9.「鎌倉殿の13人」第45回「八幡宮の階段」を見た:役者の力量を最大限に引き出す脚本の力と引き出された小栗義時・柿澤実朝・寛一郎公暁/地元の書店が生き残っている嬉しさとありがたさ(11/28 09:18)


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帰るとまだ6時前で、ちょうど大相撲が結びの一番で貴景勝が勝ち、優勝決定戦が巴戦になったのだが、何と阿炎が2連勝して初優勝という予想外の結果になって面白かった。7時からはサッカーのコスタリカ戦を少し見たが、あまり動きがないので見るのをやめてネットを見たりして、8時からの鎌倉殿に備えた。

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「鎌倉殿の13人」第45回「八幡宮の階段」を見た。前回に続く、鶴岡八幡宮における実朝の右大臣拝賀式における惨劇の描写とその収拾。実朝も公暁も仲章も殺され、三浦も身動きが取れなくなったのを奇貨として義時が権力を掌握していく様子が中心に描かれていた。

https://www.nhk.or.jp/kamakura13/story/45.html

今回の、というか今年のこの作品のこのドラマの描写は、それぞれの登場人物が与えられた役割を筋書き通り演じるというよりは、役者そのものが持っている力量やその背景までを含めて「活用して」ドラマに活かすというつくられ方をしていて、良くも悪くもその人でなければ出せないもの、演じられない「何か」が表現されている面が強いなと思った。そのためには役者のルーツも利用するし、必要なら史実になかったことも付け加える。

もともとの「史実」も陰惨ではあるがドラマ的にも興味深いし、そういうこともあって頼家の死のあたりまではドラマの展開自体に脚本の妙を主に感じていたのだが、一度トークスペシャルをはさんだ後のラスト10回ほどは脚本そのものについてはむしろあざとさが目に付くようになり、しかし観終わった後で反芻してみるとやはりおもしろいわけで、それはなぜなんだろうと考えてみると、つまり「あざとさ」まで含めて「役者の力量」というものを最大限、というか限界まで引き出すような脚本と演出になっているのだということに思い当たった。

私も20代には演劇をやっていて脚本を書いたこともあったのだが、役者の力量を引き出す芝居というのは理想でもあったけれども、当時はその役者が何ができるのかということを深くは把握できていなかったし、あてがきなどもよくしたけれどもその役者の良さを限界まで引き出す、というような脚本は書けなかったなと思う。

今思ってみると、役者がその力量を限界まで発揮するような戯曲というのはつまりはその方向に限界までその役の「キャラを立てる」ということで、それは例えばマンガ(の原作)や小説などにおいても使える面もあるのだなと思うのだが、これはここ10年ほどでなるほどと思いだしたことで、ジャンプの編集者がとにかくまず登場人物のキャラが立っていることにこだわるという話を読んでから考えるようになったことだ。現在は脚本を書いたりはしていないから今なるほどと思ってもそれを生かす当てはとりあえずないのだが、やることに余裕が出来たりまた来世があるならそういうこともやってみるのもいいかなと思ったりはした。

そういう面で「八幡宮の階段」で思うところはやはり主人公義時を演じる小栗旬さんの芝居がメインになるわけだけど、三谷さんが終盤10回の義時をどう演じるかを見たい、と言っていたように、このあたりの義時の凄味というか円熟味、ダークさの演じ方については明らかに今まで小栗さんができていたことを超えているよなとは思う。

仲章に太刀持ちの役を奪われて「悄然としている」と時房には受け取らせながら偶然とはいえ公暁が義時も狙っていたということを知って公暁の動きを止めず、また実朝を助けに行こうとした泰時を制止するところはそういうところだぞと思う。

また心配になって駆け付けたのえに対して「八重や比奈はもっとできたおなごであった」と「言っていいことと悪いことがあります。いまのはどちらですか」と詰められるようなことを言われたりするのも本当に言わなくていいことを言っているわけだけど、そこは今までのえにどちらかと言えば反感を持たせていた視聴者が義時を非難しのえに同情するように仕向ける意味が脚本的には強いと思うし、また「よくできた=支えてくれた=内助の功」的な八重や比奈に対し、「思ったことをはっきり言う現代(的な)女性」であるのえの戯画化的な側面もあるのかなと思った。

つまり、「自分を支えない=自分にとって役に立たない妻は存在価値がない」と言い放っているわけで、そこは義時の(あえての)冷酷な面がよく表れているけれども、いつか殺されるぞとは思う。義時はのえ(伊賀局)に毒殺されたという説もあるから、その伏線という意味もあるのかもしれないが。


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