安倍元総理の三回忌と日本の政治の低迷/右も左も逝ってよし:小池知事の勝利と自民と立憲の惨敗/政治とは戦い続けること/健全な社会批判で日本を強くする
Posted at 24/07/08 PermaLink» Tweet
7月8日(月)曇り
今日は安倍元首相の三回忌。あれからもう2年経ったけれども、日本の政治状況は混乱の度を深めているということは昨日投開票が行われた東京都知事選、都議補選の結果を見ても明らかだなと思う。安倍さんがいたらもっと中心軸がはっきりしていたから、右も左も図式通りの動きがもっとあったはずだが、リベラルな岸田首相では対立軸があまり作れず、保守=旧安倍派系は政治資金問題でガタガタで、かたや左翼陣営は蓮舫候補を担いだものの、ぽっと出の石丸候補にも敗れて「2位もダメなんですか」に終わった。惨敗と言えるだろう。
その隙を縫って勝利したのが小池都知事と都民ファースト。290万票は彼女の得票としては初当選の時とほぼ同じ。4年前のコロナ禍下の選挙では保守の有力候補が出なかったこともあって360万の大量得票だった。今回は石丸候補が165万票、蓮舫候補が128万票と有力候補が二人も100万以上の得票を取る中で290万票取れたのは、投票率が上がって近年にない大台に乗った60%ということもあり、ある意味関心の高い選挙戦の中で蓮舫候補にだけは当選させたくないという層がかなりあったのではないかと思われる。
ほぼ同時に進行していたイギリス総選挙では労働党が勝利したがこれは保守党政権への批判票と思われるし、フランスでは右派の国民連合に対してマクロンの政権与党と左派連合が選挙協定を結んで候補者を一本化するなどしたのが功を奏して国民連合を押さえ込むことができた。そういう意味ではフランスでは伝統的に「左バネ」が効きやすい国であり、そういう意味ではやはりフランスはエリートの国だなと思うのだが、(イギリスは任期を務めたら労働党政治家でも叙爵されることもあり、やはり貴族の国だろう)今回の選挙戦では「緑バネ」が働いた(緑は小池知事のシンボルカラー、環境政党ではない)という感がある。
同時に行われた都議補選の結果では、9選挙区のうち無所属が三人、小池与党の都民ファーストが三人、自民が二人、立憲民主が一人ということで、自民も立憲民主も惨敗であり、こちらでもやはり勝者は小池さんだったように思う。
小池戦は選挙戦を離島から始めるなど、選挙巧者ぶりを遺憾無く発揮した。蓮舫候補の出馬で危機感はあったはずだが、結局は共産党の支援や活動家のあばれぶり、事前運動やなりふり構わない活動家の恫喝などが各所で見られ、江東区の衆院補選では被害者ぶっていた立憲系の候補陣営が似たようなことをやっていたということも有権者に嫌われたということだろう。
印象的なのは、小池候補が女性の支持が多かったこと、これは蓮舫候補が嫌われたということでもあるだろう。女性を必要以上に強調する選挙戦は、女性に嫌われるということだろう。また年齢別では40代50代からの支持が蓮舫候補は極端に低い。就職氷河期世代の民主党政権に対する恨みのようなものは相当根強いのだなと思う。
注目候補で言えば、石丸候補がもちろん最注目だろうが、安芸高田市長を任期満了前に投げ出して都知事選に出馬したかと思ったら、今後は広島での衆院立候補を言い出すなど節操がなさすぎる。彼に投票した人たちにはいい面の皮だろう。若いうちはともかく歳をとってからは仁義を通さないことは嫌われるから、先は伸び悩むのではないかと思う。国会議員になっても節操なく離党と入党を繰り返すような議員になりかねない。
また一部で注目されていた安野候補だが、まだ生硬というか青い感じが強く、この先の政治活動の中で揉まれていけばもっと地に足がついたような政策を提言できるようになる可能性はあると思う。特に奥さんの演説は出色だったので、政治家に大事なものを一つ持っているわけだから、大化けする可能性はなくはない。自民党は石丸候補を取り込んだりせず、取り込むなら安野候補だろうと思う。本人がどう判断するかは別として。
もう一人の注目候補はひまそらあかね候補だが、11万票を獲得した。順位で言えば7位だが、より政治活動歴の長い右派の櫻井候補やドクター中松、知名度の高い清水国明などより上にいるわけで、ポスターや政見放送などに参加してネットを見ないそうにアプローチしていたらもっと得票できたのではないかと思う。ネットの影響が強いと思われる期日前投票では5位だったので、まだ政治をやる気があるなら次回はもっと戦略を練って望んでもらえれば良いと思う。誰にでも喧嘩を売るスタイルはどうかとは思うが、いわゆる「公金チューチュー」問題での功績は誰にも否定できない(そこで利益を得ている人たち以外には)ので、新たな活動スタイルを模索する意味はあると思う。
