アメリカとイスラエルの関係性の歴史について
Posted at 24/08/14 PermaLink» Tweet
8月14日(水)曇り/小雨
昨日は午前中にお坊さんが来てお経をあげてくれて、そのあとは「忘却バッテリー」を読み直したり休み休みいろいろ考えながら今後の方針を考えていたのだが、とりあえずの自分なりの方向性のようなものは見えてきた感じはするので、それをどうしたら実現できるかについて今日あたりは考えていきたいと思う。
夜になって何をしようか考えているうちに迎え火を焚いていないことに気がつき、慌てて焚く。「盆さん盆さんこの灯りでおいでなされ」と歌うのが迎え火の時なのだが、この歌はどのくらいの範囲で歌われているものなのか、調べたことはないなあと考えてみて思った。
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日本にとってのパレスチナ・イスラエル問題というのはその本質の大きな部分は日米関係にあると考えていて思ったのだが、だから日本とイスラエルやパレスチナの問題はもちろん考える必要はあるにしても、アメリカとイスラエル・パレスチナの問題の方がより大きな部分を占めるのは仕方のないところがあると思う。しかし、アメリカとイスラエルの関係というのは日本ではそんなに報道されないので、こちらから調べていかないとわからない部分が多い。
ただ実際問題、どのような本を調べればいいのか難しかったのだが、現実問題としては英語のWikipediaをしっかり読めばある程度の理解は得られるなという感触が最近あって、それだけでも膨大な量なので大部分はAI翻訳を使い、センシティブな部分はなるべく自分で訳してみて理解する、という方法でだいぶ読んだのだが、実際のところ知らないことが多くてその度にいろいろ調べ、ああそんなことがあったのかという確認の繰り返しになっている。
日本のメディアで語られていることは実際のところほんのうわべのところが多いし、もしそういうレベルでの情報しか日本政府の主要な政治家に届いていないのだとしたら、この辺りの歴史的に複雑な問題の理解は難しいだろうなと思う。もちろん専門家は英語やアラビア語、ヘブライ語などの文書や実際の人間関係の中から重要な情報を抽出しているのだろうとは思うが、当然ながら専門家にもそれぞれのスタンスがあるので、「ふつうの日本人(誰だ)」にとっての判断材料として適切なものばかりが提供されているわけではないのは確かだろう。
だから自分が勉強してこういうことを書くこと自体が少しは情報としてプラスになればいいなと思うくらいで、多少は役に立つようなことを書いていければと思う。
とりあえずクリントン政権の終わり辺りまで記事は読んだのだが、ここまででも非常に複雑な経緯があるのだけれども、いくつか重要なことをとりあえずメモ程度に書いておきたい。クリントン政権以後のこともいくつかある。
まず現時点での問題として、アメリカとパレスチナ国(自治政府)の間に公式の外交関係がないということである。これは2018年にトランプ政権が大使館をイェルサレムに移転したことに抗議してパレスチナが中米代表部を閉鎖したことに起因する。そしてバイデン政権もイェルサレムがイスラエルの首都であり大使館を置き続けることを確認している。このことはかなり大きな問題の火種となっているように思うが、ハマスの侵攻とイスラエルのガザ攻撃の後もアメリカによるパレスチナへの働きかけがほとんど見えてこないのはこの辺りに起因するのだろう。
アメリカはハマスをテロ組織と認定しているから直接交渉はできないわけだが、ファタハ側とコンタクトが取れれば多少の交渉はできるはずなのだけど、トランプ政権の政策をバイデン政権も引き継いだことでアメリカが状況に介入しにくいことがこの事態にも関係あるようには思う。
二つ目は西岸入植地の問題だけれども、これは1967年の第三次中東戦争(六日間戦争)ののちにイスラエルが占領した広大な地域で入植が始まったが、最終的にはシナイ半島やガザ地区での入植地は撤去されていて、今問題になっているのはヨルダン川西岸地区だけということになるが、ここに主要な問題が存在している。
国際社会の見解ではガザとともにヨルダン川西岸地区は「占領地」であり「占領地」として扱われるべきだとしているが、リクード政権成立以降は「占領地」ではなく「係争地」であると主張し、より踏み込んだ支配が可能だと主張して、実際に軍事目的以外の施設の構築や入植が行われているわけである。これは国連決議違反であることは明確なのだが、労働党のラビン首相が暗殺されて以降、労働党の勢力は振るわず、特に2001年以降はずっとリクードなどの右派政権が続いているので、主張の撤回は望みにくい状況にはなっている。
