紙幣デザインについて思ったこと:国家権力とバランス/大谷通訳賭博事件と「クレバーなだけでは足りない」こと/トランプの「閉じこもる偉大なアメリカ」とバイデン・岸田の「正常化と活動家跋扈」/モスクワへのテロと「権威主義の一番弱い輪」を狙うイスラム過激派

Posted at 24/03/23

3月23日(土)雪

夜が明けるのは早くなってきたのだが、寒さはまだ続いている。6時過ぎに出て隣町にガソリンを入れに行き、朝のパンを買って職場に携帯を忘れたので取りに行き、帰ってきて少しごちゃごちゃしていたら外をいたら雪が降っていて、またびっくり。隣町からの帰りに少し降ってはいたのだが、家に近づくに連れてやんだので大丈夫かと思っていたのだが、結局は雪景色に。今年の3月はどうなっているのだろうか。今の気温はマイナス1度。

昨日は午前中母を病院に連れて行き、その後銀行関係の仕事やついでの新しい漫画も買ってきたりして疲れた。「アオのハコ」を少しずつ読んでいて、連載の時にはあまり感じなかったことが鮮やかに入って来るようになって、明らかにこちらの側が変化していることがわかる。わからないまま単行本は買っていたのだが、買っていてよかったなあと思う。こういうケースは割と珍しい。

今週は日月と東京、水に松本、木金と母の病院と忙しい日が続いたのでだいぶ疲れが溜まっている感じ。その間に会計関係のこととか資金繰り関係のことなどいろいろやりながら、なんとか毎日ブログは更新したという感じではある。

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今年から日本銀行券、つまり紙幣が新しくなり、印刷される肖像画の人物も全く一新されるされるわけだが、もっと国民に人気のある坂本龍馬などを取り上げろという意見があったので、少し私見を書いてみたい。

もともと貨幣というもの、紙幣というものは国家権力によってその流通が強制されているものだから、そこに印刷されるものもその権威の象徴が描かれるわけで、古くから権力者の肖像画が金貨などに刻印されてきた。特に王国ではその王の肖像が印刷されるわけで、イギリスでは長い間エリザベス2世女王の肖像画が印刷されてきていて、だからこそセックスピストルズの「God save the Queen」のジャケットのようにそれを冒瀆することで反権威を強調するという手段も取られたわけである。

アメリカでもワシントンやフランクリン、リンカーンなどが紙幣に印刷されるのは「建国の父」であること、あるいは「国家の分裂を阻止した英雄」であることが理由であって、人気があるからではない。共和制国家では国王の肖像は印刷できないから、その他の国家を象徴する人物が選ばれただけのことである。

日本の場合は明治初期にはその権威を表すために天皇の肖像画が考えられたわけだが、それは却下された。みだりに天皇の肖像などは外に出すべきものではないからである。これはイスラム教でアッラーやムハンマドの肖像が描かれないこととは理由が違う。イスラムでは偶像崇拝を禁止しているためにそれが許されないのであって、日本では「恐れ多い」からできないのである。

そこで天皇のお顔を「龍顔」と呼ぶことから、切手などにも龍の絵が採用されたわけである。その後は、天皇ではないけれども天皇に近い人、それを象徴する人物ということで神功皇后や武内宿禰などが選ばれ、我々にも記憶のある聖徳太子が選ばれたわけである。

実際聖徳太子は実質的な日本国家建設の功労者ともいえ、また天皇自身ではなく、文化英雄でもあり、日本国と日本文化、日本文明の象徴としてこれ以上の人はいないと思う。

一方で臣下の日本国家建設の功労者もまた紙幣のデザインに採用され、財政再建の立役者である高橋是清や帝国議会発足の功労者板垣退助、維新の英雄の一人岩倉具視、初代総理大臣伊藤博文などがお札になったことは記憶に新しい。

