4888.23個目の超新星/「かわいい」が点火する集団的欲望力/笙野頼子のハイテンション/党三役にW中川(09/25 15:08)


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ニュースサイトを見てて驚いたのが山形のアマチュア天文家、板垣公一氏が自身23個目の超新星を発見したというニュース。しかも今月に入ってから3個目というからなお驚く。今年は計7つ目、昨年は4つ、2004年は6個。最初に発見したのは2001年というから、驚異的なペースである。一体どうやったらそんなことができるのだろう。昔ゴッドハンドといわれた考古学者がいたが、この人はまさに「神の目」である。考古学と違ってインチキも出来ないし、ただただ舌を巻くしかない。

昨日NHKスペシャルをなんとなく見ていたら携帯で買い物をする若い女性という話が出ていて、相変わらず若い女性の「かわいい」買い物その他に対する強烈な欲望の力には凄いなとしか言葉がない。日本のモード産業の発信者も『東京ガールズコレクション』などの方面にも手を伸ばしていて、海外の取材者もモードの発表会よりこちらの方が多いくらいだということで、まったく驚く。最近そういうものと縁がないからなんともいえないが、現代に生きるものとしてまったく無関心でいてもいけないのではないかという気もする。番組でもショーの場面を写していたが、その熱気は凄い。観客が「かわいい」とつぶやいて涙ぐんでいたりすると、「かわいい」という言葉の持つ超弩級の迫力を改めて確認させられる。「かわいい」が点火する欲望のエネルギーはまったく恐るべきものだ。

なんというか、日本の女の子のある種の欲望というものは、かわいいという言葉にものすごく凝縮された高濃度のパワーを持つものとして、あたりをなぎ倒すような迫力がある。これだけの力を発揮する集団というものは今の日本にほかにあるだろうか。そこに群がって大量に供給し、破格の売り上げをあげる人たちもまた突っ走り続けている。その突っ走るさまも光速性を持っている。

何かにあれだけ夢中になれることがあるのか。そしてそれがひとつの巨大なグループの力となって発揮されることも。世界から注目を集めるのもむべなるかなである。

あんまりよくわからないが、ネットや携帯のサイトでもそういう方面は爆発的に伸張しているんだろうなと思う。最近あまり「本気で熱い」ものに触れてないせいもあって、そういうものを垣間見たことがかなりの衝撃的な余韻として残っている感じがする。

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日中図書館に行って笙野頼子『説教師カニバットと百人の危ない美女』(河出書房新社、1999)を借りる。いま74ページまで読んだが、これは凄い。佐藤亜紀が絶賛するのも分かる。『タイムスリップ・コンビナート』ではまだ確立していなかったスタイルがこの作品ではほぼ完成しているといっていいのだろう。

<画像>説教師カニバットと百人の危ない美女

河出書房新社

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「だから何が悪い。ブスがデリケートで。/確かにマスコミから見た私は気味の悪い顔をしてブス小説を書くカルト作家だ。が、実際は魔境で静かに暮らす繊細な小市民なのだ。無論時にはこの顔のせいで、何の脈絡もなく、美男異色漫画家根○敬と対談しないかと依頼されたりする。が、そういう時は涙声になって断ってきた。依頼してきたのはS○Aという雑誌だった。で、私が恐れていると判ると、依頼してきた相手は、噴き出したのだ。顔の割りにはふがいないやつだときっと思ったのだろう。」

声を出して読んでみると判るが、これはある意味じつに演劇的で、舞台で演じたら爆笑の連続になるだろう。笙野も確信的にそういう芸として書いている。道行く人を悪所に引きずりこむ客引きの芸である。語り=騙りという等式が成立する。まじめな顔をしてこの部分を批評しろと言われたらどのように批評するものだろうか。

ある意味での天才であることは確かなのだが、こちらもかなりのテンションがないと読み切るのは大変そうな本だ。この作家が好きな人は、やはり自分自身も相当ハイテンションな人が多いのではないかと思う。


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