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手嶋龍一・佐藤優『インテリジェンス 武器なき戦争』

インテリジェンス 武器なき戦争

幻冬舎

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少し遅くなったが、体調がだんだん戻ってきたので出かけることにして、丸の内の丸善に出かける。少し気分が楽になっていたので楽しかった。丸善ではいろいろ本を物色したが、結局気になっていた手嶋龍一+佐藤優『インテリジェンス 武器なき戦争』(幻冬舎新書、2006)を買った。この本はまだ読みかけだが、これも相当面白い。

対談者の一人、手嶋龍一氏はワシントン総局長の時代が長く、911などに関連してよくテレビでも拝見していたが、なんだか決まりきったことしか言わないつまらない人だなという印象を失礼ながら持っていた。「ブッシュ外交の鋭い分析」や「アメリカ社会批判」とか「911後の硬直化したアメリカ世論」などに対する快刀乱麻の社会科学的分析を期待しているほうにとって見れば、なんだか無難なことしか言わない人だなと思ったのである。しかし、最近の活躍を見ていると、それは全くこちらの見る目のなさのなせる業で、ものすごく奥深いところまで分け入ることのできるインテリジェンスの専門家であることが分かり、人を見る目のなさに恥じ入るばかりだ。しかしそれは逆に言えば私の視線、おそらく私だけではないが日本の文系のインテリの視線のある「狭さ」の現われなのだろうとも思った。この本は読みかけなので、また読み終えたら感想を書こうと思う。(12.17.)

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手嶋龍一・佐藤優『インテリジェンス・武器なき戦争』(幻冬舎新書、2006)も読了。こちらはインテリジェンスの専門家同士が虚虚実実の会話の中からインテリジェンス(情報戦略、外交や軍事における)活動の実態や今まで語られてきたことの虚実皮膜について論じ、またこれからの日本の情報戦略についての意見を述べ合っていて、非常に興味深い。面白いと思ったところをいくつか。

インテリジェンスに才能があるとすると、その最も大本になるところは「好奇心」であるらしい。「わたしは権力の中枢に近づいて真実を知ることが面白かったんです。好奇心に従って、誰も知らない本当のことを知りたいと思った」と佐藤は言うが、やはりそういうところがないとこういう活動は出来ないだろう。

ゾルゲ事件の分析では、ゾルゲはソ連とドイツの二重スパイであるけれども、どちらかというとドイツに有利に働いている、という判断は意外だった。ゾルゲはスパイとしては中の上くらいで、それを使いこなしたオットー大使が優れたインテリジェンス・センスを持っていた、などというのもわたしには判断しかねるけれども興味深い。

イスラエルについて、「彼らは、相手がイスラムである以上、穏健派だろうが過激派だろうが関係ないといいます。エルサレムがイスラエルの首都であることは、どんなに世俗化したイスラム教徒でも絶対に認められないことだ。しかし、この世の終わりまで生き残ることが旧約聖書に書かれたわれわれの使命だから、全世界に同情されながら死に絶えるようなシナリオは選べない、とかなり残酷なことを言うのです。」という。この話は違うところでも読んだが、要するにユダヤとイスラムは両立し得ない、というシニシズムに立って彼らはパレスチナにいるのだ、ということを理解しておかなければならないということなのだろう。

米ロ関係は共和党政権のときのほうがいい、なぜならば「民主主義のスタンダードをロシアに求める点では民主党政権の方が厳しい」から、というのもよく理解できる。クリントン政権の時のポリティカル・コレクトネスの世界への押し付けは私自身本当に嫌悪感を持ったものだが、そういう点では共和党政権の方が私自身も好感は持てる。

クリントン政権の甘さは、スーダンにいたアルカイダをスーダン政府から引き取ってくれといわれたときに断っているということに現れている、という話も具体的なことは知らなかったがさもありなんという感じはした。

日本の外務省では条約局が非常に強い権威と権限を持っているという話もへえ、と思う。確かに条約というのは相手があることだから国の内部の権力関係だけでいじれるものではない。条約局の解釈が絶対だというのはよくわかるが、佐藤はそういうことも含めて政治家がきちんと判断する仕組みを作らなければならないということを言っていて、それは日本の仕組みが民主主義である以上、そうあるべきだとは思う。要するに官僚の側が政治家を信用していないという部分が強すぎるのが日本が政治的に抱えている大きな問題の中でも最大のものであるとわたしも思う。しかしそれは構造的なもので、マスコミも官僚のリークによって政治家を叩くことで部数をはけさせる、という構造を持っているから、叩きやすい顔のある政治家は叩くが叩きにくい顔のない官僚のことについては書けないしろくに調べてもいないのではないかという気がする。

そういう意味でいうと佐藤という異端の存在は日本の官僚界に大きな風穴を開ける可能性があり、非常に面白い。

そのほかいろいろ面白いところもあるが、全部書いても仕方がないのでこのくらいにしておこう。また何かに関連して言及することはあるかもしれないが。(12.18.)

  

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