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永野良佑『プロが絶対買わない金融商品』

プロが絶対買わない金融商品-あなたは「カモ」られている-

扶桑社

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午後から丸善に行って本を物色して永野良佑『プロが絶対買わない金融商品』(扶桑社、2006)を買う。Blue Bleuetで好きな色のマフラーがあったので買った。

『プロが絶対買わない金融商品』は読みかけだが、いろいろと面白い。プロの反対は、つまり「個人」で、個人が割に合わない金融商品をいろいろつかまされている、という話だ。たとえば基本的に「毎月分配型」とか「毎月利払い型」という形のものは年金の連想でかなり売れ行きの良い商品になっているそうだが、税制上も投資効率上も本質的にあまり得でないものであるらしい。やはりこういうことは誰かに聞かないと分からないことなのだが、なぜそうなるのかということに関していえば、つまりは「現金信仰」を利用しているということになる。

やはり私などでもそうだけど、証券というものは恐い感じがする。というのは、よく理解できていないということもあるけれども、つまりはなんとなく自然に反した人工的な、何に根拠があるのかよく分からないものだということがあるのだろうと思う。考えてみれば現金だって紙切れで、戦後には「新円切り替え」で事実上紙切れになったことだってあるのだし、あんまりこだわっても仕方がないと考えられなくもないが、やはり日常性に依拠して「現金なら大丈夫」という感覚が広く行き渡っているのは確かだろう。銀行さえ「信用できない」と、タンスに置いている人だってたくさんいるわけだから、ましてや金融商品などいくら得だといわれてもそんなわけの分からないものは結構、と思う人がたくさんいるのは当然だと思う。

つまり毎月配分型、という形式は、「得はしたいが現金を見ないと安心できない」という心理をうまく利用したものだということになる。毎月必ず現金をもらえる、ということの安心感は何物にも変えがたく、また現金をもらえることによって投資信託等の最終的な成績への期待も高まるし、また多少振るわなくても「まあ毎月配分があったし」ということで納得できるということになる。しかし現実は…というのは、まあこの本を読んでいただいてということになるのだろうか。

日本人の間で強いのは「現金信仰」のほかには「高金利信仰」だろう。「高金利」への思いは信仰というよりむしろ「渇望」、メシアを求める感覚に近いような気もする。私も多少の金融商品を保有しているので、証券会社からときどき案内が送られてくるが、「南アフリカランド債8.6%」というような日本では考えられないような金利がつくものがある。まあ何というか、南アフリカの政情を考えればちょっと私などはそういうものに投資する気にはならないのだが、金利で惹かれる人も多いだろう。実際、アルゼンチンのようにデフォルト(債務不履行宣言)をかますということはそうはないからリスクはバンジージャンプ並みなのかもしれないが、もちろん綱が切れる危険はゼロではない。

だから高金利ということはそれだけリスクがあるということで、それをきちんと踏まえずにそういうものを購入している人が多い、あるいはきちんとした説明がどれだけされているかということに危惧がある、ということを著者は言っているわけだが、私は読んでいるうちにむしろ、多くの日本人のいじましいほどの高金利への願望の方が何だか切ない気持ちがしてきてしまった。

健全な金利がどれくらいなのかということは私は金融の専門家ではないしよくわからないが、やはり5%から10%くらいではないかと思う。好景気で10%、不景気で5%というのが普通なのではないかと私は思うのだがどんなものか。現在のような極端な低金利はやはり異常だし、それでもって経済がこれだけ振るわないというのはむしろ産業構造に問題があると考えた方がいいのだろうと思う。だから人々は「あるはずの5%」を求めて荒野を彷徨っているイスラエル人というか、そこに「いい話があるんですよ」という人が来たら結構いちころかもしれないなという気はする。

何というか本当は、金利生活者が一定以上いるような国だったらこの金利は絶対になしえないような数値なんだろうと思うが、やはり日本は産業優先の国だからこういうことが可能なんだろう。そう考えてみると19世紀末のイギリスのような産業立国であり金利生活者も多い国あるいは時代の、そして大不況の時代の金利がどのくらいだったのかということは興味があるが、どうだったのかな。(経済史の文献を紐解けばすぐわかることなんだろうか)

なんてことを考えたり、また、高度成長を支えたのが欧米並みに追いつくための設備投資だった、ということを考えるとITへの設備投資が今の景気を支えるということはないんだろうかと考えたり(それがITバブルだったのかな)、何だか経済の現状のことも興味が湧くというか知らないことが多いなと改めて思ったりする。

