現時点での世界認識の素描:ウクライナやガザで起こっていることと日本はこれからどうしていくのか/自由貿易体制を利用した中国ロシア=権威主義国の台頭と西側諸国内部の分裂
Posted at 24/02/25 PermaLink» Tweet
2月25日(日)雪
昨日は一日曇りで、朝ブログを書いた後、10時半過ぎに出かけてインターの近くにある書店にビッグガンガンを買いに行った。帰りに隣のスーパーで昼食と夕食の買い物をしたのだが、このスーパーはいつも空いていてそれが楽なのでよく買い物に行くのに、昨日は全ての列にかなりの行列ができていて驚いた。雪が上がって、連休中の土曜日で、お昼前で、という全ての混雑要素が重なったからかなとは思うが、それにしてもこんなに客がいるところは見たことがなかったのでもし自分の知らない時にこれだけお客さんが来ているなら潰れる心配はないなと逆に安心したり。
実際、それも冗談ではなくて、当地でもスーパーの撤退が相次いだ時期があり、旧市街では歩いていけるスーパーがなくて買い物難民が発生していた時期があるのだが、今では駅前の再開発で大きめのスーパーが入ったのでそれはかなり改善されている。しかし再開発前にあった地域唯一のデパートは無くなってしまって、「デパートなら売っているもの」をどこで買うかが結構自分の中で問題にはなっている。結局東京に帰った時に買っているわけだけど。
そういうことを考えると、コロナも明けて、この地域も経済的には少しは余裕が出てきたのかなという気もする。地元の産業でそんなに景気の良い話は聞かないけれども、人の流れは多くなっている感じがする。
***
昨日は昨日のうちにやらなければいけない最低限の仕事以外には、自分の投資履歴を振り返っていたのだけど、個別の株式の売買もあるが基本的には日経平均に連動した投資という感じなので、ほぼ日経平均の伸びくらいには増えているということが改めてわかった。
そういうわけで、日経平均が史上最高値を更新したということは自分の持っているものもそれだけ増えているということなのだが、そういうことがなぜ起こっているのかについて少し考えてみる。つまり、現時点における私自身の世界認識を素描してみたい、ということである。
日本経済はバブル後の長期低迷で「失われた30年」、まるまる平成時代は経済的には厳しい時期だったということになるが、その時期に成長・繁栄したのはアメリカはともかく特に中国だということは言うまでもない。
中国にこういう経済繁栄をもたらした一つの要因は戦後の自由貿易体制の思想、自由貿易による相互依存によって国際対立を不可能なものにしていこうという考え方があり、それによって冷戦体制で排除された共産圏を除き、敗戦国であるドイツや日本も経済的発展を享受することができた、ということがある。第二次大戦で鋭く対立した旧枢軸国と連合国にあって、旧枢軸国を「西側」に取り込むことで協調体制が作られていくことになった。
1989年の冷戦体制の崩壊によって中国もロシアも自由貿易体制に組み込むことにより、同じように協調体制を作れるというのが当時の西側首脳の考え方であったが、ロシアはプーチンを中心に権威主義的な体制を構築しつつ原油生産による資源高で復興を成し遂げ、中国は政治的には一党独裁体制を崩さないまま経済のみ自由を与え、また国際的な競争に対しては国家が前面に出てレアメタルの独占やEVの開発などを推進し、国家が経済成長を主導することで世界における経済的地位を築いていったわけである。
それで平和協調体制が築ければまだ良かったのかもしれないが、ロシアは自らの衛星国であるシリアなどの失敗国家を支援し、また中国も北朝鮮などを支援することで人道危機を作り出した。またロシアは旧ソ連諸国を中心に侵略を進め、特に2014年のクリミア占領、2022年のウクライナ全土への侵攻など自らの論理による平和破壊を辞さない方針を表面化させているし、中国もまた改革開放よりも習近平の独裁体制を深め、キャリアのある人たちのアメリカへの脱出や知識人たちの日本への脱出、また経済難民がヒスパニックに混じってメキシコ国境からアメリカへの不法入国を図るというような事態になっていて、「自由貿易体制による世界平和」は画餅に帰しつつあるというか、「自由貿易体制のみでは世界平和を維持できない」ということが明確になってきている。
一方で自由主義諸国も失敗がないわけではない。特にアメリカで著しいポリティカルコレクトネスやジェンダー解放、あるいはBLM運動の高まりなどは、国内で保守派と進歩派の分断を深刻化させている。2016年大統領選挙でトランプが勝ち、2020年選挙でバイデンが勝利したものの、2024年選挙でどちらが勝つかは予断は許さないが、ウクライナでの戦争やパレスチナでの戦争に対するバイデン政権の思想は必ずしも広範な支持を得られてはいないので、どちらになるかは予断を許さないだろう。
またヨーロッパにおいても環境主義の高まりによってガソリン車の廃止・EVへの移行などが打ち出されたが、国家を中心としてがむしゃらにEV開発を進めた中国に市場を奪われつつある中でドイツがEVへの100%移行を反故にするなど、ヨーロッパ中心主義的な「ゴールポストを動かす」やり方が相変わらず行われている。ヨーロッパは戦後の労働力不足以降大量の移民労働者を受け入れる中で文化的な軋轢が高まり、こちらも右派ポピュリズムや極右とされる政党が国政に進出するなどの国内の分断もまた進んでいる。
