2.「鎌倉殿の13人」第46回「将軍になった女」を見た:「独裁者にはなれても主君にはなれない」義時と「主君になった」政子/ワクチン接種と新しい照明(12/05 06:57)


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この辺りは面白いと思うのだが、義時はどんなに実質の権力を握っても家柄的にNo.2以上には上れないわけで、鎌倉武士たちの「主君」になることはできない。だから義時は「独裁者」になることはできても「主君」になれるのは政子だけなのだ。No.2の執政であれば身内を優遇するようなわがままは禍根を残すが、主君であれば多少のわがままは許される、というのは事実だろう。政子は自ら尼将軍になることで実衣を救った、というストーリーはよくできているし、これが来週の展開に効いてくるのだと思う。

政子は実衣に放免になったことを告げる際、「二人だけになってしまった」という。兄弟は義時も時房もいるのだが、男子を全て失った母としての共感は二人だけのものだろう。この時点で政子には頼家の娘である竹御所という孫がいて、実衣にはのちに公家としての阿野氏を名乗る娘(子孫に後醍醐天皇の寵姫だった阿野廉子がいる)はいるのだが、子を失った母としての悲しみが共有できることに違いはないだろう。

義時の現在の妻であるのえ(伊賀局)は自分の子である政村を執権の後継にしたいのだが、義時は取り合わない。そこで八重(伊東祐親の娘)や比奈(比企能員の一族の娘)は謀反人の娘だとか、八重が訳ありだとか義時の地雷でタップダンスを踊るようなことを言い出す(タイムラインで見た表現)が、これは先週の回で義時に「八重や比奈はもっとできたおなごであった」と言われたことの意趣返しの意味もあるだろう。政村の烏帽子親は三浦義村で、またここでも義村が顔を出すことになるのだが、今書いていて今後の展開の重要な伏線になってる気もしてきたのでこのことはこれ以上書かない。

面白いのは、のえが義時と泰時の関係を、「仲が悪いくせにお互いを認め合ってるようなところがあって気持ち悪い」というところで、これはまあ本当にそうだろうと思うのだが、初と泰時の関係(史実ではもう離婚してるはずなのだが)もそうだし、義時と政子の関係も、政子が尼将軍になると告げた時の義時の反応を見ても、「仲が悪いように見えてお互い認め合ってる」ということを言おうとしてるのだろうなと思った。この辺の「北条家の絆」みたいなものは第1回から丹念に描かれているからこそここにきて冷戦状態に見えても心の底で通じ合っているということに説得力があるわけで、一年かけて書かれてきた「北条家の絆」というものがここで重要になってくるのだなと考えていると少し涙ぐむところがある。

これは有名な史実だし次週予告でも流れたから書いていいと思うのだが、「妹である実衣」(阿波局)を義時の断罪から救うために尼将軍になった政子は、後鳥羽上皇によって朝敵とされた「弟である義時」を救うためにあの有名な演説をするということなのだと思う。

三谷さんの脚本は、従来の「悪女」「強い女」として描かれてきた政子像を変えたいという意思をもって書かれてきていることは本人も言っているしよくわかるのだが、今まで描かれてきた分だけでは政子はむしろ「状況に流されるだけの弱い女」の部分が強くなってしまっているわけで、「鎌倉を守るために「あの演説」をする政子」になるためには、どこかで政子自身が「変わる」必要があったわけだ。だから今週の回で政子と実衣の関係をこれだけ丹念に描いたのだと思う。

まあ歴史を学んできたものとしては、中世史最大の事件と言ってもいい「承久の乱」にはエピソードもたくさんあるので量的にあまり描かれないだろうことは残念ではあるのだが、源平合戦にしても義経追討にしても基本的にあっという間に終わったことを考えると、いくさに関してはまあそれはそういうものとして作ったということなのかなという感じもある。まあその辺を多くの視聴者にいかに納得させるかというところではあるわけだけど、今回の政子と実衣の関係の描き方はあまり予想していなかったので、かなりインパクトがあったというか良かったなあと思うのだった。

ついにあと2回となった。最後まで期待して見たいと思う。



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