2.文系アカデミズムの魔力/古神道研究と様々な方向性(03/25 08:11)


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この本(p.17)で示された系統図を見てみると、仏教伝来以前の神道は原始宗教から原始神道へという流れ、そこから「神社の起源」というところからの合流があり、サイドにアニミズム・自然崇拝・祖霊崇拝・シャマニズム・農耕儀礼と書かれている。いずれにしても、仏教伝来以前には我が国(ないし日本列島)に独自の宗教(信仰)があったという考え方は例えば国学者の発想と同じであって、国学者はそれを現在の信仰から儒仏道三教の要素を取り除くことで引き算で「元々の日本らしさ」を再構成し、「清き明きこころ」とか「日本に本来あった信仰」を掴もうとする方向性であるが、宗教学者は考古学的な祭祀の遺物や遺跡、また世界の原始宗教からの類推等で仏教伝来前の信仰を再構成しようとする方向性になっているのだろうなと思う。

これはどちらもある種のバイアスがかかっていることは間違い無いので、文字のない状態からこころの中身を再構成するという離れ業に挑んでいるという共通性があるわけで、それぞれの説得力のある部分を参考にしていくということなんだろうなと思う。

保守系の歴史を確立しようとしている西尾幹二「国民の歴史」や読んで無いのだけど百田尚樹「日本国紀」などでは記紀の内容だけでなく、考古学的な成果も取り入れようとしているのだけど、その辺りはどうしても立ち位置の違う科学を一つにして描かなければならないという限界があり、無理をするくらいなら両論併記でもいいと思うのだが、いずれにしても「一度失われたものを再構成する」という難しさはよくわかる。この辺りの信仰についての研究で最近面白かったのは溝口睦子「アマテラスの誕生」(岩波新書、2009)なんだが、神話研究の成果なども取り入れながら書いていければいいなと思う。

西尾 幹二
産経新聞ニュースサービス
1999-10-01

 

百田尚樹
幻冬舎
2022-06-17



溝口 睦子
岩波書店
2009-01-20



やはり本を読むことで自分の中の様々なものが掘り起こされてくることはあるなと思う。面白い本を読んでいきたいものである。










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