「ふつうの軽音部」64話「プロトコル始まる」を読んだ:観客の需要に応えるステージングと「退屈な演奏」/ニヤケ顔の向こうの怒りと屈託/バチカン大聖堂での異端(トランプ)と異教徒(ゼレンスキー)の膝詰め会話
Posted at 25/04/27
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4月27日(日)晴れ
今日は東京に帰らず実家の方にいるのでつい気持ち的にゆっくりしてしまい、深夜0時の更新を待って「ふつうの軽音部」64話「プロトコルはじまる」を読んだ。その前に予習しようと思い数回前から読み直していたのだが、「Tシャツを作る」が割引になっていることに気づいて何か作ろうと思い、最終的には53話の扉絵の鳩野と鷹見が並んで立っているカラー絵をTシャツにすることにし、地は黒を選んだ。
https://x.com/honnokinomori/status/1916139099704201275
割引期間が26日までと書いてあったので急いだのだが、よく見てみたら5月26日までということで、トホホである。まあいつかは作りたいと思っていたのでいいのだが。ジャンプラTシャツは【推しの子】でアクアとルビーが踊っている図柄のものを作って以来だが、あれもカラー絵だった。今回は62話の8ページ目の転んでギターソロを弾き切った鳩野が立ち上がって最後のサビを歌い始めるページとどちらをとるか迷ったのだが、最終邸にカラーにした。本当は次の9ページ目の鳩野が歌っている絵がいいのだが、歌詞が載っているとTシャツにできない(著作権の関係だろう)ようなのでいい場面がTシャツにできないのが残念なのだよなとは思う。
https://shonenjumpplus.com/episode/17106567265233237277
今日更新の64話は鷹見の家での父との会話、「成績は落とさない。ちゃんとした大学に進学して普通に就職する。バンドやるのは軽音部の中だけで外では活動せん。それでええやろ?高校3年間軽音部で遊ぶだけやから父さんが心配するようなことにはならんよ」というセリフが鷹見が抱えている屈託を表現しているわけだろう。
鳩野たち「はーとぶれいく」のステージと違い、プロトコルのステージは軽音部以外の生徒も詰めかけ、最前列には強火ファンらしい手製のうちわを持った集団までいる。プロトコルが全員お揃いの黒のスーツで現れると会場から嬌声が上がり、鳩野たちは「あまりにスカした衣装」に共感性羞恥で顔を歪めるが鷹見のうちわを持っている生徒は「あまりのカッコよさ」にすでに泣き出している。
そして普段は緩いテンションの鷹見が今回に限って「今日どのバンドより良い演奏するから、ついて来い!」と煽り系の強いMCをして、鳩野たちは思わず顔を見合わせる。曲は「夜の本気ダンス」の「Crazy Dancer」。
私は正直言ってどちらが曲名でどちらがバンド名なのかわからなかったのだが、どうも「夜の本気ダンス」がバンド名で「Crazy Dancer」が曲名らしい。
このバンドはもともと銀杏Boyzのコピーなどをやってたアマチュアバンドだったらしいのだが、ダンスパフォーマンスもするロックバンドとして2016年にこの曲を出しているようだ。比較的新しいバンドだということになる。
曲の歌詞の感じは文化祭で演奏したEveの「ドラマツルギー」に通じる感じがあり、どちらかというと恵まれた家庭の高校生とかが感じる「出口がない」という屈託が歌われている印象があるのだが、これは鷹見の置かれている環境、なんでもできるし不自由のない生活はしているが将来は縛られている、今も完全に好きなことができるわけではない、という状況が背景にあるように感じた。
彩目が「あたしがいた時あんなファンおらんかったぞ・・」というと桃が「プロトコルって彩目が抜けてからどかっと人気出たよな〜」と煽り、「ケンカ売っとんか?」と答えたりしているが、これは鶴先輩が文化祭の時に言っていたように、「彩目が抜けて水尾が加入し、わかりやすく推しやすいバンドになった」ということなわけである。
