4.WBC優勝という栗山監督の偉業:日本の指導者像の新たなスタンダード(03/23 07:48)


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 栗山英樹 2023WBC   優勝

ということになる。野球というものは、日本において戦前からの歴史を持つ長い球技で、その中でもプロアマ異なる団体だったり、さまざまな対立があって一番一筋縄でいかない競技なのだが、ようやくプロのトップ選手中心のチーム構成になってからまだ20年しか経ってないわけだ。

それを引き継いで代表監督を務めてきたのは、上記のような現役時代に錚々たる成績を残したメンバー。また山本浩二監督まではプロ球団の監督としても実績を残している人たちだった。

日本球界から大リーグに参加するようになったのは歴史は古いけれども、流れができたのは1990年代の野茂英雄投手からだろう。大リーグ、プロ野球、それぞれの参加条件もなかなか難しく、大リーグ機構自体が主催するWBCが始まってようやくどこに所属する選手も参加しやすくはなったが、開催時期が開幕前になったことでシーズンを重視する選手たちは参加を躊躇う例も多くあった。

また王・長嶋のような完全なカリスマならともかく、星野・山本の世代では「無理偏に拳骨」的な指導があったりスタッフだけでなく選手も子飼いで固めたりしてあまり運営がうまくいかなかったチームもなかったとは言えない。優勝が原監督の2009年WBCを最後に途絶え、日本開催の東京五輪での2021年まで復活しなかったのはいろいろな理由があっただろう。

そう考えてみると、野球日本代表=「侍ジャパン」の監督というのは、相当困難な仕事であることは十分に理解できる。

現代の日本代表監督に求められるのは、カリスマだけではダメだし、強権的な指導もうまくいかない。稲葉・栗山両氏のような「兄貴分的なリーダー」がチームの雰囲気を良くするのだろう。今回はダルビッシュがその部分を分担した感じもあり、また投打の中心になった大谷という存在があったことも大きかったが、ここにその両者と関係がつけられる元日ハム監督の栗山英樹氏の起用がバッチリとはまったということはあったと思う。

今回の優勝後、日ハム関係者の写った集合写真がツイートされていたが、びっくりするくらいの人数である。選手でダルビッシュ、大谷、近藤、伊藤の4人。スタッフで栗山監督以下、白井さん・吉井さんはすぐ分かるが城石さん、清水さん、厚澤さんも。そしてブルペンキャッチャーを務めたのがダルビッシュ・大谷・伊藤の球を受けていた鶴岡さんだったというのも知って驚いた。

https://twitter.com/TR_MZDAO/status/1638381825029705728

https://twitter.com/TV_no_Jun/status/1638393900519026689

https://twitter.com/Shinya_Tsuruoka/status/1638499619331031040

信頼できるメンバーをこれだけ固められたというのも栗山監督の人徳という部分が大きいだろう。実際の采配が際立っていたことは言うまでもないが、栗山監督自らがもともと大リーグ志望の大谷を口説き落として日本ハムに入団させると言う前史がなければ、今日のこの優勝はなかったと思われるわけで、この辺りの神がかりぶりもすごいなと改めて思う。

栗山監督は選手としては持病もあって非常に成功した選手とは言えない。規定打席に到達したのは一年だけだし、タイトルもその年に取ったゴールデングラブ賞だけである。本塁打は実働7年で7本。国立大学からドラフト外という経歴でヤクルトに入団し、野村監督の就任によってレギュラーを外されて引退するという、不運もあった。

しかしどういうわけか印象に残る存在であり、その後も解説者等で活躍し、報道ステーションで野球コーナーのキャスターを務めた後、日本ハムの監督になった。明晰な野球理解で期待はしていたが、ダルビッシュの大リーグ移籍の後で大谷を入団させ、そして日本一も獲得するなど、監督としての実績は十分に積んでいた。

だから同じ日本ハムで活躍した稲葉監督の後を受けて日本代表監督になったときはそれなりにやってくれるとは思っていたけれども、ここまで神がかったチーム運営でこうした形での優勝にまで導いてくれるとは思っていなかった。

栗山監督はこの大会で退任するとのことなのだが、稲葉・栗山という路線はこれからも継承して行った方が現代の日本代表というチームカラーにはあっているように思う。


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