3.「戦争は外交の失敗」ではない/教育は贈与であり呪いである/世界は搾取するアメリカを憎み、日米は捨て去った工業力に復讐される/「リベラル寡頭制」が支配する司法判断とアカデミズム人事(05/04 09:33)


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5月4日(土・みどりの日)晴れ

昨日は休日だが仕事。でも休日なので銀行とかにいく仕事はひとまずなくて、昼前にスーパーで買い物をしたくらい。全体的に仕事ものんびりと。疲れが出ているということもあり、ゆっくりやった。

昨日はネットを結構見ていて、その中で考えてみたいと思った主題が三つ出てきた。一つは雁琳さんが取り上げていたエマニュエル・トッドのインタビュー。これは先の補選で当選した立憲民主党の亀井亜希子さんが引用していたことを批判する文脈でトッドの世界史認識が取り上げられた、という文脈から出てきたわけだけど、いろいろな議論を読みながら、トッドという人が現在の世界状況について何を言っているのかようやく理解できた感じがしたのでそれについて。二つ目は東浩紀さんが「教育は契約ではなく贈与である」ということを言っていてそれは面白いテーマだなと思ったということ。三つ目は「戦争は外交の失敗」という言葉をめぐって。いずれにしても全部まとめて書けるような話でもないのだが、簡単に素描してみたいと思う。

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まず、「戦争は外交の失敗」というフレーズについて。この言葉はなんだかしたり顔の嘘つきが言いそうなセリフだ、と思ったのだが、元はイギリス労働党の左派であったトニー・ベンという人の言葉だそうだ。彼はブレアの新労働党路線を批判する左派議員で、アフガン戦争やイラク戦争に反対していたらしい。彼はイギリスの議員らしく、労働党議員でありながら父は子爵位を持ち、本人はそれを放棄したのだが、彼の死後息子は爵位を復活させて子爵に復帰している、という人で、日本ではあまり知られていないがイギリス政界ではそれなりの存在感があった人のようだ。

「戦争とは」という問いではクラウゼヴィッツのテーゼが有名で、「戦争とは他の手段で継続された政治(外交)である」というわけだけど、戦争を絶対悪視する傾向が強くなってからはアウトオブデートに見られている傾向はあるようだ。しかし戦争というのは国家の資源を国家が傾くほど蕩尽する行為になっているわけで、だからこそ戦争目的というのは達成されなければならないし、それが外交という手段によって解決できるならその方が国家にとっては利益であることに間違いはないわけである。

それならなぜ戦争が起こるかということになるわけだけど、いろいろネットを見ていたら「戦争は外交(政治)の不在」というフレーズがあった。まあウクライナ戦争やガザ戦争はその背景に外交(政治)がちゃんとは(普通の意味では)存在してない感じは確かにある。

ウクライナ戦争はプーチンの妄想から始まった問答無用の国家殲滅的なものだし、ガザ戦争は存在を無視しようとしていたハマスに裏をかかれたネタニヤフの激怒が動機でどちらにしても政治(外交)の入り込む余地がほとんどない。バイデンがネタニヤフにいろいろ「助言」をするけれどもほとんどいうことを聞かない、というのはこれは彼にとっては「外交の延長」ではないからだろう。ハマスだけでなくパレスチナそのものを「交渉相手」として認めていない、認めたくない、というスタンスが彼には強いから、外交など最初から成立する余地がない。彼の交渉相手は仲介する周辺勢力の中東諸国であり、かなりの自己主張も飲んでくれる同盟国であるアメリカであろう。だからこれらの戦争においては本来的に「外交」が存在していないわけで、「戦争は外交の失敗」などというのは相手が話が通じる存在であることを前提としたお気楽な思想の結果でしかないということになる。「外交の失敗」などというありもしないことをいうよりは、ウクライナやパレスチナの歴史的経緯や置かれている現実を見て考えることの方がよほど重要だろうと思う。

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https://twitter.com/hazuma/status/1786259166157549870

東浩紀さんの上のツイートの前後の連続ツイートの中で、教育について「本質的に見返りを要求しない「贈与」であり、いわば「交換の失敗」「誤配」である、ということを言っていて、これは面白い考え方だなと思った。

教育の目的は二つあると考えられるわけで、一つは子どもを社会人として生活できる知識や技能を与えること、あるいはその将来の目標に向かっていける自立力を与えることであり、つまりこれは「個人に対しての贈与」であると言えるなと思う。

もう一つは、子供を「現存する社会」に適応させることであり、それは子供の生存を図ると同時に「社会そのものを維持する」ことが目的である。だからこの要素を「贈与」という側面から考えれば、「子供により良い人生が送れるような社会を残してやれるように子供を社会に適応させる」ということになる。


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