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花輪和一『コロポックル』

コロポックル―完全版

講談社

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花輪和一『コロポックル 完全版』(講談社)も買う。こちらはまだほとんど読んでいないが、なんというか見事に花輪ワールドである。(2005.3.13.)

花輪和一『コロポックル』を読了。花輪という人は北海道出身かと思っていたがそうではなかった。

花輪の作品は、ものすごく毒に溢れたものとものすごく無垢なのにものすごい緊張感に溢れたものとがあるのだが(なんつー下手な文章)、この作品は完全に後者。心の底の奥の方に隠し持っているものすごい無垢なものを振り絞って描いていて、時にそれが破綻しつつきしみの阿鼻叫喚を聞きながら異世界に連れて行く、その展開が天才的である。ひとつの画面に蒸気機関車のC62重連急行ニセコ、アフリカ象の行列、十一面観音菩薩、セミさん、ブロントサウルス、納豆、武田騎馬軍団、コイさん、ティラノサウルス、合掌造りと並んでいて、これが作者の世界だと言い切れるのは花輪だけだろう。つまり彼は、こういう力強いものが好きなのだ。それだけは絶対確かだ。力んでどうする。

解説を福山知佐子という人が書いているが、この人は花輪と『たった8秒のこの世に、花を』というドキュメンタリー映画に出ているそうで、ずいぶん近いところにいる人らしい。「膠を媒体とし、銀箔の腐食を基底面として、枯れて朽ちていく植物の運動と時間を描く」芸術家らしいが、『コロポックル』の古生代の植物を描いたりしているらしい。花輪という人は徹底的に孤独な人だと思うし、絶対に彼の孤独を誰も理解できないのだが、彼を愛し彼の作品を愛する人には恵まれている、と思う。多分芸術家としてあるいは人間として、それ以上の幸せはないのだろうと思う。徹底的に不幸で、この上なく幸福な人。彼の魂が、地獄から天界のどこにあるのか、全然想像もつかない。生きながら六道を輪廻しているとしかいいようがない。(2005.3.14.)

  

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