精神的な余裕は作ってでも持つ/我々はドリフのコントも理解できなくなった:大衆的古典知識はなぜ失われたか/戦後の総決算の後の荒野/石破政権の責任
Posted at 25/04/17
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4月17日(木)晴れ
昨日は午前中母を歯医者に連れて行ったのだが、予定をちゃんと確認してなかったので9時半のつもりで用意していたら10時半の予約だったので少し時間ができ、その時間に銀行に行ったりして後でやるつもりだった仕事を片付けたので、少し気持ちに余裕が持てた。歯医者は入口がスロープにしてくれてあって車椅子で入りやすくしてあるのだけど、その前に車が止まっていたので受付の人にどかしてもらうよう頼んだが、ちょうどその人が治療中ということでしばらく待つことになった。次回からは止まらないようにポールなど立ててくれるということなので、まあ今まで一度もそういうことがなかったのが運が良かったということなんだなと思った。
終わった後駐車場で今日出るマンガを確認していたら「天幕のジャードゥーガル」5巻、「不滅のあなたへ」24巻、「雲上に歌いて、君を待つ。」2巻と3冊買いたいものがあったのでTSUTAYAに出かける。首尾よく見つけられたので良かった。最近なかなかマンガを読む時間もないが、精神的余裕は作ってでも持ったほうがいいなとは思っている。
***
https://x.com/ganrim_/status/1912194779427029389
この雁琳さんのツイートは、というか元はと言えば副主席さんのツイートへのリプライで、それも元を辿っていくとking-biscuitさんの
https://x.com/kingbiscuitSIU/status/1911778096149114929
というツイートに遡り、発端は
https://x.com/tensame/status/1910760481121538361
こちらということになるようだけど、つまりはこのドリフのコントの時代には常識として生きていた泉鏡花の「婦系図」(だいたいこれもどう読むかわからない人の方が多いだろう)のセリフやドラマ展開の知識が今は既に失われてしまっていて、こういうパロディも成立しにくくなっている、という話から、国民的な「古典」知識が失われている、という話になっているわけである。ここでいう「古典」とは、まあ確かに泉鏡花は近代ではあるが古典と言ってもいいのだけど、学校で学ぶような正統的な古典でもなく、どちらかというと大衆文化の中の、それでもなんとなく知識として受け継がれてきた作品に対する意識、ということになるだろう。
「別れろ切れろは芸者の時にいう言葉、今のあちきにはいっそ死ねと言っておくんなまし」というのは舞台になった時の言葉で原作小説にはないそうだが、この舞台を見たことのない私でもなんとなく知っている言葉ではあった。
この辺りの「古典」について知りたいのであれば、戸板康二「すばらしいセリフ」などが参考になるだろう。私自身、みんなが知っていて自分が知らないセリフは結構あったから、この本で勉強した覚えがある。もう40年少し前の話で、自分が歌舞伎を見始めた頃のことではあるのだが。
国民文化として、そうした蓄積が失われていくことは損失だ、ということもあるし、それは日本とその文化が「過去を脱ぎ捨ててきた」現れだと思う。これは戦前の日本、「大日本帝国」という存在に過剰に罪意識を持ち、それにまつわるものを脱ぎ捨てながら、それ以前の江戸時代や平安時代、鎌倉時代などに日本人の原型を見ようという無意識とも繋がっているし、参政党などが言っているらしい「縄文ナショナリズム」みたいなものにも繋がっている。
保守であれば日本近代を直視すべきはずなのだが、あまりに不当に左翼によって日本近代が貶められているために見たくなくなってしまっているということは日本人全体としてあるので、どうしてもそういうものに引っ張られてしまうのだろう。戦前から続く大衆文化的教養にマイナスの視線をむけ、一概に「古い」と切り捨て、また現代と違うジェンダー基準などに触れることさえ嫌がる階層みたいなものも生まれているような感じはある。
「日本という国は「戦後」の間に殆ど別物に生まれ変わってしまった。」
というのはまあ当然の指摘なのだけど、それをなんとか巻き戻したい、正しかった方向に戻したいというのが自民党の中の潮流としてはっきりあった。
それが「戦後政治の総決算」と言った中曽根元首相の言葉に表れていて、また「戦後レジームの総決算」と言った安倍元首相の言葉にも現れていたわけである。だからそこに大きく期待はしていたのだが、安倍さんの死後は「総決算」自体が総決算された感じになっていて、同じ方向の人たちの考えは石破政権で冬の時代を迎えているというのが実態だろう。
http://repo.kyoto-wu.ac.jp/dspace/bitstream/11173/1552/1/0150_001_003.pdf
「戦後の総決算」についての考察の文章があまり見つからなかったので上記だけあげておくが、例えば新自由主義=ネオリベラリズムという言葉の使い方についても混乱が見られ、安倍氏がまるでネオリベだったように書かれている文章がこれだけでなく実に多いことに調べて気づいたのだけど、本来のネオリベラリズムというのはレーガンやサッチャーのように財政立て直しの緊縮政策で財政を絞り込み、金融も引き締めるものだから、安倍氏のやったアベノミクスとは正反対の政策であり、そういう面からも特に左翼的な政治的立場から分析されたこういう批評は眉に唾をつけつつ読まないといけないと思う。
このことをどう評価するかというのは、例えばこんな意見がある。
https://x.com/Soldi79710444/status/1912343258937651371
これはある程度理解できる話で、今の日本がサブカル、特にマンガやアニメが百花繚乱なのは「古典の縛り」から自由だということがあるわけで、それはおそらく世界的に見ても一番日本がそうなのだろうと思う。だからこそ日本初のマンガやアニメのコンテンツが強い、ということでもあるわけだ。
そして、パロディや冗談にしても古典に依拠したものよりサブカル古典ともいうべき少し前の漫画のセリフやTwitterでいえばマンガのコマがネットミームとして流通するようになる。私などはなるべく古典に依拠した冗談を使おうと心がけてはいるが、なかなかインプレッションは伸びない。
これは先に述べたように日本が未来志向の社会で過去と向き合う必要も全く無くなっている、という躁狂的な状態だから、というよりはむしろ「過去=戦前の近代日本」を見たくないから無理に前を向いているという不自然な状態でもあるということだろうと思う。
だから我々としては、そういう日本の状態の中で得られたものを喜んで収穫するのはそれはそれでいいのだが、より日本の歴史やその歩んできた道に依拠したような話もまた知っていきたいし読んでいきたい、ということもないと、日本という国の姿が今より溶解していく、ということにつながりかねないだろうと思う。
家父長制云々と言っても今の若い人はそれを扱った文学作品にも触れていないわけで全然ピンとこないだろうという意味では、左翼の劣化もまた同じ原因から起こってきているといえなくもない。
実際のところ、「戦後の総決算」をやった安倍さんが生きていたら総決算の先の未来もまだ見えていたのではないかと思うのだけど、安倍さんが殺され、安倍派が凋落し、石破政権のもとでそうした考えも冬の時代を迎えている今、「戦後」がどうなっているかというといたずらに浮遊し続けているだけのようにも見える。まさに戦後さえ見えなくなった荒野といえばいいのだろうか。
石破さん自身、自民党総裁選の決選投票での最後の演説で「夏祭りの夜の豊かさを取り戻そう」と訴えてその郷愁で総理大臣になった人であるのだが、その「農村共同体」的なものをどう評価しどう振興していきたいのかその政策は全く見えない。過去を美化して当選したのだから、その過去にも責任を持ってもらいたいとは思っている。
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