江東区の都議補選では三戸候補が当選したが、彼女は区長選や衆院補選など何度もチャレンジしていて、都議補選に絞り込んだ自民党で元都議・元区長の息子の山崎候補に競り勝った。江東区ではこの1年あまり、幾つも選挙が続いていて、何度落ちてもトライしてきた候補が結局は結果を拾ってきていて、ある意味政治というものの本質は「戦い続けること」にあるという感じはあった。それは暇空さんにもある意味通じている。
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私自身はいろいろ考えた結果、結局小池さんに期日前投票で投票したのだが、正解はなんだったのかはよくわからない。結局は、「大きくは変わらない」ことを選択した、ということなんだけど、都内の人口は1400万人を超え、一方で合計特殊出生率は0.99。オリンピックも終わって大きなイベントはないし、じっくり都政を立て直していくべき時期だろう。年齢的に考えて小池さんも今度が最後だと思うし、成果らしい成果を残すには良い時期だと思う。
暇空さんの提起した「公金チューチュー問題」、別の方は「左翼泥棒利権」と呼んでいたが、そういう問題もあるし、安野さんのやや生硬ではあるが一定の支持を集めた提言なども取り込んで、暮らしやすい都政を目指していってほしいと思う。
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世界的に見て、昨日私はポリコレリベラリズムから国民国家主義的な近代主義への回帰が強まっている、ということを書いたけれども、英仏の選挙結果や都知事選などの結果を見ても「まともな近代的統治」の復活が世界的に望まれていることに違いはないのではないかと思う。「右も左も逝ってよし」なのである。「まともな近代的統治」が左から見て極右に見えるという現象が起こっているだけなのだろう。日本も同じである。
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蓮舫候補の惨敗について、「日本では政治批判は盛んだが社会批判が行われない、だから自分自身を批判しようとしない問題がある」というような指摘があった。
これはそのまま、蓮舫候補とその陣営に当てはまるのは確かなので完全にブーメランだとは思う。
ただ、日本では社会を批判する人たちは一般大衆、例えば小池さんや自民党に投票する人たちを「愚民」扱いして平気だし、自己批判を迫るような人たちは宗教の勧誘か運動のオルグと相場が決まっている。そんなものに洗脳されないからといって愚民扱いするのは明らかに社会が見えていないわけで、立ち枯れていくのも無理はないという感じはする。
社会批判というのは本来、左派の立場からだけではなく右派の立場からもなされるべきものであって、石原慎太郎や福田恒存なども常々社会の現状を嘆いていた。それは渡部昇一や西尾幹二、西部邁などの人たちも同様であって、現代の右派思想家は逆に言えばそうした社会批判の言説をしないから、右派思想もまた力を持ち得ないというところはあるように思う。
ただ、江藤淳も西部邁も自殺してしまったし、渡部昇一は末期にはスピリチュアルがちょっと入っていたし、石原慎太郎も亡くなる前にはかなり虚無的な発言もしていたので、右派にとっても現代日本の社会を的確に批判するのは困難なのだろうと思う。
ただ、政治的な批判だけでなくある意味健全な社会批判がなければ思想が思想として成り立たないことは確かなので、これからもそれは必要なのだろう。ただ、一人一人の「好き」が重視され、「人への攻撃」が嫌われ、「ポジティブなワード」のみが求められ、ネガティブな評価はそれ自体が否定的に見られる現代において、健全な批判が成り立つ余地はなかなか狭いとは思う。左派はそういう世相自体を批判するわけだが、それをやったらますます嫌われるだけである。
我々の社会の中にある肯定すべき、大事にすべき「価値」を的確に救い出し、それを実現するにはどうしたらいいかを考えていく思想がまずは必要だろう。社会を考える思想は、理想があっていい。政治を考えるためには現実面を無視できないから妥協が必要だが。左翼はそれを混同しがちだから余計ひどいことになる。
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世界のポリコレリベラルに対する反発というのは、アメリカ民主党的なキラキラリベラル、エリートによるリベラル寡頭制に対する反発なわけで、これは重要な論点ではあるのだが、日本の社会と政治の弱さからアメリカの風土病のような正義病に冒されやすいという問題はある。そういう意味では、社会を批判していくとしたらそういう観点が必要だろう。社会を強くすることによって政治も強くなる。そのための批判はやはり必要だと思う。良いところを伸ばすのは大事だが、甘やかされてスポイルされた子供がダメになるのと同じである。
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