【山岸凉子『言霊』】
<画像> | 言霊 |
山岸凉子 | |
講談社 |
山岸凉子はバレエマンガかでなければ怪奇系の作品というのが多いと本人が書いているのだけど、先日買った『言霊』(講談社、2013)はその両方が収録された作品集。メインの表題作は本番に弱いダンサーがポジティブな言葉の重要性に気づき、その壁を乗り越えていくという話。こういう要素は『テレプシコーラ』でもときどき触れられていたが、この作品ではその一つのテーマに絞られているのでわかりやすいし、また壮大なシンデレラストーリー的なものでなく愛を獲得し国内のバレエ団への入団が図れるというくらいのつつましやかな夢の実現(それでも相当大変だが、団員の生活は相当大変)であるところがよりリアルであるとは言える。後半は怪談に行きそうで行かない話がいくつかエッセイ的に取り上げられているのだが、『ケセランパサラン』で建てた(おそらく)家が怪異話を拒否しているというある意味怪異現象が起こって描けなくなったんだ、という話が面白かった。今後はバレエものだけに行くのか、それともまた新境地を開拓するのだろうか。