252.マンガ雑感、文芸雑感/「緑の中を走り抜けてく」真っ赤なポルシェとはいかないが(05/15 16:33)


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木曜日。父のかかっている松本市の病院まで両親を乗せていく。窓の外は新緑。中信高原の山麓を走る道は信号もなく、気持ちいい。水曜日は奈良井川に沿ったニセアカシアの木立の中の道を走り向けて、ぞくぞくした。「緑の中を走り抜けてく」真っ赤なポルシェ、とはいかなかったが、シルバーのヴィッツで。ああいう道を走っていると、真っ赤なポルシェに乗りたいな、という気持ちは出てくるな。

水曜日に買った『スーパージャンプ』。印象に残ったのは克・亜樹「毒×恋」と小谷憲一「Desire」。「毒×恋」は、今までの作品は女性の側が男の側に毒をかける(?)パターンだったのだけど、今回は男の側が女性に毒をかけるパターン。年上の女性に近づいた22歳の男が、女性の結婚歴、年齢、子供の存在を知り…ということなのだが。最後まで読むと、まあなるほどなあと言うところもあるのだが、やはり展開が上手なんだな。ありがち感を感じさせず、また適度の背徳感ももたせ、でもきちんとしたストーリーの中に納めるフィクション感の中にその背徳感をうまく封じ込めている、のではないかと思う。こういうのがプロの技、という感じだな。同じ素材でもアマチュアがやったら手のつけられない下品さになることは必定だ。小谷憲一「Desire」も、定番のパターンなのだが、結局女性の肉体の描写の上手さと年上の恋人、ルームシェアという現代性の小道具を使うことで一編に仕上げている。これもステロタイプだからこそ技能を傾注して作品化するプロの技だな。たいしたものだと思う。そのほかのストーリー性の強い作品群は、今号はなんだかあまり関心しなかった。なぜだろう。

木曜日に買った『モーニング』。東村アキコ「ひまわりっ」巻頭カラー。相変わらずぶっ飛ばし方がすごいな。ウィング関先生(これ「関羽」のもじりなんだよな。三国志オタク女なので)のとばし方もすごいが、それより節子というキャラクターの強力さが今週は感心した。古い巻から読むとそのへんのところも分るんだろうけど、まだそこまでは盛り上ってない。今号、歯ブラシの活躍もよし。「シマシマ」も悪くないな。「エンゼルバンク」。次号を楽しみにさせるのが上手いが、もう少し絵が上手だといいなあいつも思うけどこの人。「N'sあおい」。記者会見中に急患が…やっぱりこういうの格好いいなあ。それこそ生命尊重・人道主義というステロタイプなんだけど、感動する。

「ラキア」。今までこのマンガ、ワケがわからなくてあんまりちゃんと読んでなかったのだけど、キリストと反キリスト、神と悪魔が現代に生きていたら、ということなんだということがようやく分ってきた。ちょっと興味が出てきたかな。今週いちばんよかったのは「ピアノの森」。アダムスキと雨宮の会話、これを書くのにお詫び広告を出すほど制作が手間取ったと言うのは十分納得できる。アダムスキの、ピアノ教師であるラハエルとの関わり。雨宮の努力と個性。落選したアダムスキが決選に残った雨宮を慰め、励ますという展開、こういう複雑な心の動きを本当に丁寧に作者は書こうとしたのだと思う。会場を去るアダムスキのところに、出口で待っていたラハエルが現れるところはやはり泣ける。この感動はプロのわざと言うよりも、作品製作者としての、誠実な心理の追究の結果だ。一つの作品が、「作品」になるためにはいろいろな方法がある。ということを実感した週。「へうげもの」は、自ら歪んだ作品を生み出す、古田織部の新しい展開。織部が「織部」になりつつある展開。楽しみ。

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木曜日は、両親を乗せて松本市の病院へ。二日続けて松本まで運転したせいか、ちょっと疲れた。でも緑の中を走り抜けていくのは気持ちいい。「♪緑の中を走り抜けてく」真っ赤なポルシェ、といかないのは残念だが。奈良井川沿いの道のニセアカシアの並木の緑もきれいだし、中信高原の山腹から見下ろした松本盆地と北アルプスの緑もきれいだった。

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