>本探し.netTOP >本を読む生活TOP >著者名索引 >カテゴリ別索引 >読書案内(ブログ)
谷川浩司『集中力』
集中力角川書店このアイテムの詳細を見る 私はわりあい将棋の棋士の書いた本が好きで、米長邦雄や羽生善治の書いた本も何冊かある。芸談もの、という意味では歌舞伎の役者の書いた本と似た意味で面白いと思う点もあるのだが、将棋というのは明確に勝ち負けの決まる世界、それも個人対個人の勝負の世界であるという点でほかと違った面白さがあるのだと思う。
面白いと思ったのは、これは谷川は羽生にも共通することだといっているが、彼らは自分が不利な局面では局面が複雑になりそうな手を差し、自分が有利な局面では単純な手を差す、という話である。単純な手、というのはつまりいわゆるひとつの勝利の方程式、というやつだろうか。自分が不利になったら敢えて局面を混沌とさせて死中に活を求め、自分が有利であれば着実に勝ちを握れる手を選ぶということだろう。
もちろんただ局面を混乱させるだけなら誰にだってできるが、彼らのすごいところはそこで相手のミスを誘い、読みきれなくさせているうちに自分に有利な着手を相手より早く見つけ出すということだろう。また有利な局面では相手の揺さぶりにも動ぜず、自分の手を差しきるということだろう。このへんのところは単純なようでいて実はかなり強い精神力を必要とすることだと思う。もちろん将棋の技量がなかったら話にならないが、それが互角なもの同士の勝負は精神力によるものがかなり大きいということだと思った。
自分のように一人であれこれやることが中心でも、道筋が付いたと思ったら一気呵成にやり遂げることが重要なのだろう。どうしてもあれもある、これもある、ということで寄り道をしているうちに気力が萎えてくるということが多い。難しい局面では手をなるべく広く考えて可能性を探ることが大事なのだろう。またこれも寄り道にそれるともとに戻って来れなくなるが。
…こう書いてみると、我ながらどうにも気まぐれでしかたがないやつである。集中力のあるときとないときが極端すぎる。もう少し集中力のコントロールができるようにならないとだめだな。(2001.5.16.)