「関心がある」と「好き」と「やりたい」の違いについて考えてみた/「評論家」を批判するときに「文句を言うならお前が作れ」と反論する「作り手」側の傲慢さについて
Posted at 25/01/25 PermaLink» Tweet
1月25日(土)晴れ
昨日は早朝車で出かけて週刊漫画タイムズとスペリオール、それにアフタヌーンを買い、午前中母を連れて病院に行き、戻ってきて仕事を一つ片付けてご飯を食べてから書店に出かけてビッグガンガンの最新号を買ってくるなどした。
なんだか疲れが出ていて病院で母の点滴を待っている間に爆睡したりしたが、仕事は結構充実はしていた。ただやり忘れたりしたことがいくつかあって、やはり疲れが出てるのかもしれない。
Twitterを見ているとAIであるGrokに質問するというのが割と流行っているようなので私はどんな人間か一言で言ってください、というような質問をしてみたら「好奇心旺盛」という答えが返ってきて、ふうんと思っていたのだが、今朝運転しながらそのことを考えていて、割と本質をついているかもという気がしてきた。
私は多分いろいろなことにすぐ興味を持つ方だとは思うのだが、「興味を持つ」という持ち方についても人によってだいぶ違いがあると思う。「お金の匂いがする」とすぐ興味を持つ人もいるし、「こいつは叩けそうだ」と思うと興味を持つという人もいるし、文学性が豊かだと感じると興味を持つ人もいるし、少しでも「お得だ」と感じると興味を持つとか、「興味を持つ対象がどんなものか」というのはその人の人柄や仕事、感覚や置かれている状況などを反映するものだなと思う。
私は基本的に「いろいろなことを知りたい」人だなと以前から思っているのだが、そういう意味では「好奇心旺盛」というのはまさにその通りだと思う。「知らなくてもいい」「知らない方がいい」みたいなことも世の中にはたくさんある、ということは生きているうちに理解はしてくるからそういうものとは距離を置くようにはするのだが、一度距離を置いてみたら実は結構重要そうなものだった、みたいなこともあって、あえて距離を置くという本来の性向に反することをやっているために返って「やはりみてみようか」となりにくいという弱点もあるのだなと思う。
メリットやデメリットなどもうまくつかめないところはあるし、まあ自分の性向の方向に幸福とか成功というものはあるんだろうとは思うのだけど、そのすぐ隣のところに弱点がある、というのは内角打ちが得意なバッターが実はすぐそばの球を苦手とする、みたいな感じが多分あるんだろうと思う。こういうものをより総合的に客観的にみられるようになることは少なくとも自分にとっては大事だと思うのだが、実際のところいまだに自分のことが一番よくわからない、ということはある。だからGrokだとか占いだとかでいろいろな答えが出てくるとそれについて考えることで自分に対して考察したりするのだよなと思う。
「関心がある」というのはよくいうことだけど、「関心がある」というのは基本的に無責任なレベルのことであって、それについて知りたいと思い情報は集めたりするがそれ以上に踏み込まない場合も多い。そこから一歩踏み込むと「好き」というレベルになり、「好き」になるとそれを自分のものにしたい、とか手に入れたい、と思うようになる。マンガで言えば雑誌やアプリの連載では読む、というのが「関心がある」というレベルであり、「単行本を買う」というのが「好き」のレベルだろうか。まあ「好き」というのもいつまでも好きとは限らないので、当然ながらやっぱりいいや、という感じになることも多い。
「好き」というのは基本的に身銭は切るけれどもやはりそれ以上は踏み込まなくてもいいや、というのはある。彼氏彼女として付き合ってもいいとは思うけれどもパートナーとしては未だし、という感じだろうか。
それより踏み込むと「やりたい」と感じるレベルになる。それはつまり実際にそれを仕事として、少なくとも仕事の一つとして取り組みたい、という感じであって、人間として言えば信頼できる仕事の相手、一緒に事業を起こす相手、あるいは男女間ならパートナー関係、ということになるだろう。楽しければいいという段階を超えて仕事も生活も人生も共にする、というレベルと言えばいいか。もちろんこのレベルに一度至っても関係を解消することもあるわけだから永遠の関係ではないが、そこで運命とも呼べるような繋がりとかしがらみとかなんでもいいけれども強い引力みたいなものがあったら運命の人、ということになるんだろうと思う。