産業構造に問題がある、ということを考えるとすると、つまり産業時代から情報時代に移りつつあるといわれる(本当にそうなのかもあまりぴんと来てなかったりするんだが)昨今、まあその言説が本当なら「価値」なり「利益」を産むのは産業ではなく情報だ、ということになろう。その中で「やはり日本はものつくり」、ということがどういうことを意味するのか。日本の「もの」の中にだけある隠された「情報」というか「付加価値」みたいなものを求めていく、というだけではちょっと間に合わないんだろうし、国を挙げて情報の産業化を推し進めていている、というわけでもないし、何だかきっと私だけでなくみんなぴんと来てないんだろうなとは思う。

つまり、「情報がいかにして価値を生み出すか」ということがまだ体系的に理解されてない、その全体像が分からないだけでなく、新しい価値をいかにして掘り出すかということもまだまだ研究不足というか、十分なスタートラインにもたっていないということなのではないかという気がする。それはやはり日本が産業時代に過適応した国家、民族性だということになるかもしれない。

しかしそうなると特定の環境に過適応したがゆえに滅亡した恐竜などと同じことになってしまうから、それは困る。日本人のよさや特性をいかしつつ、新しい時代にいかに適応していくのか、その文化面からの戦略を練る必要があるのではないかという気がする。

韓国や中国の躍進は、実際にはそういうところにあるのかもしれない。製造業の地位の低い士大夫文化の国である彼らは、むしろ「情報」こそが男子一生の仕事であるという認識が日本よりはるかに強い、と『東アジアイデオロギーを超えて』だったか何かに書いてあった。『知財革命』こそ自分たちの時代だという強い認識を彼らはもっているように思う。一見製造業が発展しているように見えるが、実際にはもっと超えたところのものを彼らは追求しているのだろうと思う。

ただ、そういう場合でも日本が対応できることはいくらでもあるはずで、現場からの知見のボトムアップとか、他国人が見過ごすような繊細な部分への対応などといった点で、ある意味日本人の独壇場というようなところはたくさんあると思う。それがイタリアのデザイン産業などと同じように一国一億人を支えるような産業になるかというと苦しいが、全体的なバランスを取りつつそういう部分を伸ばしていくことは絶対に必要だと思う。

っと、話がずれたが、つまり個人向けの金融商品というのは経済合理性というよりも、日本人一人一人の経済の現況に対する無意識の不満とか不安というものをうまく汲み上げて商品化しているものだということになるのだと思う。そういう意味でもっと合理的に考えろ、ということを著者は言っているわけだしもちろんそれはそれで正しいのだが、そこから見えてくる日本人の心性の現状というようなものから、国をただして行くべき進路のようなものが見えてくるのではないかと思ったのだった。

蛇足だが、この著者はFX(外国為替証拠金取引)を割りと勧めているのだが、最近FXについてはだいぶ関心が高まっているなあということを感じる。これについてはあまり理屈や方法が分かっていないところもあるので、また何か読んでみようと思っている。『プロが絶対買わない金融商品』もまだ読みかけなのだが。(2007.1.29.)

特急の車中でまず永野良佑『プロが絶対買わない金融商品』を読む。何というか題名は『買ってはいけない』みたいな金融商品を全否定するような感じだが、実際にはさまざまな金融商品に使われている技術をわかりやすく説明してあるところがメインという感じで、とても勉強になった。サムライ債、ボラティリティ、高金利商品を作るための仕組み、コール・オプション、プット・オプション、スワップなど。特にそういうことだったのかと目から鱗が落ちたのがレバレッジの仕組み。レバレッジ10倍ということは投資資金の9割が借金ということなのだということをはっきり書いている本(初心者向けばかり読んでいるからなのだろうけど)は初めてだと思う。そう納得してみればリスクがどういうことなのか、その所在とか大きさとかがはっきりするから、自分の背負えるリスクの範囲内で投資するということにもっと積極的になれると思うのだが。もっと積極的に情報を公開することによって投資についてのインテリジェンスを高めた方が国民的な投資マインドも積極的になるし、それは産業全体についてもプラスになるのではないかと思う。読了。(2007.1.31.)

[関連事項]

投資信託(Wikipedia)

毎月分配型投信のメリット・デメリット(All about Japan)

外国債券(All about Japan)

外貨預金(All about Japan)

ボラティリティ(Wikipedia)

かなり専門的な説明。簡単に言えば価格変動の大きさのことで、大きいほどリスクもリターンも大きいということ。

裁定取引(Wikipedia)

レバレッジ(Wikipedia)

梃子の原理などという。証拠金取引などで使われる用語で、総額のごく一部の証拠金で(つまり残りは借り入れということになる)大きな取引ができるため、自己資本(証拠金)に対しての利益率を大幅に上げることができる。損失が出た場合も同様に大きくなるため、追加証拠金(追証)が必要になったり強制手仕舞いなどにより損失の拡大防止が図られる場合もある。

オプション取引(Wikipedia)

外国為替証拠金取引 FX(Wikipedia)

デリバティブ(Wikipedia)

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