4876.アンジェラ・アキ『Home』を聴く/ナイポール『ある放浪者の半生』:アイデンティティと歴史(06/17 12:50)


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昨日帰京。仕事中は体調が悪かったのだが、後半に行くにしたがって持ち直してきた。駅に行くと特急が30分以上遅れていて、待合室でずっと待つ。帰りの特急の中ではナイポール『ある放浪者の半生』を読み続ける。結局新宿に着いたときには50分近く遅れていて、家に帰り着いたときには日付が変わっていた。

集合ポストにはみ出るほどものがあるので見てみると全部アマゾン経由のもの。先日注文したアンジェラ・アキのDVD付きCD『Home』と、マーケットプレイスで注文したエミール・ゾラ『制作・上』(岩波文庫)、車谷長吉『忌中』(文藝春秋)である。頭の中がナイポールになってしまっていたので今はゾラや車谷じゃないよなあと思いつつテレビをつけると、なんとニュース23にアンジェラ・アキが出ていた。徳島弁の気さくなお姉さんという感じだが、どうも筑紫哲也との会話はなんか(TBS側にだが)気持ち悪い部分があり、音声を消して映像だけ見ていた。ちょっと猫背のひとだ。

テレビで見るとやはり映像はきれいだ。右足をペダルにおいて左足を引き(必然的に椅子も右を前に斜めに置いている左足でときどき足踏みし、からだを前後に大きく揺らしながらディーバのようなのびのあるきれいな声で歌っていた。

寝る前にはきちんと聞ききれなかったので起きてからCDを聞きDVDを見たのだが、なんといっても声とメロディーが抜群にいい。言葉は最初生硬な感じがしてちょっととっつきにくかったが、聞いているうちに慣れてきた。「ふ」の音を長く伸ばす曲がいくつかあり、その音の感じがとてもいい。よく聞くと、言葉も生硬な部分とメロディに非常によく乗った部分があり、その対比が面白い感じもする。曲想はいろいろなミュージシャンの曲が頭に浮かんだが、最近自分があまりきちんとポップスを聴いていないせいもあり、最近の潮流の上にあるであろう部分はあまりよくわからないところが多かった。

しかし「Home」や「This Love」などわりあいすぐに覚えてしまいそうな曲もいくつもあり、一緒に歌ってみても気持ちがいい。ファイナルファンタジーとタイアップで売り出しているとのことで、10代の認知度が一番高いということだが、音楽的にはもっと上の年齢でも聞かせるものがある。「浸ってみたい」アルバムだ。

<画像>Home (初回限定盤)(DVD付)
アンジェラ・アキ, 松岡モトキ
ERJ

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ナイポール『ある放浪者の半生』、電車の中でだいぶ進んだが読み残しがあり、朝起きてから読み進めて読了した。ひとことで言うことの出来ない複雑な小説だ。

印象論から。最初の章は読んでいてどこに面白さを見出したらいいのかわからない奇妙な非現実感が続く。次の章に入ってナンセンス的な面白さが炸裂し、そういう小説かと思って読み進めると人物像がだんだんカリカチュアライズされすぎな気がしてきてどうなのかと思っていると、最後の章(といっても全体の半分くらいある)でアナという女性が出て来て、そこから急に魅力的な話になっていく。しかし主人公ウィリーがアナとアフリカ(まず間違いなく旧ポルトガル領モザンビーク)に行くとそこから描写が紀行文的あるいはジャーナリスティックになり、ウィリーの語りなのに作者自身が語っているとしか思えない感じになる。結局こういう社会派的な話なのか、と思っていると最後にグラーシャという女性に出会い、話は文学的になっていく。たくさんの世界を渡り歩く主人公を描いているのだけれど、その描写の方向性がどんどん変わっていく。ちょっとこういう小説は今まで読んだことがない。

<画像>ある放浪者の半生

岩波書店

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