少し郊外の町に出かける。雨がずっと降っていて、町は濡れていた。
駅から少し離れたところに、関東大震災の後に立てられた実業家の屋敷とその大きな庭が区の管理下で公開されているところがあり、いつもは駅に近い側から入るのだが、今日は川に近い側の、本来はその屋敷の正面玄関に当たる方から入っていった。
ごく小額で、お茶菓子つきの抹茶が振舞われる。明るい座敷に座り、庭を眺める。回遊式の日本庭園だが、庭園内に入ることは出来ないようだ。庭の緑が雨に濡れて美しい。日本の庭は、雨の日にいっそう風情を見せるように作られていて、情緒が溢れている。
震災後の建築らしく、モダンな部分があちこちにあって、ガラス戸が嵌められた縁側の上の欄間は幾何学的なデコ的なデザインである。
垂れ下がった松の枝のたくさんの松葉に、雨の粒が一つ一つ付いているのが光って、とても美しかった。池の下の鯉たちが時折こちらを眺めていた。
私がそこを立ち去っても、庭ではずっと雨が降り続けているのだろう。