4620.『ダヴィンチ・コード』と『愛の流刑地』のはざまで/「気持ちいい」一日(05/22 11:31)


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昨日。昼過ぎに外出。昨日はかなり元気があったので散歩をしたいという気持ちと久しぶりの天気なので初夏の風を感じたいという気持ちがあった。普段歩いていないところを歩くと自分の内面が活性化してくるので、私は知らない道を歩くのが好きなのだが、どの辺りに知らない道で気持ちい道があるのかということになるとこれはまあ行き当たりばったりということになる。昨日は不思議なくらいそれがうまく行って、まだまだ自分は東京を知らないんだなあと「一生精進」みたいな気持ちになった。

いつものコースで、新御茶ノ水で降りて神保町に歩く。神保町でまず三省堂に入り、何か読みたいのが無いかなと探すが、世の中『ダヴィンチ・コード』ばかりだ。キリストがらみで話題を呼んでいるようで、フィリピンでは上映禁止になったとも言うが、ベネディクトゥス16世は日曜のミサでも言及しなかったらしい。まあ賢明な対応というか、大人の対応と言う感じである。下手に言及するとまたガリレオ裁判並みの面倒がおころうし、フィクションはフィクションとして対応する程度にはカトリックは成熟していると言うべきだろう。売り場を少し進むと今度は『愛の流刑地』が山積みである。おいおいと思うが、こういう大規模書店ではこういう売り方をせざるをえないんだろうなあと思う。大川隆法がスペースの一角を占めていたり、『人間革命』がどんと積んであったりするのも商売というものだろう。

まあしかしそういう商法にはどうもなじめないものがあるのも事実で、探していたミラン・クンデラ『カーテン』(集英社、2005)を見つけたのだが、ほかの書店で買おうと思って一応目だけつけておいた。裏口から出て東京堂に入り、二階に上って外国文学を探すと『カーテン』はすぐに見つかった。ぱらぱらとめくってみるとやはりshaktiさんの推薦だけに面白そうで、すぐ買った。2500円(プラス消費税)はちょっと痛いので、もともと、まずはユーズドか図書館の貸し出しで、と思ったのだけど、どちらもうまいのが見つからず、読んで面白ければ新刊で買おうと思ったのだった。集英社というのも『少年ジャンプ』くらいしか出版物が思いつかなかったが、(あとは『プレイボーイ』か)文学関係のもいろいろ出しているんだなと最近認識してきた。

古瀬戸珈琲店に入って昼食をとろうと思い、メニューを見て出来心でミネストローネスープを注文したのだが、やはりカレーとかほど満腹にならず、午後はやや空腹で過ごす。ぱらぱら見た感じでは「世界文学」への言及があったのが興味深く、「東側出身の亡命作家」とか「スラブの作家」というレッテルに苦労したという話が面白いなと思った。こういうことって、今でもずいぶんあることなんだろうと思う。大衆レベルではやむをえないとしても、知的エリートの世界でもずいぶん奇妙な歪曲された認識は大手を振っているのだろうと思う。

神保町の裏町を歩き、専大前の交差点のあたりから竹橋の方に歩いて、面倒になってきたので地下鉄に乗ろうと思い下に下りる。上に上ってくる若いカップルの男が「今日は気持ち言い、ホントに気持ちいい」といっていた。全くいい気候で、昨日一日で「気持ちいい」という言葉をいったい何回聞いたことか。いや気持ちはよくわかるのだが、なんだかあんまり聞いているとちょっと滑稽な気がしてきた。

下に下りると切符売り場に長蛇の列。どうも近代美術館の「フジタ展」がえりの人たちらしい。普段はパスネットを使っているので関係ないのだが、そのときは丁度切れていてしかし売り場に並ぶのもうざったいなと思いお濠端を大手町まで歩くことにして反対側の出口に出た。暫く行くと平河門で、濠の向こうから人が三々五々出てきていて、ああ、こんな日は皇居東御苑を歩くのもいいなと思って苑内に入った。

全くいい日和で、本当に気持ちいい。本丸の方には上がらず、二の丸の雑木林を散策。昭和天皇の発案で武蔵野を再現したというが、いい雑木林である。大手門の方に向かい、売店を見つける。ここで買い物をしようと思ったことがなかったのでどんなものがあるんだろうと思ってのぞくと皇室ゆかりのみやげ物があれこれと。なるほどこういうものを売っているのかと思い、実用品を、と思って袱紗を買ったのだが、考えてみると菊の御紋入りの袱紗を一体どの席に持っていけるのだろう。ちょっと大げさになってしまうなと買ってから困った。

ついでに三の丸尚蔵館に入り、花鳥画の展示を見る。狩野探幽ってうまいなと今更馬鹿のような感想を持つが、やはり目玉は伊藤若冲だろう。どうしてこれが昔は評価が低かったのかと不思議に思うし、そのせいでたくさんの絵が海外に流出してしまったことを思うと惜しくて仕方がない。金さえあれば買いたかった、無かったけど。外国人観光客をはじめ結構な人出で、入場も無料の東御苑というのはこういう日には全くぴったりの散策場所だった。


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