19.俳句の詠み方と小説の書き方/藤野可織『爪と目』を読んだ(09/20 17:48)


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まあそういう意味で言えば、俳句というものは発想と技術が必要なわけだ。まあ当たり前なんだけど。だから母の句を見てこれはこうした方がいいんじゃないかとまあ私がポエジーを感じやすいようにアレンジして見せたりはするのだけど、それが良い方向に行っているとは限らない。まあでも参考くらいにはなるだろうと思って言っている。最近はけっこう母も人の作った句を読んでいるらしく、一向に上手くならないと落ち込んでたりするのだが、まあそんな簡単に上手くなるものではないし読んで作って批評される、というのを繰り返すしかないし、まあ技術とかもそろそろ勉強してみてもいいんじゃないかとも思う。「定石を学んで囲碁が弱くなり」ということもあるけど、一定以上うまくなろうとするならやはり定石は必要だろうと思うし。

まあそんなことを考えていたら、それはそのまま自分の小説のことにも帰って来るんだと思った。

私は詩というものがポエジー、それは出会いだから結局はあるベクトルのようなものだと思うのだけど、そういう言い方で言えば小説というのはそのベクトルがいくつか集まってある平面を作っているようなものだと思った。いわゆる文学はそういうある種の平面で、それに「面白さ」という三次元が加わるとエンタテイメントになる、という感じ。まあ「面白さ」に関してはこういう面白さは面白くない、みたいなところが私には強くあるのでなかなかエンタテイメントでいいと思うのはないのだけど、マンガならそれなりの広さが守備範囲にはあると思う。しかし世の中で大変売れているマンガみたいなものの中で進んで読もうと思うものはやはりあんまりはない。ただ、特に『進撃の巨人』は『このマンガが凄い!2011年版』というもろに売れ線を集めた本で読んで買ってみたわけだから売れているものの中に侮れないものがあることは最近は十分わかってはいる。わかってはいるが、なかなかだから読みたいとは思えないものだ。

まあ、マンガは趣味だからそれでもいいのだし、だからこそ自分の好きなものを追い求めて行けるというところがあるのだが、小説というものは私は基本的にそんなに面白いと思っていない。でもやはりフィクションやファンタジーというものに慣れ親しんでいるところはあるから、面白いものに出会いたいとは思う。そして、あまり面白いものがないにしても、やはり一番自分にとって取り組むべきジャンルは小説だとなぜかどうも思ってしまっているので、曲がりなりにも自分が面白いと思える小説を書いてきた。

私が面白いと思うのはもちろん内容だから、その内容が良ければパッケージはどうでもいい、という感じがあったのだけど、俳句のことを考えていたらそういうわけにはいかないなと思った。私は逆に言えば小説がそんなに好きではないから、内容にしかこだわらないのだけど、小説が好きで読んでいる人には小説というものの定石というか公式というかこういう面白みがあるはずという追求の仕方というか、そういうものがあるので、そういうものにあまり無頓着な作品はなかなか受け入れられない、というか読む気にもならないんだなと思った。

詩がある種のカットみたいなものだとしたら、小説は大画面の絵画みたいなものだろう。構図がきちんとしているとか、タッチが魅力的だとか、色彩の感覚を味わうとか、絵画に見たいところはたくさんあるわけだけど、小説が好きな人は小説におけるそういうものを無意識にそういうものを求めているのだろう。

私が小説で面白いと思うのは描写の面白さ、文体、話の運び方、思いがけない展開、テーマ、取り上げられている題材みたいなものだけど、まあ私も俳句ならそう考えるけど、破綻の無さみたいなものを重視する人が多いなと思うし、それはある意味まじめな日本の読者の特徴かもしれないと思う。私はまあ破綻してる方が面白いというか、面白く破綻させてほしいというところもあるんだけど、まあ自分の未熟な技術でそれをやると意図的な破綻というよりもただ下手なだけになってしまうので、なかなかそうもいかない。

ただ、今日考えていて思ったのは、私にとって作品とか表現というのが大事過ぎるということをちょっと考えた方がいいということだった。大事過ぎる作品や表現は、逆になかなか人眼に晒すことが出来ない。いま、少し前に書いた作品をどんどん人に見せたいと思っているのは、ある程度自分から距離が置けるようになったからということが大きい。

しかし、考えたのは、むしろ最初から自分から距離を置ける作品をもっとたくさん書いた方がいい、ということだった。自分にとって大事なテーマとか、大事な内容を書こうとするといろいろなものを抱え込みすぎてしまってうまく身動きが取れなくなるし、せっかく書けても理解してくれなそうな人には読んでもらいたくないとか、余計なことを考えてしまう。読まれてナンボだというのに。

だからむしろ、書きたいことを書くのは売れてからでいい、と割り切って、もっと気楽に書けるテーマにチャレンジしてなるべくたくさん書いて行くようにした方がいいのだと思った。


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