日本と中国を天秤にかけるアメリカ/アメリカはなぜイスラエルを支持するのか/「海が走るエンドロール」6巻を読んだ:残された時間が少ない中で評価に拘りつつ作品を作り続ける
Posted at 24/03/15 PermaLink» Tweet
3月15日(金)晴れ
昨日は仕事がいくつか重なり気持ちが忙しい感じがあった。
今朝は4時半ごろ起きたがそんなに寒くないなと思いつつ気温を調べたらマイナス1.5度。体感と実際はずれがあるけれども、実際より寒くなく感じるというのは自分の体調がいいから、ならばいいのだがさてどんな感じか。
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米中関係について考えていたのだが、中国はアメリカと関係が良い時は発展し、緊張が高まるとうまくいかなくなると言う傾向があると言う気がする。
これはいろいろ理由があるし歴史を振り返ってみるといろいろ面白いと思うのだが、要は米中関係が悪い時は日米関係がよく、逆に米中関係が良い時には日米関係がよくない、と言うか軽視される傾向にある。つまり、アメリカは対アジア外交において常に日本と中国を天秤にかけている。
アメリカにとっての本命はもともと多分中国の方で、それは広大な市場がキラキラして見えるからだろう。中国にとってもイギリスによるアヘン戦争で始まった近代史において、帝国主義に半植民地化されたときもアメリカは門戸開放を唱え、勢力圏の設定に反対した。また第一次大戦後も日本の外交機軸である日英同盟を四カ国条約で破棄させて日本の進出を抑制しようとしたし、日中戦争中も援蒋ルートを通じて日本に対する抗戦を可能にするなどの援助を行った。またベトナム戦争の打開と言う問題があったにせよ日本の頭越しに米中会談を行い、ソ連や日本よりも中国を重視する姿勢を見せた。20世紀末から今世紀初頭にかけての中国の躍進においてもアメリカ市場を基本的に開放していたことは大きかっただろう。
一方日米関係が良い時は中国は割を食う。特に日露戦争後のポーツマス条約では中国の国内に様々な日本の利権が設定されて、それを金子堅太郎の知己であったセオドア・ルーズベルトが支持するなど、日米関係の良好さが日本の勝利を支えていたことは間違いない。
しかし満洲の利権にいっちょ噛みしようとしてきたアメリカを日本が拒否したために日米関係は悪化していったわけで、「友情」よりも利権が日米関係において重要であることを日本側は軽視しがちであることの弊害が出たのだなと思う。いろいろな意味での「利益」を共有できる相手であることが、アメリカの外交において重要なのだと思う。対中関係が決定的に悪化したのは中国共産党政権の成立と朝鮮戦争な訳だが、キッシンジャーが流れを変えた。中東戦争で独自路線を行こうとした田中角栄をロッキードで失脚させ、中曽根以降に顕著な対米協調路線も常に足元を見られながらのものであったように思う。
クリントン政権下での日米構造協議が日本経済に与えた悪影響もかなり大きかっただろう。ただ、近年になって大国化した中国がアメリカに対抗心をむき出しにしてきて流れが変わった感じはある。
いま日本に投資資金が流れ込んでいるのも中国への警戒の現れであって、全体的な構図の中で見ていくべきだろう。フェミニズムのような埋伏の毒がクリントン政権以降注入されていることもやはり意識しておく必要があるが、この辺りとアメリカの国家戦略との関わりについてはトランプになるかバイデンになるかで全然変わってくるので注意が必要だ。しかしそれにしても日本の利益を侵害するフェミニズムやポリコレネオリベに踊らされている人々は本当にもっと大局を見ろと言いたいが、まあ使嗾されている人たちもいるんだろうなあとは思う。中露からもそうだが。
アメリカも中国もロシアもバカなところはあるがいずれにしても力を持ったバカなのでうまくあしらわないといろいろ大変になる。日本も外交努力も必要だが、横綱大関並みの軍事力は持てなくても前頭筆頭くらいは持っておかないといざと言うときに困るし、前頭筆頭なら番狂わせも可能なので、せめてそのくらいは持っておきたいものだなとは思う。
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アメリカという国がなぜイスラエルをあれだけ支持するのかというのはいろいろ疑問はあるのだけど、宗教的な理由や利害関係、ナチスと共闘した仲間というだけでなく、「無から(彼らの世界観の中で)近代国家を建設した仲間」という意識があるんじゃないかという気がした。国の成り立ちが似ている。
もちろん本当は「無から」ではないわけだけど、アメリカでは先住民に「リザベーション」を与えることでお茶を濁したので、「イスラエルもガザと西岸をリザベーションにしとけばいいんじゃん?」くらいの感覚なのかなという気はする。