こうした中での西側諸国、特にアメリカにとっての最大の問題の一つはパレスチナ問題だろう。第一次世界大戦でトルコからパレスチナ地域を分捕ったイギリスは委任統治でパレスチナを支配していたが、ユダヤ人側のテロでパレスチナ総督が暗殺されるなど統治の困難さを自覚した結果アメリカが乗り出してきて、第二次対戦後にパレスチナ分割案によりイスラエル国家が建国したがそれを不服とするアラブ諸国との間に第一次中東戦争が始まり、結果多くのパレスチナ人がより狭い地域に押し込められることになった。
この時に確定した国境線が現代の交渉の前提となっているが、パレスチナ国家の成立はなかなか進まない。これには様々な理由があるが、一つにはイスラム教に領域国民国家の考え方がないことで、その後の非王政国家も社会主義など別のイデオロギーを導入して国家の形を整えていったことは重要だろう。オスロ合意によってパレスチナ国家の建設が謳われたが、PLOの中心になってきたアラファトの死後は国家建設が進まないままガザがハマスに奪取され、パレスチナ自身が分断されることになる。イスラエルはその後パレスチナ国家の建設を認めない勢力が強くなり、ガザの封鎖や西岸の入植が進められて実質的にオスロ合意を浸食しつつある中で今回のハマスの攻撃が起こった。だから今回の事態にハマスに責任があることは間違いないが、日常的なイスラエルによる圧迫がなければそれが起こらなかったことも確かであり、どちらか一方の責任だと断ずることはできないだろう。
アメリカはパレスチナの安定を目指してオスロ合意を主導し、また二国家併存を基本方針として変えていないが、イスラエル側の理由とパレスチナ側内部の理由の双方によって独立した国家基盤を持つパレスチナ国家の建設はかなり困難であることは今の所間違いないだろう。
ただ問題なのは、アメリカがネタニヤフの攻撃を行き過ぎだと批判はするけれども安保理などの決議の際にはイスラエルに対する停戦要求には決して賛成しないことで、この辺りは冷戦時代にチリのピノチェト政権などの独裁国家を社会主義国との対抗上支持し、そこへの介入を認めなかったことと似ている部分がある。アメリカがイスラエルを支持というより保護しているのはアメリカ国内の事情も大きいが、アメリカに支持されることで何をやっても許される状態になっているイスラエルの現状はある種の失敗国家と言えるのではないかと思う。
アメリカもロシアのウクライナ侵略は批判する一方でイスラエルのガザ侵攻には国連決議に反対するというダブルスタンダードになっているわけで、ドイツなどヨーロッパの国でも歴史的経緯からアメリカと軌を一にする国もあるが、こうした方向性には非欧米諸国には白けた空気が生まれることはやむを得ないように思われる。
こうした中国やロシアの自由貿易体制による経済繁栄を利用した権威主義体制の構築や衛星国への援助、人権問題の危機と、欧米諸国におけるリベラル思想の行き過ぎ、特にジェンダーなどに対する姿勢、またウクライナとイスラエルに対するダブルスタンダードなどを見ているいわゆるグローバルサウスの国々は、どちらかを決定的に支持するということはなく、その推移を見守りながら自らの経済や国益に有利な方向で動こうというのが見て取れる。
日本にしても、このところの株価の急上昇など日本に対する投資の増大は、中国リスクが欧米の資金から自覚されたことによって、その代替の投資地として日本が選ばれたということが大きいだろう。またはっきりは調べられていないが、中国国内の投資資金も日本に流入している部分があるのではないかという気がする。日本では新NISAが始まったことで投資資金が掘り起こされてはいるけれども、アメリカのSP500やワンワールドといった投資信託に投資することが半ば当然視されていて、なぜそうなっているのかよくわからないが持続的に成長しているアメリカ経済の方がより信用できると考えられているのだろう。そのアメリカの資金が日本に入っているのだから、現時点では日本に投資する方が賢いと私は思うけれども、みんながそう考えるとまたバブルになるかもしれないのでアメリカに投資して利益を日本人が得る方が今のところはいいのかもしれない。
政治的に見れば、安倍政権時代から経済回復の基調はあったけれどもアメリカのトランプ政権時代に安倍さんが協調体制をとれたことは良かったと思う。トランプと強調するというのは誰にでもできることではないと思うが、その安倍さんが短絡的な犯人に暗殺されたことは大きな日本にとっての損害であって、トランプ二期に対して日本がどのように望んでいくのかは前途多難に思えてならない。
日本ではLGBT法やAV法などジェンダー関係で問題のある法律が成立してしまったりしている一方でフェミニストや離婚調停利益を失う弁護士業界が反対している共同親権制度が導入される方向性になるなど、ある程度バランスの取れた(まあ共同親権は国際標準に過ぎないのだが)部分もあるかなとは思っているが、ここ数十年の世界の動向や日本における災害やリストラ緊縮至上主義の蔓延による災難、思想的バックボーンの弱さによる国に対する思想の不確立、古い時代のボス的な仕事の進め方の問題の噴出など、さまざまな事項の反省を含め、日本人はこれまでどういう人たちであり、これからどのようになっていくと良いのか、みたいなことを考えていく必要はあるのではないかと思っている。
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