法律的には入植地の住民にはイスラエル国内法が軍法の規定で適用されるようになっていて、パレスチナ人たちには旧法、オスマン帝国時代やヨルダン支配時代の法が適用されるという仕組みになっているようだ。実際にイスラエル軍がどのような支配を行なっているかはさまざまな動画に示されているが、良い状態とは言えないだろうと思う。
西岸地区はパレスチナ政府が実権を握る地域が17%、パレスチナ政府が行政権を、イスラエル軍が警察権を握る地域が24%、イスラエルが双方とも握る地域が60%以上、というのが現状のようだ。1993年のオスロ合意ではイスラエルは占領地から暫定的に撤退した上で双方の話し合いによって決定されることになっているということだが、暗殺されたラビン首相の結んだ合意をイスラエルが遵守するつもりがどのくらいあるのかは難しいし、アメリカがどのように圧力をかけるかでどの程度履行されるかが最終的には決まるのではないかという感じではある。
三つ目はアメリカとイスラエルの同盟関係についてだけれども、アメリカにとっての法的にはMNNA(主要な非NATO同盟国)という扱いで、パパブッシュ時代の1989年に指定されている。1989年にこの枠組みができてこの年のうちに指定されたのはオーストラリア、日本、韓国とイスラエル、エジプトである。
これらの国々の位置付けは一見してばらつきはあるわけで、同じくアングロ系国家であるオーストラリアは自然だが、東アジアの対中防衛的意味合いの日韓、唯一イスラエルと平和条約を結んだイスラム国家であるエジプトが加えられているのはかなりの政治的意味合いがあるだろう。これらの国々でアメリカが継続的に軍事・経済援助を行なっているのはイスラエルだけで、やはりイスラエルは特殊だと思う。
四つ目は1975年の国連総会決議3379号の、Determines that Zionism is a form of racism and racial discrimination.すなわち「シオニズムは人種差別、人種差別の一形態であると断定する」という内容である。この内容はソ連が強い影響力を持っていた時代の産物で、特に南アフリカの人種隔離政策と並んでシオニズムが批判されていたわけである。これは湾岸戦争を好機と見たアメリカ側がイスラエルに譲歩を迫った際にイスラエル側がこの撤回がない限り話し合いには応じないとして勝ち取ったという経緯があった。「シオニズムはレイシズムである」というのは今でもアラブ側が主張する内容であるわけだが、国連総会決議までされていたということは把握していなかった。
五つ目は、イスラエルとアメリカの関係が今のように強固な関係になったのはいつかという問題なのだけど、フォード政権とレーガン政権の対比が興味深い。フォード政権下ではシナイ半島の撤退をめぐってイスラエルと対立し、「米国のさ世界的な利益を複雑にしている」ので「イスラエルとの関係を再評価する」と述べ、イスラエルの武器の輸送が停止されるなどしている。
これは「再評価の危機」と呼ばれているようで、下のリンクからそのさいの生々しいやりとりなども見ることができる。
https://is.muni.cz/el/1423/podzim2016/MVZ244/65255305/MVZ244_3.pdf
続くカーター政権では中東和平のプロセスが進み、1978年にラビンとサダトにノーベル平和賞が贈られたわけだが、1979年にエジプトとイスラエルの平和条約が結ばれた。ベギンのリクード政権でこのような条約が結ばれたことは画期的のように見えるが、労働党の長期政権の直後で外交経験の不足などもあったのかもしれないとは思った。
次のレーガン政権では1981年に「戦略協力協定」が結ばれ、これが永続的なアメリカ・イスラエル関係の基礎になっているように思う。これはあまり重視されていない感じなのだけど、「大統領によってイスラエルとの関係が変化する」時期から、「政権がかわってもイスラエルとの関係はかなりの部分で変わらない」時期への移行が起こったように思う。
ケネディ政権はイスラエルとの関係強化に踏み込んだが、核開発については強い態度で止めようとした。しかしそれも徐々に骨抜きにされていき、第四次中東戦争の初期のイスラエルに危機が迫っていた時期にはゴルダ・メイア首相はエジプトとシリアに対し核ミサイルを組み立てるように指示した、という記述もある。フォード政権では強くイスラエルを牽制し、カーター政権ではイスラエルとの関係以上に「中東和平」に舵を切っているわけだが、レーガン政権になると再びイスラエルとの関係強化に乗り出しているという感じがする。こうした歴史的経緯を見ていくことで、アメリカとイスラエルの関係性の本質はより見えてくるところはあるだろうと思うし、イスラエル国家というものやアメリカ国家というものの性質もまた見えてくるところはあるのだろうと思う。
長くなったが、今朝はこんなところで。
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