昭和の後半になるとこうした政治家がお札デザインになることに批判が集まり、文化人が採用されることになったが、これもまた日本が文化国家として自らを主張していくことの象徴でもあったと言えるだろう。一万円の福沢諭吉が明治啓蒙思想・近代国家建設の象徴、五千円の新渡戸稲造が国際平和主義の象徴、千円の夏目漱石が文学・文化の象徴という意味で、これらはバランスの取れたデザインだったと思う。

その後二千円札に守礼門と紫式部を配置して沖縄という特殊な地域を象徴するとともに女性と国風文化も採用し、5千円札で樋口一葉という女性の文学者、千円で野口英世という医学者=科学者を取り上げるなど多方面に目を配った人物採用を行なってきた。

それに比べると今回の人物は傾向が変わってきていて、一万円札が澁澤栄一と日本資本主義の象徴のような人物が描かれたのは今まで日本の繁栄を支えてきた実業界の人物が採用されなかったことに対するバランスのようにも思われるし、五千円札の津田梅子も女子教育の象徴の意味だろうからフェミニズムへの配慮があるように思われる。千円の北里柴三郎はオーソドックスな人選だと思うが、野口英世から医学者が二人続くと科学からの人選のバランスはどうかという感じはする。湯川秀樹などもありではないかと思うが、戦後を象徴する人物の採用はまだ早いという判断だったのだろうか。

いずれにしても、紙幣は国家権力を象徴するものなので、バランスの取れた人選、その時の風潮にあまり左右されない人選が重要だと思う。数十年後、次の改定の時にはどのような人物が選定されるのだろうか。

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プロ野球も開幕直前になって大谷選手の通訳の賭博問題が持ち上がり、異様な雰囲気になってきているが、これについてはまだわからないことが多いので考えることはまだ書かないけれども、基本的には「若くして億万長者になった経験の少ないスポーツ選手」一般をめぐる問題が、今までの選手に比べて相当クレバーであると思われていた大谷選手にも起こった、ということなのだろうと思う。そういう意味ではこういう問題は地頭がいい、普通の意味でクレバーであれば防げるという問題ではなく、「世間を知っている」「人間の弱さを知っている」人間でないと想像できない範囲のことが起こったのだろうなと思う。

大谷選手は今までの野茂選手やイチロー選手のような時に反発を呼ぶような突出した個性がない。そういう意味では松井選手に似ているが、松井選手は松井選手である意味苦労してきている部分も感じたけれども、大谷選手は本当にまっさらな理想主義者としてここまできていたのは、WBCのインタビューなどでも感じられた。韓国を挑発して反発を食ったイチロー選手などとは違い、中国やアジアに野球が普及していくことを純粋に望んでいるような、ナチュラルな優等生で、これからの国際的アスリートはこういう人になっていくのかなと思わされたが、この事件を見るとこういう古典的なところに落とし穴があるのだなということは改めて思ったのだった。

報道を見る限りは大谷選手は純粋な被害者のようなので、あまり累が及ばないといいなと思うが、これからの若くして成功したスポーツ選手らが気をつけるべきことは、今までとそう変わらないのだなと改めて思ったのだった。

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アメリカ大統領選挙でトランプ元大統領が相当な支持を獲得していて、日本でもそれを恐れる雰囲気があるが、前回の在任期間は安倍元首相という最高のカウンターパートがいたために、日本にとってはむしろプラスになっていたように思う。今回は安倍さんの暗殺によりそういう人がいないのが怖いけれども、日本と世界にとってバイデン大統領とどちらがいいのかは割と微妙な問題だなと思っている。

昨年LGBT法案が成立したのはエマニュエル大使の強力なプッシュが影響したことは間違い無いと思うが、こうした人材はアメリカが民主党政権であれば周辺国に押し付けてくる可能性はあるわけである。共和党政権であればそうしたことはあまり考えないで済むので、その意味でもトランプの方がマシである可能性はかなりある。

また、トランプは「自分が大統領であればウクライナ戦争は起こらなかった」と言っているが、これはその可能性はあったと思う。ただそれがウクライナの犠牲のもとに起こらなかったということである可能性はある。実際問題としてバイデン政権はウクライナロビーが強く、トランプ政権ではイスラエルロビーが強かったので、トランプは自分が大統領になった時の世界を現在のアメリカの方針とはかなり違う方向に定める可能性はかなりあるだろう。

