7.「鎌倉殿の13人」第44回「審判の日」を見た:実朝暗殺事件の背後にあった「五つの対立」/体調と睡眠:長く寝られれば良いというものでもない(11/21 12:19)


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五つ目は、執権として権力を握りながら実朝の成長もあってその位置がやや不安定になってきた義時と、実朝の重用されるとともに後鳥羽上皇との連絡役としても重きをなしてきた源仲章との対立。このドラマでは義時に対する敵対者たちは比企能員もそうだったが露骨に権力欲を示し、それを宣言するという分かりやすいドラマになっているが、今回もまた仲章は露骨に義時に敵意を示す。また大江と話し合った結果仲章の排除をトウに命じ失敗するという不手際を前提に、仲章に拝賀式の太刀持ちの役を奪われるという展開になりそうで、これは「なぜ義時は直前になってその役を降りたのか」という謎への一つの回答としては面白いと思った。実際に拝賀式当日に暗殺を命じたというのはあり得ないとは思うが、本来務めるつもりだった役回りを仲章に奪われた、ということはなかったとは言えないなあと思った。結果義時と思われた仲章は公暁に殺されるということになるだろうけど、事実としてはそういうアヤはあり得ただろうなと思う。

これらの展開に、泰時がさまざまに関わっているのも面白いなと思う。実朝に「太郎の願いです」と短剣を持つことを嘆願し、三浦の動きを思いとどまらせ、公暁の動きをつかんで義時に伝え、また直前になって公暁の暗殺対象に義時が含まれていることも知る。

話の筋としても仲章が名誉ある役を義時から強奪したために殺されることになったというのはやはり面白いアイデアであるわけで、それであってこそ「白い犬の夢のお告げ」や運慶作の「十二神将・戌神」が義時を加護したという話も生きてくるわけだ。

この「白い犬が守り神」というのは逆に言えば義時自身がある種「頼朝に犬のように忠実に従って生きてきた」ということの暗示でもある気はする。「頼朝の作った武士の都である鎌倉」を守るために「宗時の夢だった坂東武者の頂点に北条が立つ」ことを成し遂げ、それを守るためには頼朝の子である実朝さえも見限り、頂点である後鳥羽上皇さえも散々に打ち負かすのは、義時が「鎌倉あっての北条」であると考えるからであり、また逆に北条が頂点に立たなければ鎌倉は治らない、「北条あっての鎌倉」であると強く認識するからなのだろう。そうなると逆にその守り神である白い犬は頼朝なのかもしれないとも思われてきて、「守るものが守られ、守られるものが守る」ような話にも見えてくるなあと思うのだった。

正直、見たときには「この展開はアリかなあ」と思うことが増えてきた三谷脚本だが、後でよく考えてみると構造としてとても上手く作られていることに気づいてくる。その分実際には偶然性が左右している部分が多々あると思われる史実の展開よりも上手く矛盾を収めているとも言えるわけで、上手くできた脚本だなあと改めて思うのだった。



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