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小山薫堂『考えないヒント』

考えないヒント―アイデアはこうして生まれる

幻冬舎

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小山薫堂『考えないヒント』はすごく面白かった。読んでいて思ったのは、この著者の傾向というのは非常に私に似ているということだった。いつも「何か面白いこと」を探し、それを見つけて形にしていく。レストランなどに行ってメニューを見ても「こんな風に書けばもっといい」とか「こういうメニューはぼくなら入れない」とか頭の中で「勝手にテコ入れ」しているというくだりには笑った。「勝手にテコ入れ」というのは面白い言葉だが、実は私もいつでもそんなことばかり考えている。それを「勝手にテコ入れ」と名づけるところがセンスなんだなと思う。

サービスに感動するくだりで、書き物をするときに旅館の部屋に机を入れてくれるように頼んだら、畳が痛まないように絨毯が敷かれていて、電気スタンドと広辞苑が机上にあったのだという。このエピソードには私も感動してしまった。「それがサービスだよな」と独り言を言ってページをめくったら「うわ、これだな。サービスってこういうことだよな。」と思った、と書いてあってうひゃあと思ったが。

また著者は笠智衆に書いてもらった字を名刺に使っているのだという。これも微妙に優れたアイデアだなと感心した。笠智衆は今となっては知る人ぞ知る名優だが、書家に書いてもらうのでなくそういう人に書いてもらうというのがアイディアだ。確かに上手い字だが癖もある。書家に書いてもらった字なら上手いですね、で話は終わりだが、笠智衆に書いてもらった、となるとそこから話が展開していく可能性がある。面白いことを考えるものだと思う。

ものごとを勝手によい方向に考えるという考え方も、私もやることが多いので非常に共感した。悪いことがあっても、これはもっと悪いことが起こらないように神様がしてくれたのだ、とか。全部良い方に考えればなんだか自分は世界で一番幸せなんじゃないかと思えてくるわけだ。私もそういう考えをする方なのだが、結構周りから顰蹙を買うこともあるし他にそういう人がいないのでそういうことをやめていたのだが、この本を読んで大いに力を得た。自分と似たような人がその個性そのままで上手く成功しているというのはとても励みになる。今までけっこう自分の個性をいかに曲げるかということばかり考えてきて苦闘していた面があるから、この本にはほんとうに救われた思いがする。

アイデアに困ったときに水の中にもぐり、神さまになった気持ちで「今おまえには二つの選択肢がある。このまま苦しんで死ぬか、あるいはいいアイデアを思いつくか。さあどっちがいい」「うー、いいアイデアを思いつく方です。だから、お助けください」と会話する、というくだりにはあまりのゆるさ爆発に笑ってしまった。下手をすると私もこういうことをやりかねないのだが、さすがに今まで字にしたことはなかった。この人は偉いなあと思う。

そのほか非常に、頭ではなく感覚的に「わかるわかるわかる!」ということが実に多い。「考えないヒント」というより、私にとっては「自分らしく生きるヒント」が満ち満ちた本だった。読了。(2006.12.27.)

  

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