10.コミュ力重視思想(コミュニケーション・マッチョイズム)と「38℃の話」の楽しみかた(01/30 10:25)


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それはウェブ上でのコミュニケーションも同様だなと思う。私が長い間どうしてこの人はこんな熱の低いことを書き続けているのにものすごいアクセス数を稼いでいるんだろうと思っていたサイトがあるのだけど、最近ようやく分かったのは、その人は上で言う意味の38℃の人であって、そしてその話のしかたがとても上手い、というか考えられていて、きちんと読む方に伝わるように書いているということなのだ。私は内容をぱっと見てすぐにあまり面白くないと思ってしまうのだけど、面白いと思えない内容なのについ最後まで読んでしまう、ということがよくあった。つまり、上手いのだ。38℃の話をするのが。

最近だんだんその面白さが分かってきた感じがする。そしてそうかなと思ったのは、「いわゆる文学」の面白さというのもそういうようなものなのかも知れないということなのだ。「いわゆる文学」というのは日本的な私小説的な文学ということだ。

誰か劇作家が以前、そういう文学のことを「自分の貧しさを縁側で虫干ししながら売り物にしている」というような意味のことを言っていた気がするが、まあそこまでいかないにしても、ある意味言葉があまり巧みに出てこない人の方が、むしろ日本の文学では主流なのではないかという気がする。言葉が巧みに出てこないからこそ、言葉にこだわるのだろう。

話は戻るが、マツコは有吉に説得されて、テレビに出演するようになった頃、芸人と話をしていて感じた嫌な気持ちを思い出してきた、と言ってキレていたが、あれもすごくよく分かる。何で私が面白い話をしてあげようとしているのに、その考えを認めてくれないのよ、と思うんだよな。私もそう感じることは昔からよくあったのでその気持ちはすごくよくわかった。

逆に言えば芸人というのは、本来コミュニケーションが苦手な、コンプレックスを持っているような人が多いのだろうと思う。それをなんとかしようとして、人を笑わせたりこっちのペースに巻き込んだりする技を身につけて生き残ってきた多いから、むしろ言葉になりにくいことを言葉にしようとする人に対しては応援しようと思えるが、「上の話」をしようとする人には「そうじゃねえんだよ」と言うんだろうなあと思う。

芸人の面白さと言うのはそういう「自分に何ができないか」と言うことからスタートして、何かを獲得していくことができた、と言うストーリーの面白さを背負っていることから出ているのだと思う。と言うことはつまりある意味強いコンプレックスを持ち続けてそれが原動力になっていると言うことであり、人によってはそこに卑屈さを感じさせて、見え隠れする卑屈さに嫌気がさしたりしてしまう人もいる。

私がいわゆる「お笑い」をあまり好きでないのも、そういう部分なんだろうと思う。「人の苦労には強く共感できるけど、苦労を知らないと感じさせる人にはガツンと言ってやりたい」と言うタイプが、私はあまり好きではない。やはりそれはそれで一方的だと思うからだ。

私もむしろ、そういう人と成長過程で接してきた期間が長かったから、そういう話は「わけが分からないよ」と思いながら相手の方が立場が上だし、と思って黙ってきたようなところがあって、マツコが感じたその疎外感と言うのはよくわかるわけだ。

大学時代はそういう上へ上へと話を持っていくタイプの人が多くて、そういう意味ではすごく楽しかった。社会に出るとまたそういうわけにもいかなくなったわけだけど。

まあそんな風に考えていくと、「40℃の人」と「38℃の人」と言う立場の対立みたいなものが見えてくるわけだけど、ちょっと分かりやすく極端化して言えば、40℃の人と言うのは「すごい話題をした人が勝ち」という「話題マッチョイズム」だと言うことができるし、まあ私にもそういうところはある。逆に言えば「38℃の話」をなかなかおもしろがることができない、不自由な人だと言うこともできるわけだけど。

ただ、40℃の人だって、本当は38℃の話をしたいのだと思う。しかし、「負けたくない」からなかなかそういう話ができないのだ。私の場合はいつかの時期に(ああ、モーニングページを書き始めたときだな)それが破裂して、ブログにも日常的な、38℃的なことをだらだらと書き続けるようになったのは、自分の中でこういう話を書かないと死んでしまう、というかおかしくなってしまうと言う強い気持ちに襲われて、自分の中身に強制されて無理矢理書くようになった、と言うところがあるのだ。だから、ええい、読んでくれてもくれなくてもいいからとにかく書くぞ、でもアクセスはしてくれ、みたいな40℃的な高飛車な態度がのこっている中で書いていたので、まあ読んでもあまり面白くないだろうなとは思う。ただある意味本当にそういう熱の低いことを書く事自体がある種の生命線になっているので、なかなかやめられないと言うところもあるわけだ。


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