経済力以外のモテ要素とその極北/アメリカの常若の精神/「CHANGE THE WORLD」決して負けない演劇という強い力/「新九郎奔る!」茶々丸と義材
Posted at 25/03/13
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3月13日(木)晴れ
今朝の最低気温は4.2度。晴れていてもこの気温というのは、本当に春になってきたんだなと思う。作業場の駐車場にも水仙が青い葉を見せ始めた。また草刈りが忙しい季節が、遠からずくるんだなと思う。
昨日は朝はゴタゴタしたのだが、結局予定がなくなって買い物に行ったりクリーニングを取ってきたり蔦屋でマンガを買ったり。マンガワン連載の高校演劇マンガ、「CHANGE THE WORLD」1巻が発売になっていたので買いに行った。これは多分最初に知ったのは「ふつうの軽音部」の原作者のクワハリさんがオススメしていたからだと思うのだが、単行本にもクワハリさんの推薦文がデカデカと出ていてすごいなと思った。もう一人の推薦者はミュージシャンのキタニタツヤさん。アニメの『呪術廻戦 懐玉・玉折』のOP「青のすみか」の人だとのこと。
「CHANGE THE WORLD」は高校演劇マンガなのだが単行本は5話まで収録。マンガワンアプリではもう14話まで出ているので、早く2巻3巻も読みたいと思う。
全ページ修正が入っているという話なのだけど、読み返した感じではあまり見つけられなかった。内容はとても面白い。最初は浜野が高校演劇部に入るつもりのない村岡を動かし引っ張り回して、出演すると決めたあと、今度は村岡に引っ張り回される。このブン回し合いが最高にいい。「リンダリンダ」に「愛じゃなくても恋じゃなくても君を離しはしない 決して負けない強い力を僕は一つだけ持つ」という歌詞があるけど、その力とは何だろうとずっと思っていたのだが、最近それは「音楽」なんだなと思うようになった。そしてこの作品では、彼らの「決して負けない強い力」というのは「演劇」なのだなと思う。こういうのは感動する。
私は大学時代からしばらく演劇をやってたのだが、高校の時は演劇部がなかったこともあり、やっていなかった。教員になってから赴任した二校で演劇部の指導をしたことはあるのだが、こんなレベルには全く達しなかったし、教育としての演劇というのもどうも思想的に合わない感じだった。この作品のように、誰かに指導されるのではなく、自分たちでやりたいことをどんどん出していく、こういう部員たちの真摯さが見える話はとても面白いなと思う。音楽も衣装もあるいは舞台さえなくても演劇は走り出す、その原点を読んでいる感じ。
読んでいると、結局自分が生きることがなかった「演劇の世界」を改めて生き直してるような感じがして、読んでいてとてもスッキリする部分があり、最高だなと思う。そしてこの作品はさらにそれを超えていきそうな感じがあり、とても楽しみにしている。
もう一冊買ったのが「新九郎奔る!」19巻。伊豆の堀越公方、足利政知が亡くなった後の長子・足利茶々丸によるクーデタ(1491)前夜から、茶々丸と伊豆の国人たちの権力奪取、それに対応して動く関東の情勢と駿河の情勢。伊豆に領地を持つ新九郎も動き、まずは備中の領地を従兄弟に売却して家来たちに去られるところで憤怒の表情を浮かべるところがラスト。これは明応の政変(1493)前夜の動きで、政変により足利義視の子の足利義材が将軍の座から追われ、足利政知の子(茶々丸の反乱で殺された円満院の子)の義澄が将軍になることで茶々丸を討つ大義名分が新九郎に生まれる、という話の流れになっている。
この話が史実とは別に(この辺の史料をちゃんと読んでいるわけではないのでどこまでが本当でどこからがフィクションなのかわからないところも多いのだが)面白いのは、実は茶々丸が豪族の娘の子ではなく円満院が産んだ義澄と双子の兄弟で、「畜生腹=双子」であったためにその事実を明かさなかったという設定になっているところで茶々丸の悲劇が極まる、という部分、そして追放される足利義材が実は「いいやつ」で、新九郎の甥の龍王丸が後を継ぐ生涯になった小鹿新五郎と同じく新九郎から見て「好ましい人物」であった、というのが面白いなと思う。人間として好感が持てるということと敵味方であることとは別、というある種の冷徹さと人間らしさの双方が新九郎の中に同居しているのが良いなと思う。
***
小山(狂)さんのnoteを読んだのだが、面白かった。
