<画像> | 異界を旅する能 ワキという存在 (ちくま文庫) |
安田登 | |
筑摩書房 |
『異界を旅する能』。これは「諸国一見の僧」としての能のワキのあり方を通して能を見、人の生き方を見るという本だが、私が読んで思ったのは、私が子どもの頃なりたかったもの、憧れていたのは「旅人」なんだなということだった。憧れていたというか、今でも本質的にはそういうところがあるんだなと思うが、ひとところにじっとして考えているよりも、歩き回って外界に触れ、そこでいろいろなものを見出して自分の中を新たにしていく、歩き回っていないときも自分の心の中を訪れながら様々な怪異に出会ったりお話に出会ったりする、そういう生き方を基本的に今までして来たし、これからもするんだろうなと思ったのだった。いろいろなことを考えながら自分という人間を理解し、把握しようとしてきたのだけど、だいぶいろいろわかってきたなあと思う。やはりそういうことが分からないと、ものを書くときもスタンスがあいまいになって、迫力とかパンチに欠けるということが出ていたんじゃないかと思う。書くものにそういう理解が反映するように、書いていきたいと思う。