日本酒の美味しい店で飲む/「セクシー田中さん 調査報告書」を読んでいる:私はこれを「天才を潰してしまった罪の告白」として読んでいる/「ふつうの軽音部」:主人公と周りの人たちのダイナミズムが快い
Posted at 24/06/02 PermaLink» Tweet
6月2日(日)雨
昨日は朝、夕食の買い物をしに行って帰りにクリーニング屋でシャツを出して受け取って、お昼を食べて夕食の準備だけして出かけた。仕事は必要なことは一応ちゃんとやったという感じ。とにかく回り始めたサイクルをしっかり回していくことが大事だなと思ってやっている。
夕方帰ろうとしている時に友人から電話があって飲みにいくことになり、夕食の準備があるから少しだけ、ということで、とりあえず家に車を置きに帰ってから歩いて街に行ったのだが、やはり少しだけで収まるはずはなく、2時間半くらい結構本格的に飲んだ。最初はカウンターの小さい店に行こうと言っててのだが満席だったので違う店に行った。日本酒が美味しい店で、何種類もおかわりしてしまい、ついつい話が弾むのでなかなか切り上げられないといういつものパターン。最後に「じゃあビールで締めるか」ということになり注文するのかと思ったら店を変えるということで、地ビールを扱っている店まで歩く。いやなんというか、地元の商店街もシャッター通り的になっているのだけど、結構飲み屋は新しい店も増えていて、なんだかよくわからないけど盛っているような感じもし、不思議な感じだなと思った。
帰ってから夕食の用意を少し食べたが、思ったより酔っていてあまり食べられなかった。手元のレシートを見たら日本酒は3種類(水尾、夜明け前、豊香、どれも長野県の酒)コップ一杯ずつであとは地ビール一杯なのだが、考えてみたら四合瓶一本あけたくらいの感じだから割と飲んでると言えば飲んだんだなと思った。
***
https://www.ntv.co.jp/info/pressrelease/pdf/20240531-2.pdf
時間のある時に「セクシー田中さん 調査報告書」を読む。まだ全部は読んでないが、出来事の全容は自分なりに理解できてきた。
なんというか、ここで引用されている芦原妃名子さんからのコメントの内容や編集者を通してのドラマ制作サイドへの苦情などを読んでいて、要するにつまりこの人は天才なんだな、ということが理解できた。そして、その天才を編集者も制作サイドもみんな扱いかねていて、結局「天才を潰してしまった」という「罪の告白」のような内容だと私は受け取った。
そういう意味でこの報告書は真摯に書かれていると思うし、もちろんテレビ局側の責任逃れみたいな文言はあるのだけど、「じゃあどうしたらよかったんですか」という叫びのようなものも感じた。
世の中には天才と言われる人たちがいて、その人にしか表現できない世界というのが確かにある。それは、その人にしか理解できない世界があるからで、天才は常にそれが理解されないことに苛立ちと絶望を感じている、という面がある。
報告書を読んでいると、芦原さんにはこの「セクシー田中さん」の作品世界に確固としたルールがあるのだけど言語化は難しいということがあり、芦原さんとしては制作側・脚本側がそれが理解できないなら、「原作を一切変えずに脚本化してくれ」と主張しているわけである。
そしてその世界とそのルールはおそらく間に立つ編集者にも理解できていない。だから伝言ゲームで葦原さんの意思を伝えようとしても伝えられないから、時に芦原さんの表現をそのまま伝えて理解してもらおうとするが、それは普通に脚本家が読んだら罵詈雑言としか受け取れない内容であったりもするわけで、これは商業ベースの制作サイドとしてはかなり厳しいと思った。
芦原さんが脚本に厳しい非難の言葉をぶつけるのは天才的な映画監督がいつも不機嫌であることとか、演出家の蜷川幸雄が意図を汲み取れない下手な演技をする役者に灰皿を投げつけたみたいなことと本質的には同じで、「理解されないことへの苛立ち」に過ぎないのだろうと思う。
