2.世界は理解しようとするはしから変わっていく(01/22 08:31)


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自分が関心があること、自分がいいと思うことなど、そのことについて追いかけようと思うのだが、自分が問題と思うことについてもやはり追いかけるわけだし、それ以前に毎日の生活や体調、まわりの人のことの方に気を取られてなかなかそこまで追いつけない感じだ。

自分が何が好きか、何に関心があるのか、何を追いかけたいのか、というのがはっきりしているのが自分がしっかりあるということで、自分が何をしたいのか、何が好きなのか、何に関心があるのかを見失ってしまう状態が「自分を見失った状態」というのだろうと思う。

自分が好きなこと、関心があることというのは消長があるから、それが山を越えてきたときに自分を見つめ直す時があるわけで、その時に「自分はなぜこのことに関心があるのか、こんなにこだわっているのか」というようなことを考えたり、「こんなことを考えても、あるいは追いかけても意味がないのではないか」というネガティブな思いに襲われたりするが、それはもっと大きなところ、深いところでの自分というものがはっきりしていない、大きく言えばアイデンティティがしっかりしていない、ということになるのだろうなと思う。

そのあたりのことについてよく考える(と言ってもようやく少し考える余裕ができないとむりなのだが)のだけど、たとえば身体と妄想と仕事、の三次元に分けて考えたりして見て、それはそれで何かわかることもありそうなのだが、その妄想の部分をどう追いかけ、どう切り分けたらいいのかがあまりはっきりしていなかったりした。

自分が一番根源的に思っているのは、「この世界を知りたい」ということであって、そのための手段をいろいろ探してきた感じがあるのだけど、それは例えば本を読んだり、いろいろなことを経験したりということもあり、大学や大学院に行ったりということもあった。学問という方法論も一つ世界を知るための方法だけど、やはりそれだけでは分からないなということもあって、ただぼーっと世界を観察したりするときもあった。

学問というのもいろいろ幅広いものがあるわけだから一つの方法論に拘泥しないで他の学問へ行くという手もあったし、そういうさまざまな学問の方法論を手につけて語っている人を見るとなるほどそういうやり方もあるよなあと思ったりもするが、学問には学問の限界がある、みたいなことはどうも子供のうちにある種の思想として叩き込まれてしまった部分があって、なかなか学問に全面的な信頼をおけないところが、一つ自分の弱点だなという気はする。

学問以外の手段として、アートというもの、特に演劇というものに触れて関わってきた経験というのも自分にとっては大きな財産だなとは思うのだが、いまそれを全面的にプッシュしているわけではないしそこからの世界を本当に見たいのかもわからない。

そうだな、「世界を知りたい」と思うのだけど、結局は人間は「自分という手段」を使って、「自分というナイフの切り口」によってしか世界を見ることはできない、ということもまたあるのだよなと思う。

アートという手段も使えるとよいのだけど、やはり知的な側面からの切り口が何か自分にあってるような気もするし、また否応なく取り組まなければならない生きるための仕事の側面からも世界は否応なく見えてくるわけで、その辺をどう統合していくのかみたいなところもある。

私が歴史を専攻したのは過去にさかのぼってすべてを理解したい、みたいな感じがあったからで、でも一人の人間が知ろうとするには世界は広すぎるし長すぎるしまたそういう物理的限界に加えて自分自身の性格的な限界みたいなのもあるし、なかなか難しいなと思いながら何十年も生きてきた。

そしてその間に世界そのものがどんどん変わってしまって、80年代までは冷戦構造を知ればだいたい世界を分かった気になっていたのが90年代、ゼロ年代と進むにつれ、過去の遺物のような気がしていた宗教や伝統みたいなものがより重要な価値で立ち上がってきて、またそれは世界だけでなく日本でもそうだし、何より自分自身の中でリベラルな価値観への疑問みたいなものが立ち上がってきて、そうなると今まで世界を知ろうとしてきて積み上げてきたものもすべて点検し直さないといけなくなるし、全然重視してこなかったさまざまな宗教的現象みたいなものを再解釈しなければならなくなるし、運動体もまたその位置づけをし直す必要が出てきて、またそういう伝統世界だけではなくテクノロジーの進歩によって世界の未来像みたいなものもまた見直す必要が出てきて、なるほど今書いていて分かってきたけれども、自分自身が一体どこに足場を持って世界を見ればいいのか、それ自体が分からなくなってきているのだなと思った。


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