昨日は、朝から松本に出かける。松本文化会館でサイトウキネンフェスティバルの演奏会があり、ゲネプロの招待状をもらったのだ。松本文化会館は松本駅からはかなりあって、バスは長蛇の列だった。別系統のものに乗って、20分ぐらいだろうか。10時過ぎに会場に着いた。演奏は11時から。かなりたくさんの人が既に集まっていた。
演奏前から少し調子が悪くなっていたのだが、会場に座ると腹が痛い。しかも乾燥しているし、冷房も吹き付ける。場所は、2階席の一番後。4階まで上ってすぐのところだ。いつもはあまりよく見えない打楽器がよく見える。最初は笙とオーボエの現代音楽。よく知らなかったが、あとでプログラムを見たら武満徹だった。天上桟敷とはよく言ったもので、自分が芝居をやっていた頃の、証明の調整をしていた場所からの眺めに良く似ていて、証明の調整や舞台装置の配置をいちいち観察しているような気分になった。
2曲目はベートーベンのピアノ協奏曲。よく聞いたことのある曲だったが、曲名はそのときは分からなかった。あとで確認したら協奏曲5番の「皇帝」だった。ベートーベンらしく華やかな曲。そうそう、ほかの曲で使われたモチーフにちかいメロディがよく出てくる曲だなと思った覚えがあった。指揮は小沢征爾。この人の指揮を見るのは二度目だが、(前もサイトウキネンオーケストラのゲネプロだった)楽しげな指揮でいい。体調不良でウィーンの国立歌劇場の音楽監督の仕事をキャンセルしたと聞いていただけに、体調はどうなのだろうと思ったのだが。
演奏が終わると、小沢がいろいろ指示を出し始めた。言っている内容はよく聞き取れなかったし、早口だし、よく聞こえても意味が分からなかったと思うが、いろいろなところを確認したり指示を出したりしていた。演奏しなおした箇所もいくつか。なるほど、先ほどの演奏とは少し感じが違う、などと思ったり。演奏中ずっと腹が痛く、どうなることかと思ったが、とにかく持ちこたえた。あとで確認して驚いたのだが、ピアニストは内田光子だった。ゲネプロでみな思い思いのTシャツやら普段着を着て演奏しているのでみんなそこらのおっさんおばさんあんちゃんねーちゃんという感じだったのだが、ピアニストも全然目立たなかったなあ。内田光子ならもっと心して聞けばよかった。こういう演奏をする人なんだ、と思いながら聞いてはいたのだけど。
3曲目は交響曲で作曲者は分からなかったがロマン派的。聞いたことがあることは確かだ。後で確認したらショスタコーヴィッチの5番だった。各楽章の最初の音がどれもこれも印象的。やはりオケの生音はいいなあと思う。体調がもっと良かったらもっとよかったのだが。とにかく寒くて用心のために持っていったカーディガンを膝にかけたりはおったり。両方に使えないのが困る。喉が乾燥しないように両手で鼻と口を覆って呼吸する。打楽器が面白くて、ずっとティンパニと小太鼓の動きを見ていた。トライアングルやシンバルもいいなあ。何の音かついに分からなかった音もあった。高いところからだと全体が見えて面白いことは確かだ。
これも演奏が終わったあと小沢が指示をいろいろ出していて、こういうのって面白いなと思う。以前ゲネプロを見たときは全部さらってそれでおしまい、だったが、こういうのは臨場感があって面白い。
しかし、実は以前サイトウキネンを見に来たときはその日に体調を崩し、(大晦日だった)正月中高熱を発して寝込む羽目になったので、今回の体調不良もちょっと気になった。腹は演奏が終了してもまだ痛い。バスは長い行列だ。とにかく冷えたせいが大きいと思い、歩くことにした。炎天下を歩く歩く。足はふしぎに良く動く。腹はずっと痛い。松本の町の、あまり歩いたことのないあたりを歩き続けて、こんなところにこんなものがあったのか、と思うものがいろいろ。しかし腹が痛いし観察する余裕もない。30分くらい歩き続けただろうか、ようやく知った場所に出てきた。そこからさらに10分ほど歩いて、ようやく駅に到着。時刻を調べて2時34分発の普通電車に乗り、特急に乗り換え、東京に帰ってきた。
朝から何も食べてなかったので、そのせいもあるかと思い、おにぎりとポカリを買って車内で食べる。案の定、少し落ち着いてきた。上諏訪で特急に乗り換え、車内販売で弁当を買って、無理やり詰め込む。そうすると見事腹の中が落ち着いてきて、驚いた。急いで乗ったので自由席だったのだが、結構混雑していた。新宿に着いたのはもう暗くなり始める時間。地元の駅で降りて夕食の材料を買って帰った。ようやく人心地がついた。
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