しかし結局、そうした「天才の世界」をドラマ化し商業に乗せようとしたのはテレビの制作サイドなのだから、それをなんとか実現するのはテレビ側の責任になってしまっていたわけだけど、芦原さんとしては「ドラマにしやすいように前後関係を変えたり設定をいじる」ということで表現したいことの繊細な部分が破壊されていることに我慢ならなかったわけで、そういう原作側と制作側の齟齬が解決されないままそれを汲んでドラマの脚本にしろというのは、脚本家にとってももともと無理ゲーだったのだろうと思った。
この報告書を途中まで読んだ時点では「直接原作者と脚本家が話し合えばいいのに」とずっと思っていたのだが、報告書によると編集者が芦原さんに「直接脚本家に会って伝えるか」と聞くと、芦原さんは「実際に脚本家に会うと言いたいことがはっきり伝えられなくなるから会いたくない」と答えたという。逆に言えばメール等なら言いたいことが言えるからその形で進めたい、ということと解釈していいのだろうと思うが、そうなると制作サイドとしては「難しい人」という印象になるというのは避けられないかなあとは思った。
このあたりは芦原さんは亡くなっているので確かめようがないのだけど、少女マンガ家が変わった人が多いというテーマのマンガは最近いくつか読んでいる(「編集の一生」「箱庭モンスター」など)ので、そういう面はあったのではないかなとは思った。
しかし、そういう特別な繊細さを持った人をテレビドラマ制作のような集団制作の場に引っ張り出すのはもともとかなり冒険だったんじゃないかという気はする。そうした危惧は編集者の側にはなかったのかということは感じた。
報告書を読んだ限りでは「ドラマオリジナル部分は芦原さんが脚本を直接書く可能性がある」というかなり重大なことに対する認識が日本テレビ側と小学館側で異なっていて、結局はそこが一番問題になったのではないかと思う。
結局実際に最終的に芦原さんが書いたため、脚本家のSNSでの愚痴発言が出てきた。これが炎上したあたりから騒動になったわけで、どうも編集サイドも制作サイドも芦原さんの「主張の強さ」を軽く見ていた感がある。
これもいろいろ読んだ話ではあるのだけど、例えば竹宮惠子さんや萩尾望都さんなどの大御所の人には、彼女らをサポートしてくれる古くからの友人的であり、かつマネージャー的な存在がいて、問題のある話はそこで弾かれる、みたいなことがあるように思った。
一番典型的で理想的なのは、天才である宮崎駿さんと高畑勲さんのアニメ制作を製作面から支え続けて世界的な存在にした鈴木敏夫さんの存在だろう。宮崎さんもドキュメンタリーなどや鈴木さんの著書などを読んでいると常に天才であるが故の苛立ちみたいなものに常に突き動かされているわけで、それを現実サイドにおいて最高の表現を可能にするようにプロモートしマネージしていく鈴木さんの手腕はこれまた一つの天才としか言いようがなく、高畑さんや宮崎さんも鈴木さんのいうことなら、で納得する部分もあるし、例え強い言葉で批判しても絶対的な信頼関係が成り立っている、という雰囲気を常に持ち続けさせているように感じた。
もちろんそこには綺麗事だけでなく、スタジオジブリに勤めた経験のある人から漏れでくるような情報においては、特にスタッフたちにとっては厳しい場面も少なからずあったようで、それを綺麗事だけを映しているドキュメンタリーを批判していたりもするのだけど、まあそれはそうだろうなと思う。鈴木さんは、宮崎さんや高畑さんの才能をアニメ映画作品に結実させることだけが他のこととは隔絶した絶対的な使命にしていたわけで(というかそうとしか思えない)、周りから見たら文句も言いたくなることはあっただろうと思う。
そしてその鈴木さんがあってしさえ、製作費が爆発的に膨らんだり公開予定が10年以上ずれたりなんてことは全然普通にあったわけで、天才と付き合うということは現実的にはそういう問題であるわけである。
