

いろいろと新しいことをやっていて気持ちが忙しいので、新しいものにあまり触れる時間がないのだけど、先ほどは車の中で「古楽の楽しみ」を聞いていてとても弦楽の軽やかな曲でいい曲だなと思って誰かと思ったらバッハだった。バッハはどうしても重厚な教会音楽のパイプオルガンの印象があるのだけど、こういう曲も書いたんだなあと改めて思った。というかバッハの幅広さを自分が理解していなかったということなんだろうなと思う。時間はないけど、少しずついろいろ聞いてみるのもいいかもしれないと思った。

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デ・クーニングやジャクソン・ポロックなどの抽象表現主義=ニューヨーク派についてネットで記事を読んだり作品を見たりしていたのだが、やはり現物でないせいなのだろう、良さがよくわからない。近くに美術書を置いている古書店があるので後で少し探してみようと思う。「ブルーピリオド」の主人公の矢口八虎の作品は「デ・クーニングの表面をなぞった」みたいな批評をされてたりするわけだけど、彼の最初の美術に対するコメントは「ピカソの良さがわからない」だったので、ピカソはわからなくてもデ・クーニングはわかるのか、という不思議な感じがあったりする。

私も素人だからわかるというほどのことは言えないにしても、ピカソは好きだ。全部がいいと思うかと言えばそんなこともないが、学生の頃にミロが好きだったのでスペインに行ったときにミロ美術館へ行って実物を結構見たけど思ったよりいいと思わなくて、それよりはプラド美術館で見た17世紀バロックの巨匠たち、スルバランやリベーラをとても良いと思い、自分が好きなムリーリョと、すごすぎてよくわからないベラスケスなどの方が強烈な印象が残った。ピカソはプラドの別館で展示されていた「ゲルニカ」を見たのだけど、その時は「ふーん」という感じだった。

しかしバルセロナに行った時、ミロ美術館の次にせっかくだからと思って行ったピカソ美術館でピカソの作品を系統的に見て、これはめちゃくちゃいいなと思ったのだった。細かいところが楽しめるというか、自分がロートレックの「マルセル」の実物を初めて見た時の感動の延長線上にあって、ああ、こんなことができるんだという驚きみたいなものを感じたのだった。

だからピカソの凄さというのは自分なりには(説明はそんなにうまくはできないが)理解しているのだけど、今のところデ・クーニングの凄さはあまりよくわかってない。その辺ちょっと勉強できたらなと思ったのだった。知った方が「ブルーピリオド」を一層楽しめるようにも思ったし。

もう少し読んでみると、ニューヨークスクールは1950-60年代の美術だけでなく音楽や詩、ダンスなどにも関わる一つのムーブメントであったようだ。そうなると日本では寺山修司とか唐十郎、赤瀬川原平や合田佐和子、そのほか60年代後半のアヴァンギャルド的な動きにもつながってくるのだろうなと思ったり。ニューヨーク派としては名前が出てこなかったけれどもアレン・ギンズバーグなども同時代だし、関わりはあるのだろう。要は「アートが前衛であり、ニューヨークがその中心であった時代」なんだなと思う。西海岸文化とも重なるところがあるのだろう。

おそらくこの辺は研究史があるのだろうと思うけれども、その時代を生きた人たちにそういうものがどのように感じられていたのか、今の美術にその余熱がどのように生きているのか、そんなところも知れると面白いかもしれないなとも思った。

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「週刊漫画Times」で「解体屋ゲン」1002話を読んだ。都心の爆破解体という大仕事を終えた後、バイクでぶらっと一人旅、みたいな回で、今まで自分の関わった仕事をもう一度見て回る、という企画なのだが、これがとても良くてジンとした。関わった仕事はその後うまく行っているところもあればさまざまな理由でうまくは行ってないところもあり、ゲンは「俺はこれまで関わった人全てに幸せになって欲しい」と思うけれども、もちろんそは行かない。「かあさん菩薩」という巨大像が解体されて、それに愛着があったラーメン屋を訪ねて、「寂しくないか」と尋ねると「寂しいと思えば寂しいし寂しくないと思えば寂しくないし」と言われたので、「自分が良かれと思ってやったことが実は誰かを傷つけているんじゃねえか」と尋ねると「傷つけてると言えば傷つけてるし傷つけてないと言えば傷つけてないよ」と答えられ、「ゲンさんが母さん菩薩をゆっくり倒してくれたおかげでボクは今生きてるんだと思う」と言われて、ゲンは元気を取り戻す。


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