https://note.com/wakari_te/n/n51183e32c1a4
趣旨としては、男尊女卑の傾向が強いとされる九州をバカにする風潮が一部にあるが、実は九州は女性の社会進出が進んでいて、女性が男性に求めるものの優先度が「金・経済力」でなくなり、「男らしさ」になっているために、オラオラ系の男がよりモテて、関東・東海では相手にされないような収入のない男でも男ぶりが良ければモテるので、男を持ち上げる男尊女卑の風潮になっているのだ、という。
一方関東・東海では男性の方がお金を稼ぎやすい社会構造になっているために自ずと女性が男性に求めるものが「金・経済力」になり、専業主婦の割合が一番高いのも東京近郊であり、経済力があって人間的に穏やかな男性が好まれるために男女平等感が強いのだ、という話になっている。
これは大変説得力があり、私が最近読んだ小山さんの文章の中でも傑作だと思うので、ぜひ全文を(有料だが)お読みいただけると良いと思う。
「男は金持ちが偉い、金を持ってない奴はカス」というのは多分明治以降発達した価値観で、江戸っ子だったら気風の良さ、金がものをいいそうな大阪でもモテるのは「つっころばし」と呼ばれる突いたら転んでしまいそうな優男の二枚目で、「色男金と力はなかりけり」だったわけだ。九州では今でもそういういろいろな意味での「男らしさ」が健全に評価されているということなのだろうと思う。
私も基本的には「男は経済力」という価値観には違和感があったのだがどこにその違和感の根拠があるのか、というのがわからなかったのだけど、これを読んでなるほどと思うものがあったわけである。モテという観点からいうと経済力というのは確かにモテの一要素ではあるが、全てではない。経済的成功のためにもむしろ経済力以外のモテ要素の向上も考えた方がいいというのが理解しやすいなと思った。
ついでにモテということで書いておくと、友人に紹介された女性風俗の男性が整形のために「美容整形版令和の虎」という動画に出ているのが面白かった。
https://www.youtube.com/watch?v=oRtsDDX7MOw
これはいろいろコメントをしたいところはあるのだが、男性のモテの追求というのもこういう方向にいくとある種の極北までいくのだなということと、女性の性的トラウマを救済するために女性風俗を求道する、というある種の現代の聖人みたいな人だと思った、ということだけ書いておこうと思う。
***
「世界秩序が変わるとき」読了。極端に言えば、アメリカは自ら生まれ変わるためにトランプを大統領に選んだ、という見方が納得のいくものだった。これは日本の神道で、20年経ったら一から社を立て直す遷宮を行うとか、諏訪大社の七年に一度の御柱祭と同じで、「常若」つまり常に新たである、という思想が国家レベルで行われているのだ、というのは頷けるものがあった。日本も明治維新の時の精神というのはそういうものだったと思うが、一度近代国家を緻密に作り上げてしまうとそれを作り直すことに気後するようになっているのが日本の現状なのだけど、アメリカは今でもそれをやっているのだという指摘はなるほどと思う。
またそういうアメリカだから、昨日は新自由主義の押し付けをして中国を持ち上げていたと思ったら、今日は一転して中国バッシングに走る、みたいな手のひら返しがあるわけだけど、日本では「過去の言説との整合性」みたいなことを問われてもアメリカは「柔軟でプラグマティックな社会」なので走りながら変わって行く事になる、というのもまあ周りには迷惑だけどそういうものと言われたらそうだよなとは思う。
また、現時点で覇権国アメリカの最も庇護を受けているのはQUADの一角として「自由で開かれたインド太平洋」のキーになるインドであり、反体制派のシーク教徒をカナダで暗殺したりロシアと貿易したりしてもアメリカは文句を言わず、また中国人には開かないSTEM関係の大学にもどんどん入学させている、という指摘はなるほどと思った。
いずれにしてもこれからのポスト新自由主義の時代には日本は追い風をはらめるようになる、今が頑張りどきだ、というのが著者の主張であり、これはなるほどと思う面もかなりあるので、日本もしっかり頑張ると良いと思うのだが、まずは不安定な石破政権を交代させることが重要な条件かなとは思った。
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