齋藤知事を再選させた若年男性層の「現役重視」の流れ/アメリカ政治の分断と民主党支持層の極左化/【推しの子】原作者インタビュー/神保町を歩く

Posted at 24/11/18

11月18日(月)曇り

今朝は東京。昨日は10時台の特急に乗るつもりだったがガスの消し忘れが気になって一度実家に戻ったために特急券を無駄にしてしまった。駅前のスーパーで弁当を買って11時台に乗って帰京し、2時40分ごろ帰宅。少しいろいろやって、夕方に家を出て神保町へ行った。

文房堂の喫茶室へ行ってみたが混んでいたので断念し、東京堂や書泉グランデで本を見た後、ギャラリー古瀬戸でお茶をしてケーキとコーヒー。そのあとディスクユニオンでフリードリヒ・グルダの1978年10月13日のライブ録音の「メッセージ・フロム・グルダII」のレコードを買ったのだが、これは当たりだった。モーツァルトも素晴らしいし、グルダ自身の作曲の作品もいい。ウィキペディアを見ると普通のクラシックのピアニストとは違うユニークな経歴なのを初めて知ったのだが、こういう人は面白いなと思った。2枚組で480円というのは、やや盤が波打っていたとはいえ、超お買い得だと思った。

そのあと古本屋で、評論の文体の研究をしてみようと思って野島秀勝評論集「日本回帰のドンキホーテたち」を買った。これも500円で買えて、マケプレより安かったのでお買い得だったと思う。

地元に帰ってきてスーパーで夜と朝と昼の買い物をし、帰宅。グルダを聴きながらサントリーの無頼派を飲み、夕食を済ませたが、気持ちよく酔えた。

***

昨日は兵庫県知事選があり、パワハラ・おねだり疑惑で県議会で不信任を決議され、辞任して再度立候補した斎藤元彦知事が再選された。これは似たような経緯で再立候補して再当選した元長野県知事の田中康夫氏を思い出したが、今回は全会一致で不信任を突きつけられたり、自殺者まで出している経緯を考えると、マスメディア的には衝撃だったらしく、昨日から今朝にかけて私のタイムラインも大荒れであった。

ネットで見ている限り、斎藤知事の演説はどこもたくさんの聴衆を集め、雰囲気が盛り上がっていた一方、稲村陣営はしばき隊系の人たちの行き過ぎた行動が目立ち、雰囲気が悪くなっていた感じがある。これらの人たちは都知事選で蓮舫候補の足を引っ張り、先日の総選挙でも八王寺の萩生田候補に的を絞って攻撃したものの当選させてしまい、今回も斎藤知事の勝利に結果的に導いた感があり、こうした運動の仕方はマイナスにしかならないという印象がある。

しかし大きく言って、若者が斎藤知事を支持しているのは割合鮮明に見えてきて、このあたりは都知事選での石丸候補の躍進や総選挙での国民民主党の議席4倍増にもつながっている感じがする。アメリカでも棄権が多かった若年層の男性有権者の支持をトランプ陣営が取り込み、地滑り的な勝利をもたらしたことと重なる感じがする。

「おためごかしのない、ポリコレ優等生ではないカッコいい男性候補」に投票したいという若年層の掘り起こしが、今回の斎藤知事の再選にもつながっている感じがする。

このあたりのところを2016年のヒット映画、「シンゴジラ」の支持層と「君の名は。」の支持層の違いとしてとらえた分析があった。

https://note.com/smartbb/n/n6a36f8432346

このあたり、何となくなるほどという感じはあるのだが、あまりはっきり分かるわけではない。ただ、「シン・ゴジラ」の支持層が、日本が今まで積み上げてきたものを重視する考え方であり、「君の名は。」の支持層はそうではない、というのはある気がする。少子化が進み、絶対数は高齢者に比べて少ないけれども、今まで世界を変えてきたときに大きな働きをしたのは言うまでもなく若年男子層であるわけで、その層が動き始めたということは確かである気がする。

この層はつまりは、反弱者=高齢者福祉への全振り・反既得権・反フェミニズム=女性優遇・「現役層の手取りを多くする」政策の支持、などが特徴なのだと思う。今までは彼らが安倍政治・アベノミクスを支持してきたが、その後継の高市氏が破れ、既得権層優遇と思われる石破政権の発足により自民党から離れ、国民民主党や石丸・玉木・斎藤に支持が集中したところがあったのではないかと思う。

ものすごく単純に言うと、日本を動かしてきたのはシステムの力だ、と考える旧世代に対し、これから世界を動かすのは自分たち若い世代の男たちだ、という主張が出て来たのではないかという気がする。

