21.革命という大きな物語の崩壊後の左派の主張と社会維持の矛盾/福祉国家の維持のための国民統合を嫌う左派/少子化は個別最適と全体最適の矛盾から起こる人口問題の一つの局面/軍が不信の念を持たれた理由とそれを乗り越えつつある自衛隊(05/24 09:40)


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5月24日(土)曇り

頭の中の整理がある程度進んだせいか書きたいこともいろいろ出てくるようになって来たのだが、まとまったものでもないので毎日いろいろなことを書いている感じになっているが、しばらくはそういう出し切る系の書き方でこのnote/ブログも書いてきたが、今朝は書きたいことがありすぎて流石に出し切るのは無理かなという感じになっている。思ったことをいくつか書いておきたい。

左派と言えば基本的には社会主義・共産主義なのだけど、それ以外の流れとしては自由主義的アナーキズムとでもいうべきものもあり、権力というものそのものを嫌う人たちは前者よりは後者の色合いが強い場合が多い。ただ、左派というだけですぐ共産党だとかなんとかいうのは流石に解像度が低すぎるが、共産党は最終的には革命を起こして権力を握りたいわけだけどアナーキストはそういう共産党の体質が嫌いだから反対して来ているわけで、権力やら資本やらに対して対立するときだけは共闘するけどその他の時は内ゲバを繰り返して来たという流れがある。

ただ、革命が現実的でない状況になってきた70年代後半以降は弱者・マイノリティ支援と環境主義にシフトして来ているわけだけど、この方向性には大きな絵、つまり最終的に実現すべき社会ないし世界がどういうものであるべきか、ということについて絵が描けていないというのが弱点がある、ということは抑えておくべきだろう。

それはどういうことかというと、共産主義というのは元々は資本主義社会の「矛盾」、つまり生産力と生産関係の矛盾から資本家と労働者の抗争が激しくなり、最終的に社会主義革命によって資本家の支配体制を崩壊させて労働者が権力を握る共産主義体制を作る、という「理想像」があったわけだけど、今はそれが現実味のあるものとして捉えている人はまあいないわけで、現代の資本主義社会の状況に合わせていろいろ運動をやっているから運動とその狙いが矛盾するようなこともいろいろと起こって来ているわけである。

社会主義・共産主義は基本的に強大な権力集中が必要であり、そのためには国民統合≒国家主義≒ナショナリズムが不可欠であるわけだが、日本のような先進国では反政府的な気分>アナーキズムが左派の基本的な空気になりやすい。戦前のナショナリズムの強大化が「反省」されている日本などではなおさらであり、冷戦の終結後はさらにそれは強まっただろう。

そういう状況では個人的な自由、例えば「麻薬を吸う自由」を求めるアナーキスト的な個人が左派の組織の中に入り込みやすい。本来はそういう個人を排除するために党ないし運動の中央部から強力な統制力・指導力が行使されるわけで、またそれができる個人や集団が権力を握りやすい。フェミニズムの中でも現実的な女性の不便を主張するTERFはどちらかというとアナキスト的な自由主義であり、LGBTという少数者の権利はフェミニストであっても侵害できないという原理原則的なTRAの方が権力的・中央集権的な強さを発揮しているのもそういう状況だろう。

「福祉国家」というものは「国民統合」が成り立っていないと成り立たない、「同じ仲間だから」という意識があるからこそ再配分が成り立つのだ、という議論が新聞やネットなどに現れるようになり、これには全面的に賛成なのだが、これは「福祉国家」というものの起源がスウェーデンのような軍国主義国家にあるということからも明らかなわけで、国家主導的な軍国主義であるからこそ国家に尽くした人は大切にしなければならない、というのが福祉の原点なわけである。この辺り、国家に動員されるからこそ国民は国家によって大切にされるべきだという論理が成り立っているわけで、例えばフコク(富国)生命が徴兵保険から発展したことなどにも「兵役(を含む国民の義務)と福祉のバーター」の例としてあげられるわけである。

だから「現役層の負担」が明らかに大きい現在、負担をしない高齢者に手厚くすることで現役層がこうした政策にそっぽを向くようになったら福祉システムそのものの危機なわけで、そのためには給付よりも減税の方が負担軽減になるのは当然だろう。福祉国家を維持できるか、維持できないならどのように軟着陸させるのか、というのはかなり大きなグランドビジョンが必要で、今の政府にそれが可能なのかは難しいが、負担や不満が一箇所に集中しないようにするのは当然必要なことだと思う。

こうした「福祉国家の維持困難性」が出て来た一番大きな問題は少子高齢化ということになる。高齢化というのは医療技術と医療制度、それに食糧事情の劇的な向上が大きいから、逆に言えば政策の成功が別の問題を生んだ典型的な例ではある。


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