4886.女道楽/『東アジアの不安定要因』(05/20 14:59)


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戦前の日本が大東亜共栄圏を唱え大東亜会議を開いたりしたのはやはり日本の存在が西欧諸国に対するアンチとして期待されていたからこそのことであり、日本はもちろん日本なりの期待も持ちつつ東南アジア諸国を援助した。その構図は現代の中国のやり方と似ていて、敵視しているはずの戦前日本の戦略を彼ら自身が実行しているように思われる。

現代のアメリカ一人勝ち体制への「アンチ」たらんとしているのは国家としては中国とロシアであろう。アメリカも失策続きで地盤沈下が著しいし、この機会にプレゼンスの拡大を図っているのは明々白々なのだが、しかしどう見ても中国やロシアには「世界戦略」があるようには見えない。アメリカなどはえげつないくらい自国に都合のよい世界の構築を追及してきたわけだが、中国やロシアに世界をどう構築しなおすかというほどの構想があるとは思えず、そういう意味では「アンチ」であるからこそ勢力を伸ばしえているだけで、「リーダー」にはとてもなれそうにない。

これを招いたのは、小泉政権下における日本のアメリカへの急接近が大きいだろう。日本も常に潜在的なアメリカへのアンチではあり得たのが、その期待がほとんど失われたように思われる。国連など数がものをいう場での外交では、そうした「期待値の向上」は重要な戦略であるはずなのだが、自分たちだけがアメリカの保護下に入って安全を確保しようとしている、と露骨に見られ始めたのではないかという気がする。

中国は国内統一も反日反米のアンチ路線でやってきた経緯があり、それがかなり広い範囲で通用しているのでそう簡単に路線変更は出来ないし、日本が変に接近したところで無礼な扱いを受けるのは目に見えていることで、別に無理に接近することもない。ただ親米や反中だけでない独自の外交ビジョンを提示できなければ、日本のプレゼンスは低下する一方になるだろう。

ただ最近の、いろいろな意味で国内的にも国際的にも責任を回避しようとする傾向ばかり強い日本の現状がある限り、「自立」志向なんてことが世論の主流になることは無いのかもしれないと思う。なんていうか、きわめて情けないことだと思うが、みんなあんまりそう思っていないようで、よくわからない。

思想の時代から立身出世・蓄財興業の明治20年代へ進みつつある。肉体言語などというのも遠い過去の話になりつつあるんだろうなあと思う。

しかし、油断なく牙を研いでいる国が周辺にはあるわけで、待ったなしでそれに晒されたときにいったいどういう対応を取るつもりなんだろう。現代は、明治20年代の日本と中国と、所を替えて歴史が繰り返しているのかもしれない。明治278年には日清戦争が起こったわけだが。


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