戦後民主主義の偶像という感じでずっと敬遠していたのだが、丸山は「進歩的文化人」であるとはいえなくはないが単純な左翼では全くない。おそらくむしろ保守的なところがあるといっていいのではないかと思う。その彼が進歩的文化人の代表のように語られ、また確かにそういっていい部分を持っているのは、彼の「戦争体験」の感じ方なのだろう。彼の「軍国主義批判」は原則論的で、「軍国主義批判」からその思想構築・論理構築が始まっているために「軍国主義」といわれるものの何が不当に貶められているかといった、客観的な遠くから見た評価が出来ないというところがあると思う。しかしそれは時代の制約から仕方のないことだと思うし、現在は彼の日本社会の構造分析を評価しつつ、彼の時代観・軍国主義観は批判的に乗り越えていくべき時期だと考えるべきなのではないかと私などは思う。
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