実際、芦原妃名子さんの周りにどういう人たちがいてどのように彼女と付き合っていたのかはわからないし、またそれがうまく行ってなかったことを匂わせている人もいてちょっとそういうのを自慢げにいうのもなんだかなあという感じはあるのだが、「鈴木さんのような圧倒的にデキる存在がいなかった」ことだけは確かなんだろうと思う。
というか、日本の環境というのは、天才は輩出するのだと思う、特に表現の分野においては。日本にジョブズが現れないというが、ジョブズのような煌めく才能は、実際には日本にも少なくはないと思う。しかし圧倒的に足りないのは鈴木さんのような献身的で絶対的力量を持つプロデューサーだと思う。というかおそらくそれは世界的に見ても実際にはそうなんだろうと思う。
まあ細かい問題点というのは報告書をさらに読めばいろいろ出てくるとは思うのだけど、本質的な問題としては芦原さんという天才の作品をメディアミックスという形でプロデュースするに足る力を持った人たちが関係者の中に残念ながらいなかったということなのだと思う。
日本テレビ側を擁護する人たちは「誰も悪くなかった」みたいなことを言う人が多いが、そんなことはないと思う。力不足なのに天才の作品を扱おうとしたそのこと自体が結局は罪だったと言うしかない。芦原さんをどんな形でも納得させられる力が編集者や製作側や脚本家にあったら、こうしたことは起こらなかっただろう。これは齟齬とか話し合いの技術的に解決可能なレベルの問題では、本質的にはない。
どうしたらよかったのか、と言うことで言えば、やはりセリフは一字一句変えず、設定も場面の順番も絶対にいじらず、ドラマ化の都合は取り敢えず無視して原作世界を成り立たせることに徹底するしかなかったのだと思う。で、生身の人間がそれをやるのは結構厳しいだろうと言うのはわかる。
ただだからこそマンガ作品のファンにとっては、アニメ化も割と怖いことではあるけれども実写化は地雷である、と言う認識が広がっているわけである。私も好きな原作の作品のアニメは一応録画はするが怖くて見られない、と言うものが結構多い。ましてや実写化などは見る気がすることはほとんどない。(「進撃の巨人」で懲りた部分は大きい)
ただ最近は、アニメ化の際に原作世界に本当に忠実に映像化することが行われることが多く、原作をさらに掘り下げる形でアニメのオリジナリティを出す、というさらに作品世界を広げる方向で映像化が行われているのは大変ありがたい。「葬送のフリーレン」は先にアニメから入ったのだが、後で原作を全て読んでみると原作世界よりもさらに一歩進んだと思える描写が多いことがわかるし、同じ日テレのマンガ作品の映像化でどうしてこう言う違いが起こったのかとさえ思う。
どうすればよかったのか、と言うことが自分の意見として言えるとしたら、基本的に同じ方向で実写化もやると言うしかなかったのではないか、と私は思うのだが、それは無理だ、と言うなら実写化はやめたほうがよかった、としか言えないなと言う感じである。
芦原妃名子さんのご冥福を、改めて心から祈りたい。本当に惜しい才能をあたら亡くしてしまったと思う。
***
https://shonenjumpplus.com/episode/17106371864158263274
今日は日曜日で「ふつうの軽音部」の更新日なのだが、朝から十回くらい読み直していて、その度に感動している。感動し過ぎて何も言えねえ・・・(北島康介並感)と言う感じなのだが、水尾くんがわかってないのにバイト代わってくれて「その代わり弾き語り聞かせてくれ」と言ってくれたり、藤井さんが「永井公園なんて行くわけないやろ・・・」と思いながらまっすぐ公園に向かったり、こどおじさんとアメちゃんのおばあさんが待っていてくれたり、はとっちが無自覚にみんなを動かしてはいるのだけど、みんなもはとっちを支える展開が描かれていて、本当に感動しかないと言う感じである。
まあオタクの早口みたいになったが、今朝はじっくり感想を書く時間がないのでまた改めて書きたいと思う。
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