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安野モヨコ『カメレオン・アーミー』

カメレオン・アーミー

祥伝社

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『カメレオン・アーミー』は短編集。昨日は安野を内田春菊と比べたが、これを読むと岡崎京子と比べたくなった。岡崎が80年代、つまり私などの20代のころの若者を描いているとしたら、安野は90年代から21世紀の若者を描いていると言う事なのだと思う。登場人物のある種の戯画化は安野のほうがずっと進行していて、しかしステロタイプに堕しているわけでないそこの微妙な危なさが安野の魅力なのかなと思う。絵のパワーとかもあるが、たとえば「おしゃれ」に対する噴出するマグマのような人間の力ではどうしようもない圧倒的な暗い情熱のようなものを安野は持っていて、それは岡崎にはない、という気がする。かといって岡崎もおそらくはこだわりとか屈託だらけの人間であることは確かで、もうそれは自分たちにも見えない何かかもしれない。いや、読み返してみないと分からない。読み返してみたらそれが何か分かるかもしれないのだが。

やはり、その「何か」は違うが、私などもそうしたある種の根源的な暗い情熱を持っていて、それが自分をある種の十字架に縛り付けている部分はあるなということをこういう人の作品を読むと感じる。(2005.9.20.)

(あとのことになるが、安野モヨコが元気だった頃の岡崎京子のアシスタントをしていたことを知った。)

  

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