これはアメリカの動きとも関係があるので、次にアメリカの変化について考えてみたい。

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https://twitter.com/KS_1013/status/1858171094504710610

非常に面白いと思ったのは、このツイートとそのグラフ。オバマ政権下にアメリカで支持層に大きな変化があったということ。右=共和党が変化したのではなくて左=民主党が急速に極左に傾いたと。日本でもこういう調査があると面白いと思うのだが。

逆に言えばそれだけ「初の黒人大統領」のインパクトは強かったのだろうなと思う。しかしその続きでヒラリーが「初の女性大統領」になるところまではいかず、右=共和党にトランプが登場したと。ネオコンでもネオリベでもないペイリオコン(伝統保守)に強く支持される大統領。

ブッシュジュニアの頃にすでに「宗教右派=福音派」が強く共和党を支持している、というのは言われていたけど、今回はパレスチナ人や非白人層もトランプ支持に動いている。ペイリオコンというのは公民権運動以前のアメリカに戻れという主張だと考えてよいと思うが、民主党中心の黒人のみが特権的なマイノリティになってる構造への反発というものが、彼らをトランプ支持に回らせたのだろうなと思う。

だからペイリオコンも単純に「白人右翼」というのは難しい。民主党の理知的なリベラル政策の歪みがトランプに地滑り的な支持をもたらしたのだろうなと思う。

「白人右翼」というのはロシアのプーチンやハンガリーのオルバンの主張という印象が強く、これは明らかに人種主義的なのだが、もともと多民族国家であるアメリカではそういう意味での人種主義的なイメージが少ない。この辺分析が難しそうだなとは思う。

歴史的に見ると、アメリカは敵を外部に設定するときはまとまる、つまり共産主義やイスラム原理主義が敵な時はまとまる(もちろん日本を敵と設定した時代もあった)のだが、敵が内部に設定されると(公民権運動、ベトナム反戦、LGBT、BLMなど)分裂しやすくなっていて、そこからの統一の回復にレーガンやトランプなどの強力な共和党指導者が現れるイメージ。ニューディールに関してはFDルーズベルトが力技で第二次大戦までつなげたわけだけれども。

ベトナム反戦からの回復はレーガン政権がソ連を悪と設定してのりきり、経済回復と冷戦勝利によって統一を取り戻したが、クリントン政権からの経済格差の拡大、オバマ政権時の民主党支持者の急速な左旋回などで分裂が加速し、それに対する強い批判としてトランプが出て来たということだろう。

トランプの再登板がwokeに対する歯止めになることは間違いないとは思うが、どう展開していくかはわからないところが多い。

トランプの勝利は選挙戦略的には先に述べたように若年男性層の票の掘り起こしに成功したということが言われていて、これはその通りだと思う。政治=ポリコレになってしまっていて、政治離れが進んでいた若年男性層の関心をトランプは政治に引き戻した。彼の個人的な魅力もあるが、鼻につくエリートの民主党リベラルにない信頼感を、トランプが抱かせたということは確かだと思う。そういう意味では東部エリートの支配が続いていた1828年の大統領選挙で新開地のテネシーから立候補し当選して、大改革を行ったアンドルー・ジャクソンの「ジャクソニアンデモクラシー」になぞらえられる、「トランピアン・デモクラシー」とでもいえる現象が起こされているように思われる。

正直、トランプに強い信頼を持たれていた安倍元首相を失った日本は彼とちゃんと付き合っていける人がどれだけいるのか、先が見えにくい。

また、先に述べたように、アメリカはオバマ政権時に民主党支持者が極左方面に左旋回したようだが、日本は安倍長期政権時代に左翼リベラル方面の怨念が病膏肓に入った感じはある。メディアもそちらの方向に傾きすぎていて、視聴者=国民にノーを突きつけられているというのが現状なのだろうなとは思う。

こうした新しい動きの持つ力を生かしていくことがこれからのアメリカ政治にも日本政治の再生には欠かせないと思うのだが、どちらかというと今のところはそれを潰そうという方向にメディアも政府も野党も動いている感じがする。私は、この芽は育てていくべきだと思う。

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昨日まで書いていた【推しの子】の記事について、連載終了を受けての赤坂アカさんのインタビュー記事がでていて、これも面白かった。私が感じたこととそうでないことと両方ある、というかご自分があかねのようにいろいろ調べていた、というのは面白かった。

https://twitter.com/honnokinomori/status/1858124245550903326

こちらの方もまた書くべきことがたまってきたらまた書きたいと思う。

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