男女混合バンドだと技術的なものがキーになるが、ガールズバンド・ボーイズバンドになると「推し」の要素、アイドル的な要素が出てきて、彩目が鳩野の弾き語りを聞きながら考えたように「うちの高校なんかミーハーの集まりなんやから、わかりやすく歌うまくておまけに顔も良いようなそんなやつらだけが持て囃されんねん」ということそのまま、演奏もうまくてビジュアルも良い、というプロトコルの特徴をとことんまで打ち出し、それにただうまいだけでない熱い感情的なものまで込めたボーカルを加えて「ライバルとしてのプロトコル」が「ついに本気を出した」わけだ。サブタイの「プロトコルはじまる」も「終わった」の逆であり、ここからが本気なんだ、という「強敵に初めて本気を出させた」少年マンガの王道展開である。
遠野のドラムだけ気にしている桃、これははーとぶれいくの演奏で鳩野を支える彩目のギターに注目していたことに重なる職人的な感覚を見せていて、厘は「退屈な演奏・・・」と一刀両断である。その「退屈さの理由」はまだわからないが、おそらくは「聴衆の需要に徹底して合わせている演奏」であり、「彼らが何をやろうとしているかが見えてこない、顔の見えない演奏」ということなのではないかという気がする。それはつまり、「鷹見が自分の屈託を超えられないその限界」みたいなものを見ているのではないか、という気がした。
この2人はプロトコルの演奏を客観的にかなり引いた立場で聴いているが、鳩野と彩目は違う。鳩野は「何これ。ライブが始まったばかりなのに視聴覚室の空気が変わった。まだ盛り上がるサビの前なのに、観客の期待感がこっちまで伝わってくる」と目を見張っている。つまり鳩野は自分のボーカルとギター演奏にだけ集中してステージを作り上げてきたけれども、すでにプロトコルはステージングの段階、ライブの見せ方まで計算して、観客の方もプロトコルは自分たちをどう盛り上げてくれるか、という期待を最初から持って集まっているということに驚いているわけである。
しかし彩目はどうだろうか。「おいおい・・・ちょっと待てやほんまに・・・」という心の声と驚いている表情だけが描かれていて、一体何に驚いているのかはまだわからない。しかしおそらくは、鷹見がここまで感情を乗せたボーカルを歌うなんて、というその後の鳩野のリアクションと同じことを感じているのだろう。彩目は夏休み段階まで鷹見と付き合っていて同じバンドで演奏していたのだからその戸惑いは尚更だろう。
鳩野は「変わった声で荒削りな迫力のあるボーカル」だが、鷹見は「誰が聴いても一声で上手いと思うボーカル」であるようで、その上で一歩引いて自分の思いをニヤけた薄笑いの下に隠してきたタイプだから、その変貌に鳩野と彩目が驚かされているのも当然だろうと思う。これは振られたことへの彩目の反発、「生理的になんかムカつく」という鳩野の2人の鷹見に対する反発があってこその、「鷹見の知らない面を見てしまった」ことに対する反応なのだろうと思う。
歌っている鷹見の描写は度々鷹見自身が鳩野のボーカルを聞いて思い出していた鷹見の兄の歌い方によく似ていて、そこに鷹見自身の本当の願いみたいなものが込められているのだろう。
鷹見が「人の心がわからない」とか「モテて言い寄られるのに女性に対する扱いが雑」とか見られるのはおそらくは彼の抱えている屈託からくるもの、つまり彼が時折見せる暗い冷たい目は彼の根底にある「怒り」の発現であって、自由に全力が発揮できる兄や鳩野とは違って、自分は抑えなければいけないという思いが「お前は違うやろ」という自分に対する冷たい発言につながったのだろう、と思った。
64話についてこんなに書くつもりはなかったのだが、自分の中でもずいぶん考えさせられたのだなと思った。
***
https://x.com/jacksurfleet/status/1916222010369171544
フランシスコ教皇の葬儀のためにバチカンを訪れたトランプとゼレンスキーがバチカンの聖堂のキリストの絵の前で椅子を二つだけ出して膝詰めで話をしている写真は、かなりインパクトがあった。カトリックの聖堂でローマ教会からすれば異端であるプロテスタントのトランプと異教徒であるユダヤ人のゼレンスキーが話し合っているというのはある意味クリスチャンにとっては激萌えの図ではないかと思った。その2人の話し合いが今後の世界を左右しそうだという点でも、確かにこの出来事は教皇フランシスコが起こした奇跡の一つなのかもしれないという気はした。まあ、そういう演出が彼らは上手いなとは思うのだが。
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