1127.「丁寧に考える新型コロナ」を読んでいる。(11/16 17:39)


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なんだかんだ言っても、今年最大の問題は新型コロナ(Covid-19)の流行であることは間違いなく、それについて少しちゃんと勉強しないといけないということは思っていたのだが、ネットの情報だけでは限界があるので、一度腰を落ち着けてじっくりと本を読んでみようと思い、岩田健太郎「丁寧に考える新型コロナ」(光文社新書、2020)を買った。

岩田 健太郎
光文社
2020-10-23

 

岩田さん自身、その行動から毀誉褒貶のある人であることは分かっているのだが、感染症に関する臨床の専門家として様々な局面で活躍されてきたことは事実だし、それ故に、というか「信じて突き進む個性」ゆえに軋轢も多く生じている訳だが、最終的にはいろいろな人の言説を読んだ方がベターなことは分かっているので、まずは岩田さんの本を読んでみることにした。というか、私はこのコロナ禍の前から彼の本は読んでいる(あまりちゃんと覚えてはいないが)ので、まずは彼の本から、と思ったのだった。

この本は彼の問題意識に沿って「はじめに」で概論が述べられ、ファイル1で国ごとに感染の違いが出た理由について述べられ、ファイル2で検査について述べられている。ファイル3ではマスクについて、ファイル4では緊急事態宣言について、ファイル5ではプールや温泉の問題と「専門家」の問題、ファイル6が音楽会などでの問題、ファイル7が治療の問題ときて、巻末に岩田さんと西浦博さんの対談が100ページほど、という構成になっている。

私は現在のところファイル2まで読んだが、対談を除けばここまでで174/278、大体2/3近く読んだので、ここまででかなり岩田さんの言いたいことは書かれていると判断し、ここまでのところで一度読んだ内容をまとめ、考えたことなどを書いておきたいと思う。

「はじめに」で彼が指摘していることは、「わかりやすく説明するというのは短く一言で断言することではない」ということで、小泉元首相のワンワードポリティクス以来テレビでは顕著になった「一言で断言する」という報道の仕方がこの複雑な疾病の理解の障害になっている、ということだ。これは当たり前といえば当たり前のことなのだが、つまり彼が「丁寧に考える」本を書かなければと思った動機ということなので、特にそこを強調しているということだ。政治家もそうだし国民もそうだけど、難しい問題になっても「つまりそれはどういうことなの。一言で言うと」と聞きたくなりがちなのは確かで、テレビや報道はその要求に応えようと不正確であっても短く表現する嫌いは確かにあると思う。

またここで書かれているのは官僚的な仕事のやり方の問題点、医学的な正しさ、実務的な効率よりも役人の「仕事をやった感」が優先される問題などが述べられていて、これは医学者であり臨床実務の人からの問題提起であると捉えるべきだと思った。

ファイル1での主張は「日本が比較的感染を押さえ込んでいる」のはなぜかと言う理由の考察で、日本人の生活習慣とか人種の遺伝的特性とかウィルスの変異とかBCGの有無とか様々な今まで言われてきたことを検討し、それらは特に現時点で明らかに根拠になりうるものではないとして、結局のところ東アジアでは感染の発生から割と早期に、つまり感染の少ないうちに問題化し、対策が打たれてきたから抑えこめているのであって、欧米や南米などは気がついた時にはすでに大流行になっていて手遅れになってしまったからだ、と主張している。

また、日本で重症化が起きにくい理由としては、血栓の発生のしやすさに人種間の差があると言う指摘をしていて、確かに血栓が発生すればそれだけ大変なことが起こりやすい訳だから、そこは大きいなと思った。

ただここでも第一波を経験しながら十分に第二波に備えられなかったことについては「国の備え」に問題があったと指摘していて、GOTOなど医学的に見れば時宜を得ない政策が行われたことも問題があったとしている。


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