好奇心が強いというのは基本的には最初の「関心がある」というレベルにいろいろなことがすぐ上がってくるということではあるのだけど、「好き」というレベルに引き上げるのはなるべく慎重にしようとしている感じがある。まあ「ガンダム」というものはもちろん若い頃から知ってはいるがなんとなく近づかないできたものであり、最近いろいろ聴こえてはくるけれども自分とそれとの間にはなんとなく壁があるのを、まあ越えないでいようかな、という感じに思っているとか、そういうことではあるのだが。
***
ただそういうものが、例えばマンガアニメを論じる、みたいなステージになるとかなり障害になることは確かで、私はマンガはかなり読んではいると思うのだけどアニメは時間を食うこともあって見るのに慎重なところが強い。しかしそういうこともあってガンダムとかAKIRAとか「当然履修しておくべきもの」みたいなものでみてないものが結構あって、だからそれを論じる論じ手になるには足りないなと思うところはある。
「論じ手」という意味でいうと、スペリオールに掲載されていた「らーめん再遊記」の111話が面白かった。
「ラーメン職人」や「客」が「ラーメン評論家」に対して、「文句を言うならお前も作ってみろ」と言うセリフがよくある(もちろんラーメンだけではない、マンガとかでも非常によくあること)わけだけど、それに対して「ラーメン評論家」の方が異議を申し立てる、と言う展開になっている。
要はラーメンの「作り手」と「語り手」の対決、と言うことなのだが、作中の「ラーメン評論」の第一人者である有栖涼のセリフとして、「文句があるならお前が作ってみろ」と言うのは、もともと無茶な言い草であり、その背後には「褒め言葉以外は何もいうな」と言う傲慢な特権意識に毒されたセリフである、と言うわけである。その反批判の例としてチャーチルの言葉をあげているのだが、「絵を描いたことがない人間が美術展の審査員になっているのは問題がないのか」と言われて「私は一度も卵を産んだことはないが卵が腐っているかどうかはわかる」と答えたそうだ。
つまりは「作れる」と言うのと「わかる」と言うのは別のことであり、「わかる」と言うことに生涯をかけている評論の仕事をしている人間にはその人間としての誇りがあり、それを否定しようと言う「アーチスト幻想」「職人幻想」みたいなものに対して断固として一言言いたい、と言うわけである。
確かに、批評というものそれ自体は存在価値があると私も思うけれども、逆にろくに翻訳もしていないのにシェークスピア評論家を自認したり、勉強もしていないのに映画評論家を自認するような傲慢な例もあるので、どちらも一概には言えないことではあるのだが、言えることははっきりと認められる作り手もいればはっきりと認められない作り手もあるのと同様、批評家もこの人はすごいという人もいるし箸にも棒にもかからないという人もいるというだけのことだろうなとは思う。
だから批評家も批評の対象になればいいだけの話で、「お前が作ってみろ」というのは有効な批判とは言えない、というのはなるほどと腑に落ちる部分はあった。自分もそういう批判をしたことがないわけではないと思うから、反省させられる部分はあった。
また、評論家に批判された作り手の側も、納得がいかなければそれに正々堂々と反論すればいいとは思う。ただ、評論家は言葉を使うのが仕事であり、作り手の側は必ずしも言葉を使うのが仕事ではないから、そこに不均衡な権力勾配が生じる危険性はなくはないとは思う。その辺りを解消しぶちまけるのに使える最終兵器が「文句を言うならお前が作ってみろ!」と言うセリフだったわけで、そのセリフが存在するのには存在する意味はあると言うことではあるのだけど、そう言う意味ではどちらにも言い分はあるわけで、この話がどう言う結末になるのかは大変興味がある、と言うことでとりあえず締めておこうと思う。
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