参議院東京選挙区を例に、戦後からの女性の政治進出について考えてみる
Posted at 24/07/10 PermaLink» Tweet
7月10日(水)曇り
昨日は午前中松本に出かけて体を見てもらう。自分が気になっていたことよりも、「汗をかけなくなっているのは体が湿気に負けているから」というのを聞いて、そうかなるほどと思った。全体的な不調というのは暑さというより湿気によるものなのだなと。汗をかかないなとは思っていたけど、「湿気に負けているから」と言われるとそうかあと思う。湿気に勝てるように、しっかり頭も体も動かしたい。
帰りに丸善によって本を見てきたが、とりあえず欲しいものはなかったので買わずに帰った。読むものの焦点がもう少し絞れてくると読みたい本も出てくるとは思うのだが、とりあえずはその時に関心のあるものを読む感じにはなっている。
***
都知事選で、現職の小池百合子都知事が290万票を取って三選され、3位にも立憲民主党を離党した蓮舫元議員が120万票を取って入ったということで、女性の政治進出ということについて書いてみたい。
日本において女性の参政権が認められたのは昭和20年だが、憲法改正が施行され貴族院が参議院になったのは昭和22年で、当初から比較的女性議員が多かった参議院東京選挙区を例に考えてみたいと思う。
戦時中は多くの男性が出征したため労働力不足が起こり、女性の社会進出が進んだわけだが、その影響もあり戦後しばらくは「婦人参政権の時代」と言える女性の政治進出が盛んに行われた時代だった。
参議院議員東京選挙区では、1947年の第一回通常選挙で3年任期の議員として深川タマヱ(のちの自民党婦人部長)が当選したのを皮切りに、婦人運動家として著名な市川房枝が1953年の第3回選挙で当選し、第5回総選挙では創価学会婦人部長の柏原ヤスと二人で当選している。
「虎に翼」のモデルになった三淵嘉子は1914年生まれだが、深川は1903年、市川は1893年、柏原は1917年生まれ。三淵は明治大学卒だが、深川は九州帝国大学卒、市川は愛知県女子師範学校、柏原は東京女子高等師範学校というそれぞれ戦前生まれの女子としては燦然と輝く学歴である。深川についてはよく調べられなかったが、市川は平塚らいてうらと婦人運動に従事し、戦前の翼賛体制にも加わっていたため、戦後は女性で初の公職追放処分を受けている。柏原は池田大作「人間革命」にも出てくる人物で、作中では「清原かつ」という名で出てくるのだそうだ。創価学会の戦後の再建にも大きな役割を果たした人のようである。
そういうわけで東京選挙区では1947年からずっと女性議員がいたわけだが、1971年に市川房枝が全国区に転出して女性議員はいなくなった。
上記のように、この時代の女性政治家は実力があるというか、深川は九州大学法学部、柏原は東京女高師出身で、婦人運動を引っ張った人たちという印象がある。むしろ、石油ショック直前の1971年からバブル前の1986年まで東京選挙区では女性がいなくて、この時期が一番女性が政治から遠ざかっていた時期と言えるのかもしれないという印象を受けた。私が小学校から大学を出るくらいまでの時期で、この時期を若いうちに過ごした人たちには「女性の政治進出は閉ざされている」という印象を持つのはまあ、ある程度妥当だろうなと思う。
その後は1986年に自民党から小野清子、1992年に公明党から浜四津敏子、1998年に日本共産党から井上美代、2004年に民主党から蓮舫が当選し、現在につながる感じになってくる。
ただ、80年代から90年代は女性議員は「マドンナ」という扱いだった。土井たか子などにしても「マドンナ旋風」という感じで、「女性議員は、特に浮動票が多い東京や全国区(比例区)では票が取れるから、女性も出しとけ」という雰囲気で出されていた印象がある。
だからこうやって並べてみると、2004年の蓮舫の当選は新しい時代の始まりだった印象がある。小泉ワンフレーズポリティクスの時代、チルドレンの時代と言えばいいか。2007年に大河原・丸川が、2010年には蓮舫・竹谷が当選し、一挙に東京選挙区は10人中4人が女性になった。
今では女性議員・女性首長は当たり前という感じになってきたが、やはりこれは2010年以降の現象と言っていいだろう。その分、市川房枝などのような筋金入りのバックボーンを持った政治家に比べると小粒な印象が強くなっているが、これは男性議員も同様に小粒化していると思うし、力量や度量よりも見栄えが評価されるようになった時代ということもあるだろうとは思う。現代では正直言って、変な男性議員を出すよりは女性が出たほうが当選しやすい雰囲気の地域も多い。特に都市部ではそうだ。
ただ、女性政治家ではやはり1992年に日本新党から参院比例区で当選した小池百合子が現代に続く流れを作っていると思う。高市早苗も1993年当選で無所属から新進党を経て自民党入りしているので小池とよく似ている。その後自民党に残ったか飛び出したかの違いはあるのだが。
また、女性議員や女性首長が増えている一つの原因としては、昔は二世と言えば男性だったのだが、最近は女性が世襲政治家として出てくることが増えているからというのもあると思う。国会議員では野田聖子議員もそうだし、鈴木貴子議員、小渕優子議員などが例に挙げられる。
東京江東区で先に辞職した木村弥生区長は衆院議員の娘であり、長野県諏訪市の金子ゆかり市長も県会議員の娘である。そういう例は他にも多くあるだろう。
現代のフェミニストは基本左翼なので保守系の女性政治家を評価しない傾向が強いのだが、そういう理解は党派的に過ぎてフェミニズムの本来の目標とは外れてしまっているように思う。現在でも小池都知事が三選され、蓮舫元議員が3位に沈んだのは女性差別の現れだという見当違いの言説があるが、小池さんがどのようにして現在の地位を築き上げたのか、その底力を評価できなければ女性政治家の未来は開けてこないように思う。
世界的にみても、サッチャーやメルケル、メローニと言った大国でトップを張った(張っている)女性政治家はみな保守系である。リベラル系であと一歩まで行った人としてはアメリカのヒラリー・クリントンがいるが、彼女ももちろん純粋な左翼リベラルというには語弊があるだろう。彼女らがなぜ強く、左翼リベラル系の女性政治家がなぜトップを張れないできているのかについては、ミソジニーという結論に逃げるのではなく、真摯に検討してみても良いのではないかと思う。
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