6.活字中毒とツイ廃/歴史異説と稗史クレンジング/内田裕也さんと毀誉褒貶/MMTと満鉄調査部/(03/18 08:55)


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大学が限界集落化しているのは学者のとしてのキャリアについての「改革」が行われる以前の人がいわゆる「逃げ切り」状態になっていてのほほんとしているのだけど、そのあとに学者になった人たちが任期付であるとか職がないと言った事態に巻き込まれて生きるための仕事に奔走せざるを得なくなり本来の研究がしにくくなっているという点に原因があるのだと思うし、それは電子書籍化が問題になってる出版界であるとか、そのほかの企業社会全体、あるいは年金問題も考えれば日本社会全治にその「逃げ切り」問題はあるわけで、逃げ切れる人たちが今後の日本の問題についての真剣な議論に十分向き合っていない、あるいは左翼の方々のようにあさっての方向に議論が走って行って若い人たちが直面している事態を理解しようとしないという問題なのだと思う。

いわゆるロスジェネ問題も最近はだいぶ取り上げられるようになっては来たけど、まだまだ十分に理解はされていないし対策はそれ以上に遅れていると思う。

高学歴者の失業問題というのは戦前からあったわけで、昭和恐慌の頃には「大学は出たけれど」という言葉が流行語になっていたように、職にあぶれた大卒の人はたくさんいた。階級社会であった戦前は、そうした大卒の人たちの中にも実家の裕福さにバッファされて高等遊民として生きていた人たちも結構いたわけだが。現代でもロスジェネ問題の深刻さに一番苛烈な対応をするのはロスジェネの成功者の人たちだなという印象はあるが、なかなか社会的な政策が打ちにくいのもその辺にあるんだろうとも思う。

最近読んだ中で解決策としてあるのかなと思ったのは、戦前のそういう高学歴失業者が吸収されていた機関の一つに「満鉄調査部」があったという指摘で、これはちょっとひざを打った。

確かに、人文系や社会科学系の研究者になれなかったが大学院で研究者としてのトレーニングを積んだ人が職にあぶれているというのは大学や学問にいけ好かないという思いを持っている人たちにとってはいい気味だと思う部分もあるようには思うが、よく考えてみたらとてももったいない話で、「満鉄調査部」のような国策調査機関にはかなりうってつけの人材なんじゃないかと思う。今の日本ではそういう調査機関は国力に比してかなり貧弱なように思うし、そういう人たちがそれに吸収されて日本にとって必要な調査が十分に行えるようになったら、まあそれを生かす力を日本の政治や行政がちゃんと持てるかという問題はあるにしても、かなり意義深いことだと思う。

『人文系の勉強をして何の役に立つのか』という嘲笑があるけれども、そんなものはあるに決まっているわけで、学問の側が「すぐに役に立たないことをやることに意味がある」とか斜に構えるのもディオゲネスじゃあるまいしあまりよくないと思う。実際に使いようによってはすごく意味があるし昔は浮世離れの典型的な存在だった数学者をグーグルが凄い勢いで採用していることからもわかるように、きちんと目をつけることが出来さえすれば日本の既存の凄い厚みを持った学問集団は絶対活かしどころがあると思う。

それにつけても安倍政権の、あるいは今に至る大学改革の流れはそうした日本が営々と積み上げてきた学問の厚みをあまりに粗末に扱っているわけで、その辺は本当に方向性を変えるべきだと思う。資金を奪う方が学者がやる気になる、とかいう財務省の発想は世界的に共感する人は多いとは思えない、というかアメリカでも中国でも莫大なお金を学問領域につぎ込んでいるわけで、日本が本来持っていたアドバンテージが相当脅かされている。そう言う妙な思想を持つ人たちが日本を仕切っているというところに根本的な問題点があるという点では、財政再建派が持つ問題が日本の学問を脅かし、大学の限界集落化をもたらしていると言っていいのではないかと思う。

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昨日は書いたように中央線のトラブルの影響で一日棒に振った感じになったせいか、夜は9時前には寝てしまったので、朝は5時台に起きていろいろやってから風呂に入っていたらどんどん書くことを思いついたのでとても長文になった。論点が多岐に、というかいろいろな話を一つのエントリにせざるを得ないのだが、それももったいないので後でちょっと切り分けて改めてアップするかもしれない。


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