こうして一覧してみるとわかるが、戦後政治で重要なポジションについた人々の多くが同交会に所属していており、戦中戦後を通じての議会政治の伝統が彼らによって守られた、というのが著者の主張である。まさに尾崎行雄と鳩山一郎が同じ少数会派に属したというのはその連続性を言っていいだろう。戦後は鳩山一郎の公職追放により政権についた吉田茂が彼らたたき上げの政党政治家(党人派)を嫌い、官僚を一本釣りして側近を固めていった(池田勇人、佐藤栄作ら)ために官僚人脈と党人派が戦後の保守政治家の二大潮流となったが、三角大福中の時代、つまり197080年代まではこの種別も相当の意味があった。90年代に入ると宮沢喜一を最後に官僚出身の首相が出なくなったのでやはり93年の自民党下野は大きな政治の潮流変化だったなと思う。「国民的人気」が支えのポピュリズム的傾向が強くなり、小泉政権誕生でそれが炸裂した。経歴よりも政治家の個性の時代である。いろいろな意味で、戦後政治は「総決算」されつつある。戦中戦後の政治の展開に興味のある方にはお勧めである。ただ連載ものであった関係上、章が短くぶつぎれになっていて読みにくいのは瑕疵ではある。それにしても、憲法云々で空理空論を並べ立てている人々には、とにかくその時代の実情を知ってもらうためにこういう本を読んでいただきたいものだとは思う。
新宿で下車し、東京駅まで来て食事を済ませ、八重洲ブックセンターで本を物色して安倍晋三『美しい国へ』(文春新書、2006)を買う。まさに安倍の「政権宣言」の一書だといってよいだろう。まだ読みかけだが、共鳴するところは多い。微妙に感覚が違うな、というところもあるが、それはまあ仕方がないだろう。章名を上げてみると、「はじめに―『闘う政治家』『闘わない政治家』」、「第一章 わたしの原点」「第二章 自立する国家」「第三章 ナショナリズムとはなにか」「第四章 日米同盟の構図」「第五章 日本とアジアそして中国」「第六章 少子国家の未来」「第七章 教育の再生」「おわりに」となっている。まだ第四章の途中までしか読んでいないので全体像はわからないが、やはり「国家はどうあるべきか」、ということを熟考し、実践している政治家であるということはよくわかる。「闘う政治家」であることを意識している点ではある意味『大政翼賛会に…』に出てくる政治家たちの姿勢と共通しているし、数少ない政治家らしい資質を持った政治家だと思う。
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