イスラエルはユダヤ人の独自国家建設というスローガン自体はピルグリムファーザーズと同じだが聖書の神話の地に帰還するという「トンデモ」が伴ったためにいろいろ面倒なことになっている。シオニズムも当初は南米とかアフリカとかにホームランドを作るという意見もあったのだがせっかくなら古代のユダヤ人の土地へ、ということになり、それがキリスト教徒の「トルコに奪われた聖地の奪還」という十字軍意識も加わってイギリス委任統治領パレスチナが成立してしまったわけで、少なくとも最初は帝国主義の発露の一環でもあった、ということは理解しておく必要はあるだろう。
イスラエル人の出身国は第一次アリヤー(大規模移住)がロシア中心、第二次アリヤーがロシア・ポーランド中心、第三次アリヤーがロシア中心、第四次アリヤーがポーランド、第五次アリヤーがドイツ、イスラエル建国後はヨーロッパとアラブ諸国から大規模移民、1984年にはエチオピアから、1989年から旧ソ連から。
アメリカ出身のイスラエル人はどれくらいいるのだろうか。「アメリカ系イスラエル人」でググっても全然出てこない。ウッディ・アレンの「アニー・ホール」では白人のユダヤ人に対する差別意識が描かれていたが、イスラエルに移住する気にはならないのだろうか。
以上のことでわかるように、イスラエルは西側諸国っぽい顔をしているけれども、民族構成で言えば東欧・中東系なのだよな。ネタニヤフも両親はロシア領ポーランド出身。ドイツ系との割合は分からないが、白人系ではロシア系が圧倒的に多いのではないか。非白人系はアラブ諸国出身がほとんどだろう。
ネタニヤフやイスラエル政府、あるいはイスラエル人の行動様式を考えるときに、西欧基準で考えるよりもむしろロシアとかポーランド、ハンガリーとかの東欧諸国の国家運営、民族色などを前提に考えた方が妥当性が上がるのではないかと思った。
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たらちねジョン「海が走るエンドロール」6巻読んだ。還暦を過ぎて映画監督になるために美大に通い始めたうみ子も6巻あたりまできてだいぶ日々のペースが掴めてきた感じはあり、そのあたりでの安定感というのはあるのだけれども、こうした営みにはやはりコンテストというものがつきものであり、このストーリーではPFF(ぴえフィルムフェスティバル)がそれになるわけだけど、うみ子が海を主演に撮った作品は入選せず落選し、うみ子が主役を演じた海が監督の映画がグランプリを獲得する。うみ子は落選に落ち込むけれども現役の監督と飲んだ機会に「時間がないから撮るしかない、映画は現実なんだ」と割り切ることができ、海のグランプリ受賞を素直に称賛することができた、という感じである。
60過ぎた女性が映画監督に挑戦するという設定自体がもちろん現代的で、彼女の自意識の流れがこの作品で見るべきところの一つではあるのだけど、それだけではなく「映画作り」というものの持つ楽しさや大変さ、評価の残酷さと公平さ、それに紛れ込む様々な要素、みたいな話もある種業界物として、あるいはアートものとしての面白さもある。この作品はもともと「このマンガがすごい!2022」で1位になったことから読んでいるのだけど、スローテンポながらゆっくりゆっくりと「夢」に近づいていく感じが面白いなと思うし、当然ながらその夢の実現に向けて立ち塞がる現実や、夢自体が揺らいで見えたりすることもまた面白い。
また海やsoraたち映画制作を目指す若者たちとの関係もいろいろ面白く、若者に合わせて無理しすぎてしまって倒れたりとか、その辺の現実味もいいなと思う。
若者がもがきながら未来を見つけようとする「ブルーピリオド」もとても良いのだが、「残された時間が少ない」中で評価に拘りつつ作品を作り続けるというテーマもまた、私などの年代になると刺さるものはある。いずれも好きな作品です。
帯に「マガデミー賞2023 茅野うみ子 主演女優賞受賞」とあり、なんのことだと思って調べてみると、マガでミー賞というのは2021年度から始まった企画でマンガの登場人物を讃える企画なのだそうだ。
https://booklive.jp/magademy-award
今回は主演女優賞がこの作品のうみ子で、そのほか私の読んでいる作品では助演男優賞が「葬送のフリーレン」のヒンメル、作品賞が「スキップとローファー」になっている。
ついでに2022年度では主演男優賞が「BLUE GIANT」の宮本大、助演男優賞が「東京卍リベンジャーズ」の松野千冬、2021年度では助演男優賞が同じく「東卍」の佐野万次郎となっていて、見た感じでは女性が読みそうな作品の登場人物が主に取り上げられている印象があった。
まあ、いずれにしても自分が読んでいる作品の登場人物が取り上げられるということは嬉しいことなので、来年もまた見ていきたいと思った。
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