人文学は何の役に立つのか/対アメリカ戦争は偶発的な要素が大きいのではないか/日本の再生は人文学の再生から始まるのではないか/疲労の蓄積
Posted at 24/06/18 PermaLink» Tweet
6月18日(火)雨
一昨日は姪とその婚約者が来て母と私との顔合わせがあった。夜は上の妹が泊まり、夕食を作ってくれ、昨日の午前中は妹の話など聞いたりした後、お昼ご飯を食べた後、銀行で通帳を記帳しツタヤへ行って「EDENS ZERO」32巻と「不滅のあなたへ」22巻を買いに行き、帰って少し横になっていたら疲れが出たのか起き上がれなくなってしまい、7時ごろまでうとうとした後ベッドに横になったら目が覚めたら11時だった。少しは夕食を食べたほうがいいかと軽くご飯と妹が作ってくれた味噌汁と野菜炒めを食べ、そのままちゃんと寝て起きたら4時だった。
電気代等の支払いを忘れていたのでセブンイレブンに車を走らせて支払ってコーヒーを買い、帰りに妹がLINEで送ってくれたカフェの住所の道を通ってみたのだが、見つけられなかった。
人が来るというのは今の自分にとってそれなりに大きい行事なので普段の生活に比べるとペースがかなり変わる。今日はまずそれを取り戻そうと思っているのだが、あいにくの雨と肌寒さ。午前中に弔問に行く用事ができたため、雨の中礼服で出かけることになるが、他の用事もちょいちょいあるので礼服でそういうところに顔を出すことになるのもまあ仕方ないけどアレだなとは思う。
***
人文学は何の役に立つかという話で、さまざまな国家プロジェクトで対象の国を人文学的に調査するというのが一つの使命になっているということはあるだろう。
その話の中で、多くの文系大学卒業生が満鉄調査部や東亜同文書院などに入って中国の調査をした例が上がっているが、同じようなことはアメリカではなされていないことは考えてみるとちょっと不思議である。
ただ、実際のところ昭和初年においていずれアメリカと戦争することになると考えていたのは当然ながらごく少数の人であり、「最終戦争論」を唱えた石原莞爾などのかなり空想的な次元での議論に過ぎず、「日米もし戦わば」のような雑誌企画もあったことは確かだが、真剣に考えているという次元ではなかったように思う。
経済効率的に考えても、陸軍や海軍にとっての生命線である石油の最大の供給先であるアメリカと戦争するというのはまずあり得ないことで、そうした人文系サイドでの戦争準備は全くなされていなかったと考えるのが妥当だろうと思う。そのようなこと考えるとやはり日本はもともとアメリカと戦争する意思はなく、さまざまな偶然が重なった偶発的なものだと考えるべきなのだろうと思った。
日本という国は、日露戦争の前には明石元二郎などが盛んに対露工作を行い、国内反乱誘発を図って血の日曜日事件などのいわゆる1905年革命を引き起こすなど、いわばハイブリッド戦を当時からやっている。常に国際世論を自らの味方につけるように工夫をしていたし、石原莞爾らの独断で始まった対中戦争においても先に述べたような相手国の研究は盛んに行われていた。
それに比べてアメリカを研究した形跡はほとんどない(まあ外務大臣だった松岡洋右がそういうものを握りつぶした恐れもなくはないが)し、不戦条約違反である満洲事変を引き起こしてしまったために難しくなったとはいえ対日世論工作やそのための研究はやるべきだっただろうけど、その点において全く中国国民党政権の蒋介石・宋美齢夫婦には遅れをとり、当時はドイツもついていたので南京事件のフレームアップ化などかなり遅れをとったことは否めない。
もう一方では人文学というものは芸術と同様学問は国家の権威を荘厳するものという側面があり、法や経済などの実学を除けば日本国家の文化的勢威を示すためという意図が大きかったのだろう。ただ欧米諸国の蓄積に比べて日本の人文系学問の評価されるレベルは戦前ではそのレベルに達していたのは和漢の学、仏教学くらいだったと思われる。
日本の歴史研究においても、追いつき追い越すべき対象であるヨーロッパの歴史や、先達であり超克し進出するべき対象である中国の研究は早くから進んだが、アメリカは不思議なくらい研究対象になっておらず、ある意味学問研究のエアポケットになっていた。これは敗戦後もおそらくこれは戦後かなりの時期までそうだったと思う。何故そうだったのかということが分析すべき対象である気がする。
現在、日本の外国研究の地域的網羅性はイギリス・アメリカに次いで世界第3位だという話があり、逆にいえばこれは日本の人文学研究のポテンシャルの高さを示していることは明らかだ。この3位という事実は、割合私の実感にもあっていて、米英を含めて外国の一般人は驚くほど世界のことについて無知だというのは外国に行ったことのある人で感じたことのある人は多いと思うが、アフリカ・ラテンアメリカ・オセアニアなど植民地支配を行っていた西欧諸国に比べて立ち遅れている分野があることは確かだが、広範な研究成果が岩波講座世界の歴史などの一般に対する出版物として発表されていて、ネットでもそれなりに日本語で読める情報が出てくる。
もちろんイスラエルの教育政策やウクライナ語の普及状況など、戦争が起こってみて初めて一般が理解するようなことも少なくはないけれども、それなりの数の人たちが各国の状況に対してそれなりに人文学的理解を持っているということはTwitterを読んでいても感じられるところだと思う。
ただ人文学に対してはwoke的な理解というかポリコレ警察みたいな学者が一定数いて、欧米リベラル思想の精神的植民地化が進んでいるところから人文学は嫌われてきたところがあるわけだけど、そういうものを捨象した部分では人文学の価値というのは大きなものがあることは押さえておきたいと思う。
結局のところ、戦争が始まった後も日本をしっかり研究してそれを戦争遂行や戦後の占領政策に生かしたアメリカ(ベネディクトの「菊と刀」や戦後の日本文化とも深く関わったキーンなど)に対して、やはり日本は準備が足りなかった、極端な言い方をすれば「アメリカを舐めていた」ことは確かだと思う。国力差があり、研究も足りていない相手と戦うというのはやはり無謀だとしか言いようがなく、満州事変以降の陸軍の一部の独走というものがいかに禍根を残したかは反省すべき点が多いだろうとは思った。
外交や軍事関係でも難しい時代に入り、ロシア・中国・アメリカ・インド・イスラエルその他、付き合い方が難しい国は多いわけで、それらの国との付き合い方の中で下手に生殺与奪の権を他国に渡すことなく、主張すべきは主張し得るべきものは得ていくために、日本の人文学の果たすべき役割は大きいと思う。
本来科研費を含めた競争的資金はそうした分野に重点的に配分されていくべきだと思うのだが、リベラルの利権化した研究費配分権はその元から見直すべきところはあるだろう。
日本の再生は人文学から、ということはおそらくあるので、変なアファーマティブアクション的なことはさっさとやめて男女を問わず優秀な人材が日本の国益を意識した研究をしていけるような環境を整えていくべきではないかと思う。
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