ジャンプコミックスを15冊買う/批評家と実作者の間には深くて暗い河がある
Posted at 24/04/05 PermaLink» Tweet
4月5日(金)曇り
昨日は日中外でやる仕事が二つあり、雨が降らないか心配だったが無事なんとか乗り切った。夜、そろそろ寝ようかと思っていたら妹から電話があって話を聞いているうちに時間が経ち、切った時には12時を過ぎていた。まあいろいろ軌道に乗せようとはしていてきちんと動いていくといいなあという感じである。
「観察」と「没入」ということを考えていたのだが、「没入しつつ観察し味わう」みたいなことをまとめて言えば「鑑賞する」ということだなと思い、鑑賞した結果を文で表現するのが批評かなと思うのだが、そうなると「神の雫」のようなワインを嗅覚や味覚、視覚その他を使って鑑賞し表現するのもある種の批評なんだなと思ったり。「利き酒」という言葉があるけれども、日本酒に関しても池波正太郎だとかが書いていたように思う。
昨日は仕事の合間にツタヤに行って昨日発売のジャンプコミックスを15冊買ってきて、まあ我ながら買い過ぎの気もするが鑑賞のためなのでまあ仕方がないかと思ったり。初めて買うのは「ふつうの軽音部」1巻と「続テルマエロマエ」1巻の2冊。その他ジャンププラスで「不治の病は不死の病」完結4巻、「バンオウ」6巻、「株式会社マジルミエ」11巻、「怪獣8号」12巻、「ダンダダン」14巻、「チェンソーマン」17巻。
ジャンプ本誌では「キルアオ」4巻、「逃げ上手の若君」15巻、「SAKAMOTO DAYS」16巻、「WITCH WATCH」16巻、「呪術廻戦」26巻、「Dr.Stone」27巻、「僕のヒーローアカデミア」40巻。
ヒロアカ」はこの40巻の発売で累計1億部を突破したとのこと。今まで集英社で1億以上売り上げているのは『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、『DRAGON BALL』、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ、『SLAM DUNK』、『ONE PIECE』、『NARUTO-ナルト-』、『BLEACH』、『鬼滅の刃』、『キングダム』の9作品だそうで、ヒロアカは10作品目ということになるか。『HUNTERxHUNTER』が入ってないのは不思議だが、その分マニア性が高いということなのかなという気もする。
「ふつうの軽音部」に関してはこちらに原作者のクワハリさんのインタビューが掲載されていて、「コロナ禍で自宅にいてなんかやろうと思って漫画を描いてみた」ということがきっかけだったらしく、最近そういう話をよく読むのでコロナも少しはいいことをしたのかなと思ったり。
https://rookie.shonenjump.com/info/entry/202404_blog
有名な話で言うと、ニュートンはペストの流行で大学を離れて自宅にこもっている時に研究に没頭してあのリンゴのエピソードによって万有引力を発見した、と言う話がある。疫病が世界を良い方に変えた例として記憶しているが、コロナがなければ「ふつうの軽音部」もなかったのかと思うと不思議な感じがする。
***
漫画にしろ小説にしろいくら好きだと言っても読んでいるだけでは生活できないし、ふつうの仕事をするようになると読む時間も無くなってしまうから、好きなだけ読める状態でいるためには漫画や小説に関わる仕事をすることでそれ自体を仕事にしてしまうという手はあるわけだけど、作り手の側に関わることで漫画や小説がより深いところまでわかるという部分もあるだろうし、逆に自分の持ってる幻想が崩れてしまうということもあるだろうと思う。作者のコメントとかも読まない方が良かったなあと思うこともあったりするわけだが、それでも批評家という人種は「それを読まずにはいられない」という人たちが多いのだろうなという気はする。
その時に、どう言うものが適切な批評なのかと言うことについて少し考えていて、ちらっと思い出して「日本のクラシック音楽は歪んでいる」に吉田秀和批判があったなと思って少し読んでみたら、モーツァルトの戴冠ミサ曲について「外で遊んで泣かされてきた子が敷居を跨いだと気に「おかあ」と強く叫んだ途端溢れた涙とともに「さん」と言う音を飲み込んでしまったようだ」と吉田が書いていることについて批判しているのだが、まあこの表現は全然違う文脈のものを卑近な言葉で表現していることを問題にしているわけだけど、まあそれがある種の言葉のマジックであることは確かで、そう言う意味では「音楽批評という名の文学」なのだが、そういう吉田の批評が持て囃されてきた日本自体を批判しているわけである。
まあこれは文学として読めば特に問題はないと思うのだけど、「モーツァルトの戴冠ミサ曲」についてのか不足ない批評かといえばもちろんそれはそうとはいえない。なんというか奇を衒った、鬼面人を驚かす類の「ああ、そういう言い方もあるのか」みたいなものであることは確かで、音楽に真面目に取り組んでいる人が読んだら不愉快になるというのはわからなくはないなとは思った。
この本ではジャーナリスト(つまり専門音楽家でない)の書いた音楽批評というものは、本質的に素人がブログで書いている感想と本質的には変わらず、前者は有料だが後者は無料なので前者は衰退している、という発言を取り上げていて手厳しいとは思うがある種の真実をついてはいる。
ただこれは、むしろ音楽批評というものの本質はむしろ「音楽」ではなく「文学」なのだと思えば別におかしくはないのではないかという気はして、吉田の仲間というか大将である小林秀雄の「モオツァルト」が音楽批評というよりは文学として取り上げられているように、そういうものとして評価されるべきなのではないかという気はした。
そういう意味で、批評家と実作者との間に「深くて暗い河がある」ことはまあ確認しておかなければいけないことだよなとは改めて思ったのだった。
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