2.「壊れかけている民主主義」を建て直すために:エマニュエル=トッド・インタビューを読んで(1)(01/24 15:43)


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これは「才能があり(≒生まれがよく)努力した(≒高い教育を受けた)人は報われて(≒社会的に高い地位について)当然だ」というネオリベ的なメリトクラシーの思想を乗り越えなければ分断は解消できない、というふうに言ってもいいし、また今必要なのはグローバル化ではなく国内の統合・団結=unityである、ということでもあると思う。言葉を変えて言えば、国家は「国民の、国民による、国民のための国家」であるという意識に改めて立ち戻るということでもあると思う。

実際のところ、日本でもその分断は深刻になってきているが、伝統的な階級社会であるヨーロッパはそれ以上だし、貧富の差や人種による階層の文化がもともとあるアメリカでも日本の比ではない。

つまり、トランプ現象に関して、問題はトランプ派の民衆の方にあるのではなく、エリートの側にあるということを言っているわけで、これは私も賛成できるし、日本に関してもその通りだと思う。

これは次に出てくるグローバル化の議論においてもそうなのだけど、重要なことは国家、国民の生活、経済を守る意識が大事であり、そのためには適度に市場を占めることが重要であり、多少の保護主義を持ち込むことが重要であると言っていて、その理由もまた、「エリートと大衆の交渉は国家の枠組みの中でのみ可能だから」だとしている。

つまりトランプ現象やブレグジットのような「大衆の反乱」がアメリカやイギリスで起こったのは、国の中で格差が深刻になったからであり、これらの現象は社会が壊れていくことを避けるために起こっているのだと指摘している。英米が先頭に立って資本主義を世界に広め、またグローバル化を推進してきたことを考えると、英米にこうした現象が世界に先んじて起こっているのも歴史の論理的帰結であって、社会を立て直すためのチャンスであるという感じで捉えているように思われた。

この辺りまでのトッドの議論には私はとても賛成で、というよりももともとはっきりとそういう意見なので、今までこの人の著述に触れてこなかったのは残念だと感じた。インタビューを最後まで読んでみると、特に日本についての意見は少し違うなというところがあるのだが、それは日本に対する観察が少し妥当ではないと感じるところもあるからだと思う。

しかしメリトクラシーの限界についての議論は同意できるし、ポリコレに関しては書いてないけれども、エリートの側が進めようとしているこれらの政策も結局大衆の多くは損を被る側であるので、そこに同意できないのも当然だと思う。エリートの側の正義を一度括弧に入れて今最も重要なことに取り組んでいくという反急進主義、漸進主義の思想こそが今重要なのだと思う。


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