3677.モンテーニュを探す/塩野七生『ローマ人の物語 迷走する帝国』/ゴルゴ13を朗読するという企画(09/01 09:35)


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<画像>ローマ人の物語 (12) -迷走する帝国
塩野 七生
新潮社

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塩野七生『ローマ人の物語』(新潮文庫、2008)32巻[迷走する帝国・上]、現在136/212ページ。セプティミウス・セヴェルスの死(紀元211年)後の四人の皇帝について。カラカラ、マクリヌス、ヘラガバルス、アレクサンデル・セヴェルス。読む前から知っていたのはカラカラとヘラガバルスの二人。カラカラは大浴場の建設と帝国内のすべての住民にローマ市民権を与えたということで知られている。ヘラガバルスは私はエラガバルスとして知っていたが、最初にこの奇妙な皇帝について知ったのは、澁澤龍彦『犬狼都市』に収録されている「陽物神譚」に描かれた少年皇帝である。それからこの太陽神侵攻の新刊でもあった奇妙な少年ローマ皇帝のことは関心を持っていたが、塩野はごくあっさりと外面的な事情を追いかけて描写を打ち切っている。つまりはローマ人たちの立場から、このオリエントからやってきた新皇帝の評価を下しているわけで、まあこの本のスタンスとしてはそれが妥当なのだろう。

<画像>澁澤龍彦初期小説集 (河出文庫)
澁澤 龍彦
河出書房新社

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セプティミウス・セヴェルスは五賢帝の最後マルクス・アウレリウスの死後、不肖の子として知られるコモドゥスが暗殺された後の乱立期を勝ち抜いて皇帝の座についた人物で、北アフリカ、カルタゴの故地の属州出身であった。その妻はシリアの太陽神神官の家系の娘で、ユリア・ドムナという。彼の死後皇帝になったのはカラカラであったが、万事に積極策をとったものの中途半端なアレクサンドロス大王信仰のためにパルティアとの和議に失敗して暗殺された際、ユリア・ドムナも自死した。簒奪者マクリヌスはパルティアとの和議を急ぎすぎたためにユリア・ドムナの妹ユリア・メサの策略にはまって殺され、ユリア・メサの孫のヘラガバルスが皇帝となる。しかしその奇矯な統治の末に彼が殺されると、ユリア・メサの別の孫であるアレクサンデル・セヴェルスが帝位を襲い、ユリア・メサは地位を保つことができた。このあたり、やや神話じみた皇帝の話が続くところが衰退期の巨大帝国の様相をよくあらわしていて興味深い。『ミシェル』に描かれたヴァロア朝末期の奇妙な王たちの様相も変といえば変だが、人間性の奇怪さがより現れてくるのはキリスト教イデオロギーが支配しているルネサンス期よりは、古代的奇怪さがそのまま現れたこの巨大な古代帝国の方だ。


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