お金をやりくりすることと日本政治の方向性
Posted at 24/04/21 PermaLink» Tweet
4月21日(日)曇り
最近必要に迫られてお金のやりくりに結構時間がかかっているのだが、こういうことをやっているとお金に対する考え方のようなものが少しはわかってくる感じがある。理屈としては知っていても自分が当事者としてお金を扱わないとわからないことというのは結構あって、そういうことをやっていると財務官僚とかがどう考えてこういうアドバルーンをあげたのかとか、そういうことも少しは類推できるようになるということはあるなと思った。
お金を使う目的は福祉的(会計的に言えば消費的)なものと投資的なもの、まあ後は経費(官僚機構の人件費やインフラを維持する管理費など)があると思うけれども、国家の場合は外交の費用などのある意味での交際費、防衛費などのある種のインフラの維持費もある。自衛隊が災害救助や復興支援に動くのもインフラの維持という意味では同じ目的だなと思ったりする。
経済が成長している時代はいろいろなものがいっぺんに必要になってインフラ投資が盛んに行われる。新幹線や高速道路網の整備、空港や港湾の整備、公共施設その他に莫大な国家規模の投資が行われ、税収が好調で国債発行も低利で行えれば問題なく財政は動いていくから、将来の投資や福祉に関しても基本的になんとかなる感じで動くけれども、経済が停滞ないし縮小してくると税収も減り、何を選択して何をしないかが問題になってくる。福祉的なお金は将来の利得の回収を目指せるものでは基本的にはない、児童福祉や子育てに対するお金はある種の投資ではあるが、高齢者福祉などのお金は投資というよりは日本を支えてくれた人たちへの感謝という意味合いは結構あるだろう。
しかし縮小してきているとはいえ日本国家も日本社会も日本経済もこれからも続いていくのだから、基本的に将来への投資というものをケチるのは将来に禍根を残す。それが教育関係や研究関係の費用、インフラ維持・設備投資なのだが、なかなか最近はそこに十分に国家的な投資が行われず、みすみす他国に後塵を拝するような結果になりがちになっている。
福祉や医療に一定程度のお金がかかるのはやむを得ないが、国の将来を考えた支出を今以上減らすのはあまり良くない。まあそんなことは財務官僚もわかっていてやっているのだろうとは思うし、だからこそ彼らは「小役人に徹する」ことによって財政規律を維持しようとしているのだろうと思う。
国家財政が家計などと違うのは先行投資的なものを国債で賄うことで将来的に需要を創出し税収を増やすというマクロ的な政策ができることなわけだけど、財政規律がないと意味のない政策にお金をかけることになってしまう。
最終的には、何にお金をかけて何を削るかというのは政治判断なので、財務官僚はそういう意味では小役人でいいわけなのだけど、必要なときにはバンと金を出す肚は必要なわけで、小役人もいろいろ大変なことは自分でいろいろやりくりしてみてそうだろうなとわかる部分がある、という話である。
だからこそ政治家は国の将来像、特に産業的な基幹を何にしつつ今まで築いたもののうち何を守っていくのかということがこういう国家経済としての後退局面においては大事になってくるわけだけど、そういう意味での国家像を描ける教養的なものが平成の初め頃までは戦前の旧制高校的な教養主義にバックアップされていた感じがする。つまり戦前に教育を受けた人たちの恩恵は、そのくらいまではあったということである。
逆にいえば、それ以降の平成時代の長い低迷時代は、戦後教育を受けた世代が担ってきたわけで、そういう意味では戦後教育の敗北を象徴するものでもある気はする。昔の国鉄なんかめちゃくちゃだった、今の人たちは対応は丁寧でスマートだしとても良くなった、昭和に帰りたいとか全然思わない、というような言説があるけれども、それはそれで一面の事実ではあるとは思う。
ただ逆にそうした戦後民主主義的な洗練による日本国家全体の線の細さみたいなものも一方では問題になってきたのではないかなという気はする。戦後教育や戦後民主主義が失敗でなかったと証明するためには、そこで日本の国力をもう一度回復できるかということにかかっているのではないかと思うし、戦後政治の総決算というのももしそれが失敗であったならばやり直さないといけないということなわけで、それは実際には経済に大きく現れているのではないかというところはある。
そういう「改革」勢力は代表的なものは維新の会だと思うが、彼らは戦後政治を改革しようというだけではなくて明治以降の日本の歴史やそれ以前の日本の伝統まで否定的にみているところが良くない、というか保守ではなくて単なるポピュリズムに過ぎないという感じはする。民主党系は旧左翼と自民党脱党組の野合の上に松下政経塾勢力と合体したわけだが結局プリンシプルが確立できず、頑固な左翼系に引っ張られて世間の支持を失ってしまった感じである。
自民党も保守と言われてはいるけれども、戦前からの日本の政党政治の伝統の上に立っている政党であって、戦前の政党というものは板垣退助の自由党と大隈重信の立憲改進党を主なルーツとして、結局は進歩主義の立場の政党だったわけで、保守は結局今まで本当には自前の政党を持っていないのだと思う。日本の政党は結局みんな左翼だ、といった人がいるが実際そうだろう。
戦前は貴族院だとか枢密院、あるいは軍部など政党政治に対抗する勢力があったから政党自体が進歩主義であることでバランスが取れていた面があるが、戦後はそうしたものが一掃されたので進歩一強のバランスが崩れた状態にあるというべきなのだと思う。
まあそうした明治政府の諸勢力自体も、明治維新という革命によって生まれた革命政権であるわけだから、根本的な進歩性を持っていたわけである。そういう意味で、明治以来の国づくりの困難というのは、実際には今も続いているのだと思う。
私はアフリカ諸国の政治とかについて調べていると、そういう意味での民主主義的基盤が脆弱で直ぐ軍部がクーデターを起こしたり、外国勢力の影響が強かったりするのはやはり明治以降の日本の政治がいろいろとダブってくるところがあるなあと思うところがある。
民主主義的というか近代的な政治制度がほぼ自生した欧米に比べると、伝統社会と国家制度に基本的にかなりの齟齬があるのが非欧米社会であって、明治国家は伝統社会を国家統制によって縛り上げつつ伝統社会の破壊自体はほどほどだったのが、戦後国家は伝統社会そのものをかなり破壊し、人々のパトリオティズム的な回帰すべき場所をかなり破壊してしまい、生産現場から疎外された中間層というある種の根なし草的な国民が増え、教育や教養というものは本来社会の再生産的な役割も大きいのだがそこの部分が疎外されつつあるのでより社会が不安定化しているということはあるのだろうと思う。
安倍政権の時代は曲がりなりにも保守的な主張が強く、それなりの安心感があったが岸田政権は基本的にリベラルな方向に動いているので社会の維持ということに関してはかなり不安が感じられる。
まあなんというかあまりよくまとまらないが、日本国家としてのプリンシプルとか何を守るべきなのかとか日本は何を基幹産業にして国を維持していくのかとかお金をやりくりするということはそういうことに直接関わってくるのだよなということを思った、ということを書いておこうと思う。
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