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松井秀喜『不動心』

不動心

新潮社

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3時過ぎに出かけて、丸の内や八重洲を散歩して、八重洲ブックセンターで松井秀喜『不動心』(新潮新書、2007)を買う。左手骨折という大怪我に見舞われた昨年の松井が、どのように大リーグに復帰してきたか、また長嶋との「素振りの音」を通じた交流、なぜ優等生的なコメントをするのかというようなことまで、松井が淡々と本心を語っている、という感じの本。イチローと松井はやはりともに天才だが、全く違ったタイプの天才で、それはお互いによくそのことを理解している感じがする。イチローがやはり敏感な感性を軸にした才能であるとすれば、松井は「不動心」、言い換えれば「鈍感力」がその中心にある、という感じがする。

八重洲ブックセンター中二階の喫茶店ティファニーで朝食を、もといコーヒーでケーキを食べながら読み進める。「所属チームに対する『誇り』は、野球に対するモチベーションを保つ上で、非常に重要な要素ではないかと思います。」チームプレー、組織プレーで活動する上でのモチベーションは、やはりその組織に対する誇りが重要だろうと思う。誇りがもてないと、やはりあまりやる気がでない、というのは身につまされる。リハビリやマイナーでの経験も貴重なものとして楽しんだけど、「それは本当の自分の生活ではない」とちゃんと言い切れることは大事なことだ。

新聞で「松井大ブレーキ」とか書かれる頃にはもうスランプを脱しかけているので、そういう記事の出た翌日にはよくホームランが出た、という話も面白い。まさに鈍感力だ。もとい不動心だ。長嶋はとにかく松井に素振りをやらせて、その音を聞いていて、鈍い音がすると叱責されたのだという。むかし、掛布がスランプのとき電話で長嶋に相談したらそこでバットを振ってみろと言われ、長嶋は電話で素振りの音を聞いた、という話は非常に面白い。

「信念は嘘より危険な真理の敵である」という言葉が紹介されていたが、ちょっと唸らされた。ピタゴラスの「怒りは無謀をもって始まり後悔をもって終わる」という言葉もあったが、松井の「不動心」はなんていうか、宗教的な家庭に育ったことが大きいんだろうと思うが、おじさんよりもおじさんらしいおじさんらしさだと思った。読了。なかなかいい。(2007.3.5.)

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