例えばパレスチナ問題について、彼はパレスチナ国家の建設に反対し、ガザはエジプトに、西岸はヨルダンに併合されるべきとしていて、ある意味第3次中東戦争の前の状態が自然だと考えているわけである。しかしその状態からパレスチナゲリラが活動してパレスチナが現在の準国家的な地位を獲得していることは無視しているわけで、その辺は大きな火種になるだろう。

前回のトランプ政権の際は大きな戦争は起こらなかったわけだけれども、もし次の政権になった時は中東方面は割と危ない感じはする。中国政策をどうするかはわからないが、トランプはアメリカに直接関係のないところでの紛争介入は好まないので、現状維持でいくだろうとは思うのだが、「安倍晋三回顧録」を読むとトランプは安倍さんにかなり意見を求めているので、安倍さんを失ったトランプがどういう対応を中国にしようとするのかは少し怖いところはある。

バイデン政権の世界への対応は、岸田さんが日本で今やっていることと同じく基本的に「正常に戻す」方向の政策なのだが、しかしそれが国内ではあまり支持を得られなくなってきていることも確かで、またウクライナでもガザでも目立った成功を収められていないのは、やはり時代のフェーズが変わりつつあることを意味しているのだろうとは思う。その中でポリコレリベラル政策を日本そのほか世界に押し付けようとする活動家勢力が政権に巣食っていることはよりマイナスの影響を持つだろうと思う。

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モスクワで大規模なテロが行われ、イスラム国が犯行声明を出したという。このタイミングでのイスラム過激派によるロシアに対するテロは少し意外な感じがしたが、Twitterを読んで指摘をされてみたら、ウクライナに兵力を送りすぎて治安関係が成り立たなくなっている隙を突かれたのだというのはとてもよくわかる話で、盤石に見えるプーチン体制も人的な部分で綻びが出てきたのだと言えるのだろう。

中国が香港やウイグル、南モンゴルなどで弾圧政策を行い、台湾に武力的な脅しをかけ、東南アジア諸国も衛星国化しようと隠然たる力を持ち得ているのはロシアのような無駄な戦争をやっていないから、ということもまた明らかになった。そういう意味で権力保持に腐心する習近平政権はしばらくは安全かもしれない。

一方のロシアは国際的な活動をアフリカやシリアなどでも展開しているが、そこで利益的に競合するのがイスラム過激派であると考えてみると今回のテロがロシアに向けられた理由もわかってくる気がする。

今回のテロは昨年10月7日のハマスによるイスラエル襲撃に刺激されてのことは間違いないと思うが、ハマスは今でこそイスラエルに徹底的に追い詰められているけれどもイスラム過激派の世界では彼らは絶対的に英雄視されていると思うし、それに追随する動きが今まで起こらなかったことが不思議だという気もする。今の彼らにとって西欧諸国やアメリカを攻撃するより、治安の隙が多いロシアを標的にするというのは考えてみたらリーズナブルなことなのだろう。

歴史的にロシアは国内に多くのイスラム教徒を抱えているし、ロシア帝国の成立自体がそういう言い方はされないけれどもある種のレコンキスタのようなものである。強いロシアの復活を図るプーチンの存在はその意味ではイスラム過激派を刺激していると思うし、多くのイスラム系住民がウクライナ戦争に駆り出され命を落としていることもまた、彼らがロシア国家を標的に掲げるのに十分な理由になっているのだと思う。

ロシアはウクライナ戦争でかなり無理をしているので、そういう意味でロシアは「権威主義の一番弱い輪」であると言えるかもしれない。レーニンがロシア帝国を「帝国主義の一番弱い輪」と呼び、第一次世界大戦の負担に耐えきれない帝国を打倒して革命に成功したようなことが、これからロシアで起こる可能性は十分にあるのだが、一体誰が次の主人公になるのかはまだわからないわけで、これからも最も大きな世界の不安定要素であり続ける可能性は強いかもしれないという気はする。


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