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デュラス『モデラート・カンタービレ』
モデラート・カンタービレ河出書房新社このアイテムの詳細を見る その後丸善の文庫本のところへ。デュラス『愛人(ラマン)』は持っていてもいいなと思い、手に取る。隣の『モデラート・カンタービレ』(河出文庫、1985)を手に取ると、ひきつけられた。結局二冊買う。買ったとき、「5l」(ファイブエル、ライフエンタテイメント)という雑誌がただでついてきたが、荒木経惟の特集だった。前号は矢沢永吉だったな。ただ雑誌が大流行だが、これが一番上等ではないかという気がする。(7.2.)
昨日帰郷。特急の中では結構寝ていたが、マルグリット・デュラス『モデラート・カンタービレ』(河出文庫、1985)は読了した。読み終わって遅ればせながらようやく構造を理解したが、なるほどフランス小説というか、ストレートなようでいて手の込んでいる構造は面白いなと思う。晩餐会の描写はなんとなく『コックと泥棒、その妻と愛人』を思い出した。passionという言葉が「熱情」と「キリストの受難」の両方を表すという言語的な構造が、「熱情」に宗教的な、あるいは哲学的な深みを持たせている。「熱情」に対する受け取り方の日本とフランスの違いのようなものをテーマにして論じてみるといろいろと面白いだろうとは思う。「熱情」は原罪でもあり犠牲でもある。そういう意味で宿命的なものと受けとめられていると考えていいだろう。日本では多分それは克服すべきもののようにとらえられているだろうが、理趣経など密教系ではどのような解釈になるか。否定すべきか、肯定すべきか、宿命として受け入れるべきか、克服の対象とするべきか、まあ人間が人間として生きている以上、避けることの出来ないテーマであろうし、それがキリストという「神の受難」に結びついているところがキリスト教という宗教の性格を強く規定しているといっていいのだろうと思う。(7.5.)